同じ事故で自動車運転過失致死罪と救護義務違反が成立する場合,刑法45条の併合罪になります。この場合の量刑は,刑法47条に「最も重い罪について定めた刑の長期にその2分の1を加えたものを長期とする(但書は省略)」とされています。
自動車運転過失致死罪の量刑は,1月以上7年以下の懲役(禁錮,罰金は省略)(刑法211条2項,同法12条1項)です。
また,この場合の救護義務違反の量刑は,1月以上10年以下の懲役(同法同条2項,刑法12条1項)です。
これに併合罪の規定を適用すると,(長いほうだけ重い罪である救護義務違反の1.5倍するので)その刑の範囲は,1月以上15年以下の懲役となります。
というわけで,刑はその間で決められているので,「減刑」されているわけではありません。
なぜMAXに近いほうではないのか?ということになると,専門的に勉強したわけではないのでわかりませんが,例えばMAXに近い刑期になると社会復帰が非常に遅くなり,事故を起こした人の更生にもよいわけではないし,被害者に対する損害賠償の観点から考えても,保険が使えないような場合,加害者が社会で稼働できないため被害者救済が非常に困難になるというような考慮もあるのではないでしょうか??
また,同じ行為で死なせてしまった人が5人とか10人いたとしても,刑の加重をしてもめちゃくちゃ重くなるわけではないので(有期懲役の最高は刑法14条2項で30年),10人を死なせてしまったときと不整合が生じる可能性があります。
なお,刑の「減軽」の規定は別にあり,刑の長期及び短期の2分の1を減ずる(長いほうと短いほうを半分にするということです。)ことになっています(有期の懲役の場合。刑法68条3項。加重減軽の順序は別に72条に定めがあります)。