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口蹄疫ワクチンの特徴と効果は?
- 口蹄疫ワクチンの特徴や効果について説明します。
- 口蹄疫ワクチンは弱毒化したウイルスを使って作られますが、同じ抗体ができてしまい検査では罹患かどうか判別することができません。
- 口蹄疫ワクチンは大腸菌に口蹄疫ウイルスのタンパクの一部を発現させることで作られる簡単なワクチンですが、哺乳類に効果があるかどうかはわかっていません。
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Jagar39です。 >和牛の種牛といった希少動物に限り、例外は認められるとのことです これは科学的にどうこういう話ではなく、「特例を認めるか否か」の話です。今回の宮崎県での発生でも県有種雄牛と民間所有の種雄牛でいろいろありましたが。 ですから「認める」のはあくまでその時の政府であり、認めるか認めないかも政府の判断です。また同じようなことが二度起きた時に、前回の判断が踏襲される保証もありません。 では流行時に種雄牛にワクチンを接種して野外感染と「識別」する意義があるのか?と考えると、これもまた薄い気はします。 口蹄疫のワクチンは感染を完全に防御するものではありません。というより完全な感染防御能を持つワクチンの方がどちらかというと少数派なんですが。 ですから流行時に貴重な種雄牛の感染を防ぐためにワクチンを接種する意義があるのか否か?というのがそもそも疑問です。 さらにワクチンを接種するとその種雄牛は抗体を持つことになります。 それが感染抗体なのかワクチン抗体なのか識別する手段がない以上、種雄牛が「感染したのか否か?」が判断できないことになります。 さらにワクチンを接種した牛に感染が起きると持続感染状態になるリスクがあります。この場合は数年に渡ってずっと、その種雄牛から新たな流行が始まってしまうリスクを抱え続けることになります。 ということを考えると、種雄牛にワクチンを接種するのはあまり賢明な選択だとは思えません。 移動制限の特例措置を講じて「避難」させるなり、同居牛に感染が判明しても特例措置を講じて殺処分を免除して綿密なモニターを継続する、といった方法(どちらも今回の宮崎県での事例)をとる方が賢明でしょう。 >>また口蹄疫ワクチンを打たれた牛でも、口蹄疫にかかったのかどうか検査することもできるようです 質問文をもう一度読んで思い当たったのですが、「口蹄疫に罹患したのかどうか」を調べるのは簡単です。通常のワクチン未接種動物と同じですから。罹患すれば発症するので水疱からウイルスを検出すれば良いだけですし、ワクチン接種動物は感染しても発症しないことが多々あるのですが(もちろん発症することも多々あります)、その場合でも体内にウイルスは必ず存在しているので、咽喉頭拭い液なり血液からウイルスを検出すれば良いだけの話です。 (なお、口蹄疫ウイルスはRNAウイルスなので、遺伝子検査は正確には「RNAを検出する」です) 言うまでもないことですが、口蹄疫のワクチンは不活化ワクチンなので、非感染のワクチン接種動物から口蹄疫ウイルスが検出されることはありません。遺伝子も含めて、です。 私が書いた「識別」とは、感染後数週間が経過して抗体が産生された時、その抗体からワクチンか野外株化を識別する手法がない、という意味です。その頃には当然、感染動物であってもウイルスは体内から検出されませんから、感染動物とワクチン接種動物を識別する手段はない、ということになります。 識別できるのはあくまで感染後間もない期間だけです。(逆にその頃には感染動物もワクチン接種動物も共に抗体はありません) つまりまとめると以下のようなことになります。 ウイルス 抗体 -------------------- ----------------------- ワクチン接種 非接種 ワクチン接種 非接種 -------------------------------------------------------- 感染直後 どちらも検出される どちらも検出されない 数週間後 どちらも検出されない どちらも検出される -------------------------------------------------------- つまりワクチンを接種されていようがいまいが、ウイルスが検出されれば「感染した」ことは決まりです。 また接種されていようがいまいが、感染後数週間経てば抗体が検出され、しかもその抗体を「ワクチンによるモノか感染によるモノか」を識別する手段はない、ということです。
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Jagar39です。 レトロウイルスではありません。口蹄疫ウイルスはピコルナウイルス科に属するウイルスです。 ピコルナウイルス科の他のウイルスは、ポリオウイルスやA型肝炎ウイルスなどがあります。 レトロウイルス科に属するウイルスはエイズウイルス(HIV)や白血病ウイルスなどがあり、レトロウイルス科のウイルスの特徴的な増殖方法から、全てのウイルスが「持続感染しかしない」ウイルスです。レトロウイルス科のウイルスは基本的に他のウイルスのような一過性の感染はしません。感染すれば基本的に必ず持続感染(それもほぼ生涯に渡る)です。 持続感染は「感染状態が継続すること」ですから、「現在の罹患状態」を調べれば持続感染も摘発できます。まあ臨床症状は示さない状態が多いですから、普通に"病変部からウイルスを検出"することはできませんが、口蹄疫では咽喉頭粘膜などを採取して検査すれば高確率で持続感染牛を摘発することが可能です。 通常の一過性の感染だと抗体が産生されるとウイルスは体内から排除されるのですが、様々な理由から抗体とウイルスが共存する状態になり、それが長く継続するのが「持続感染」です。持続感染が起き得るウイルスはいろいろありますが、そのメカニズムはそれぞれ異なります。 持続感染動物は、長期間ウイルスが体内で増殖しているため、ウイルスを検出する検査をすれば高確率で検出することが可能なのですが、普通の一過性の感染では体内にウイルスが存在する期間が短いため、闇雲に検査をしても摘発できる可能性は非常に低いです。 逆に抗体は通常感染症を「発症」している時期はまだ産生されていません。回復期になって始めて検出できるレベルまで抗体が産生されるわけです。 つまり、「病気の診断」すなわち現在起きている症状の原因を調べる、という目的にはウイルス検査を行うわけです。抗体検査をして抗体が検出されても、それは過去の感染による抗体である可能性があるわけですから、現在起きている病気の原因を示してくれません。 逆に、ある地域や国というグローバルな単位で特定の病原体が存在するか否か、あるいはとのように動いているか、ということを調べるには(サーベイランス)、病原体を直接調べようとしても著しく効率が悪いため、通常は抗体検査が用いられます。 抗体陽性=その動物は過去に感染している=その地域で過去に病原体が動いていた、ということを意味しますから。 ですから抗体検査とウイルス検査(遺伝子検査を含む)は、最初から性質も目的も大きく異なるわけです。 むろん病原体や疾病の性質によっては抗体検査で「診断」ができるものもありますし、抗原検査(ウイルス検査や遺伝子検査)でサーベイランスを行うこともあります。 口蹄疫だと清浄化を宣言して国際的に認められるには、「日本から口蹄疫ウイルスはまったく存在しなくなった」ことを証明しなくてはなりませんから、抗体検査と同時にウイルス検査や遺伝子検査によるサーベイランスも行われるでしょう。 ただ、ウイルス検査(あるいは遺伝子検査)は、抗体検査に比べて時間と経費が非常にかかるので、サーベイランスはあくまで抗体検査が主体です。例えば抗体陽性の牛や豚が摘発された場合に、その農場や地域の牛と豚のウイルス検査を行う、というような。 今回はワクチン接種動物は全て殺処分されたのですが、もし処分しないとなると、この抗体検査によるサーベイランスでワクチン接種動物が全て引っかかってしまいます。 抗体陽性=ウイルス非存在であれば良いのですが(そういうウイルスももちろん多々ある)、口蹄疫はそうではなく抗体とウイルスが共存することが普通にあるため(持続感染だけでなく一過性感染でも普通にあり得ます)、抗体陽性家畜を全てウイルス検査の対象にするとなると、莫大な手間と経費がかかります。 金の問題よりも検査機関の人の問題(そんなに検査対象が増えると検査機関がパンクしてしまう)や、膨大に膨れあがった検査対象を検査する前に再び感染拡大が始まってしまうリスクが非常に大きくなるのが問題です。 抗体検査でワクチン抗体と感染抗体を識別できれば良いのですが、口蹄疫の場合は持続感染することがあるため、識別で「ワクチン抗体」と判明した個体も野外ウイルスを体内に保持している可能性を消せないため、そもそも「識別する意義が薄い」という話になるのです。 という事情があるので、種雄牛といえども「抗体陽性を見逃す」ことはまずあり得ないでしょう。 例外措置をとるとすれば、ワクチン接種地域内であっても種雄牛はワクチン接種を免除するとか、そういう話になるわけです。
お礼
ご回答ありがとうございました。
家畜衛生分野の獣医師です。ウイルスにも専門知識を有しています。 口蹄疫ワクチンというのはこれです。 http://www.maff.go.jp/j/syouan/douei/katiku_yobo/k_fmd/pdf/bitiku.pdf 製法などは記載されていませんが、不活化ワクチンですので細胞培養したウイルスを不活化したモノ、ということなのでしょう。 このワクチンは発生に備えて常備されています。なので流行した際に迅速に対応ができるわけです。 まあ、そうでなければワクチンを使う意義すらないわけですが・・・ >また口蹄疫ワクチンを打たれた牛でも、口蹄疫にかかったのかどうか検査することもできるようです。 これは間違いです。できません。 ある牛(豚でも良いですが)を採血して調べたところ、口蹄疫ウイルスに対する抗体を持っていた、ということになれば、その抗体が野外株に感染してできた抗体なのかワクチンに反応してできた抗体なのかを識別する手段はありません。 理論的には可能ではあるのですがね。 同じO型の口蹄疫ウイルスでも野外株とワクチン株では抗原性が多少異なるでしょうから、交差中和するなり異なるエピトープを特異的に検出する系を作出すれば識別することは原理的には可能です。 ただ、これらの手法は手間がかかったり開発に時間が必要なものばかりなので、現実には「識別不可能」ということです。特に口蹄疫では時間的猶予がありませんから。 インフルエンザだと多様性がある主要な抗原がHAとNAの2つありますので、例えばH5N1亜型の流行の際にH5N2亜型の株からワクチンを製造すれば、NAに対する抗体を調べることで識別が可能になります。これは鳥インフルエンザの流行の際に海外で実際に使われた手法です。 また、ウイルスの特定の遺伝子を欠損させた株をワクチンに使用すれば、その欠損させたタンパクに対する抗体の有無を調べることで識別が可能です。これも実際にいくつかのワクチンで使われている手法です。 これらはいずれにしろ、ワクチンの方に「仕掛け」を施さないといけないものです。 口蹄疫ワクチンにはそのような識別可能となる「仕掛け」は施されていないので、現在は識別することができません。 いずれ識別可能なワクチンも開発されるかもしれませんが、その意義そのものが薄い気はします。 というのは、口蹄疫は「抗体を持った動物に野外株の感染が成立すると持続感染する場合がある」ことが知られているからです。つまりワクチンを接種した動物に野外株が感染すると、長期間に渡って無症状でウイルスを保持し、時にウイルスを排泄して感染源となる危険性がある、ということです。 なので「識別する意義」がそもそもないわけですよ。ワクチンだろうが野外株だろうが、抗体を持つ動物は無条件に殺処分、というのが清浄化のためには唯一の手段ですから。 なので識別可能なワクチンも開発されない、ということでしょうね。
お礼
ご回答ありがとうございます。 >なので「識別する意義」がそもそもない 和牛の種牛といった希少動物に限り、例外は認められるとのことです。 (訳が正確かいまいち胡散臭いのですけど) >また口蹄疫ワクチンを打たれた牛でも、口蹄疫にかかったのかどうか検査することもできるようです。 これはTBSの報道で、専門の国際機関にインタビューしたものなので、あるらしいです。 うーん、特定のタンパクだけ発現していないウイルスのワクチンとか、なにかワクチン側に細工があるのかと思っていましたが、そうではないのですか。 となるとなんだろう? 血液からDNA検査でもやるのかな?
お礼
失礼、レトロウイルスでしたね。 ご回答ありがとうございます。 感染”歴”を調べるには、やはり抗体しかないということですか。 確かに持続感染になってしまう以上現在の罹患状態だけだと意味がないですね。 あとは種牛のためにどれだけリスクを許容するかという問題と、どこまで例外を作るか、何を持って線引きするかという政治的な問題になってしまいますね。