日本国憲法を質問の前提と解しますが、まずは、憲法学の体系書を読むことからはじめるとよいと思います。
公務員試験から司法試験受験生まで幅広く読まれている
芦部 信喜【著】『新版 憲法』(岩波書店)がお勧めです。個別的な論点で若干説明不足もありますが、網羅的ですし、簡潔にまとまっていて憲法学の体系を理解しやすいと思います。また、大学や公立図書館にも必ずある一冊とおもいます。
さて、老婆心から申し上げると、論文のテーマが漠然としているようですので、更に論点を絞ることをお勧めします。「精神的自由」について原理的に考察をはじめると大論文になってしまうでしょうし。
質問に対するアドバイスに入りたいと思いますが、
日本の憲法学では、精神的自由の中に(1)思想・良心の自由(2)信教の自由(3)学問の自由(4)表現の自由が入ることは学説上異論の無いところだと思います。
(1)思想・良心の自由については内面的な精神の自由です。問題となるのが、謝罪広告の強制、沈黙の自由の侵害(内心の表白の強制)、兵役拒否(良心の自由から・徴兵制とかかわります。)
(2)信教の自由については、内面的な精神的自由と表現行為という外面的な精神的自由の二つの面を持ち併せています。たとえば、信仰する自由、信仰を変える自由、信仰を強制されない自由等は、思想良心の自由と重複します。
宗教的行為(宗教活動、宣伝など)や宗教上の結社の自由は、表現行為の一部であり、外面的な精神的自由といえます。信教の自由の限界が問われた重要な事件が『オウム真理事件』がありました。
(3)学問の自由は、大学の自治と深く係わり合いがあるのですが、これも真理探究の場である大学での研究成果の発表という外面的な精神的自由である、表現行為となります。まだ、多くの論点がありますが、割愛。
(4)表現の自由は、「人の内心における精神作用を、方法の如何を問わず、外部に公表する精神活動の自由」(佐藤幸治『憲法第3版』)と解されています。内心の自由と深い関係にあります。詳細な論点については、割愛。
内心の自由、精神的自由に関する事例は数を上げると限りないですが、主要な事例をまとめたジュリスト別冊「憲法判例百選」(有斐閣)からピックアップして調べてみるのがよいとおもいます。
手前味噌となってしまいますが、私自身は米国憲法の研究をしていますので、お勧めの事件を一つ。
それは、エホバの証人の信者である生徒が米国国旗(星条旗)への敬譲を強制されない自由を主張した事件です。
「バーネット事件」といわれています。
West virginia B'd of Education v. Barnette,319 U.S. 624
この事件は、第二次世界大戦中の米国で起きた事件ですが、国威発揚で星条旗が用いられた米国で、エホバの証人の思想・良心・信教の自由を保護した事例です。方や日本はあらゆる思想を弾圧していた時代と同時期にリベラルな判決が米国では出ているのです。
この事件は、最近では、国旗・国歌法の通過によって注目を浴びています。今でも色あせない高い理念をともなった米国連邦最高裁の判決です。
こういう事件の判決をみると、今の日本は?米国は?などと思索をめぐらすことになり、興味が尽きません。
それでは、論文、がんばってください。
お礼
お礼が遅くなりましてすみません。回答ありがとうございます。とても細かな点まで、そして論文に対するご指導までしてくださってとてもありがたく思っております。 自由というものについて真剣に考え、その考えを論文という形で表すということは、初めてのことです。こうして自由について考えてみると、どこまでも考えが広がっていき、同時に自由を定義することはとても難しいことに気がつきました。今回の論文を通して、今一度、真剣に考えてみたいと思っております。 参考文献や事例・事件に関しても情報を提供していただき、本当に感謝しております。論文、がんばりたいと思います。ありがとうございました。またよろしくお願いいたします。