メーカーが小売りに対して
「取引条件は〇〇です。それで嫌なら御社には卸しません。小売業ってお宅だけじゃないからね。」
と言ったときに、小売りが
「その条件で仕入れさせていただきますから売ってください。」
と頼まなければならないとしたら、メーカーが小売より強いわけです。
逆に小売りが
「そんなんじゃ仕入れるわけにはいきませんね。取引条件は△△です。嫌なら他社さんでも同じような製品を作っていますからそちらを仕入れることにします。」
と言い、メーカーが
「そんなことをおっしゃらずにうちの製品を買ってくださいよ。取引条件はそちらの言うとおりにしますから。」
と言うようなら、小売りが強いわけです。
少数のメーカーが、他社ではまねのできないような高度な技術を持っていると、そのメーカーの製品はそのメーカーから仕入れなければ手に入らないわけですから、メーカーが強くなります。
しかし、どのメーカーも同じような技術を開発し類似の製品を発売するようになると、小売り側としては、消費者が買ってくれればどのメーカーの製品でもかまわないわけですから、小売りが強くなります。
このような状況では、小売店は消費者に商品を売っていますから、消費者がどんな製品を欲しがっているのか、そのニーズがわかります。そのニーズにぴったり合った製品を作っているメーカーがあればよいのですが、そんな製品はなかなかありません。そこで小売店が商品を企画してメーカーに「こんな商品を作ってくれ」と依頼するようになるわけです。これがPBです。
ところで、工場でモノを生産する場合、同一デザイン、同一色、同一サイズの全く同じものを大量生産すると生産効率が上がり、利益が増えます。しかし、それではすべての消費者に満足してはもらえませんから、売れ残りが出てしまいます。やはりいろいろなデザインで、いろいろな色でという変化がなければいけません。「それにしても、1000枚ずつ作りたいなぁ。」と考えます。
しかし、小売店は消費者と直接かかわっていますから、「このデザインのこの色は123枚、あの色は234枚、その色は345枚なら売れるだろう。」と考えます。工場はそんな注文は作りたくないのです。1000枚ずつ作った方が(売れれば)儲かるはずなのです。しかし、売れる見通しがないので小売店のややこしい少数の注文で作るのです。注文ですから、作った分は小売りが必ず買ってくれますからね。これはメーカーより小売りの方が強いからなのです。
メーカーが強ければ「1000枚ずつでなけりゃ作んねえよ。嫌ならよそをあたんな。」と言えるはずなのです。