皆の回答文が纏まっていないので、質問者様は混乱をきたしていることと思います。
ここで質問を整理しましょう。
>気流が翼端方向に流れ、翼端部の境界層が厚くなるため翼端から失速する
しかし、
>境界層が厚くなるということは、翼端部が乱流境界層になると考えて、より剥離しにくくなると思ってしまうのですが
ここで質問が途切れています。 続きを補足すると
“したがって、「翼端から失速する」と矛盾する”
と考えてよいのですね? つまり、
1.後退翼では気流が翼端方向に流れる
2.翼端部の境界層が厚くなる
3.翼端部が乱流境界層になる
4.より剥離しにくくなる
5.翼端から失速すると矛盾する
ですね。
個々に考えていきましょう。
1.後退翼では気流が翼端方向に流れる これについては問題ないようです。
2.翼端部の境界層が厚くなる これについても異論はないようです。
3.翼端部が乱流境界層になる
理由:>「層流境界層より乱流境界層の方が厚いため、」翼端部が乱流境界層になる
No.1さまの「境界層が厚くなる = 境界層遷移して乱流になる」あるいは「厚い境界層 = 必ず乱流境界層」ではない。
と言われているように境界層の厚みと境界層遷移または乱流境界層とは直接的に関係はありません。
境界層とは、簡単にいえば、流体に粘性があれば物体に接しているところの流速はゼロで物体から離れるに従って流速は増加していきついには自由流体の速さと一致します。(自由流速と呼ぶことにします)
物体に一番近い自由流速面から物体の表面までを境界層と呼びます。
流れに平行な平板上面での流れを見ますと境界層は物体の先端がゼロで流れの後ろに行く程厚くなります。
自由流速(= 機速)が遅い場合は、流体同士の運動量の交換が少なく安定していますので、境界層内部の流れは厚みが極端に厚くならない限り(通常境界層の厚みは流れの方向に沿った物体の長さに関係します)規則正しさを保てます。 層流境界層です。
流速が増すにつれ、流体の慣性力が強くなり、粘性で物体表面にくっついた流体との流速差が大きくなり、やがて、境界層の中で渦を伴って境界層の厚さを増しながら物体表面付近の流れとの間で運動量の交換が盛んになり、乱流境界層への遷移が起き、剥離もし難くなってきます。 乱流境界層です。
乱流境界層への遷移は、マッハ数(流体の相対速度と音速(絶対温度と気圧の平方根に比例して変化 = 求めやすい)との比:数値が単純なため(無次元数)ノットなどの速度単位の値を使用する代わりにマッハ数が使われます)と流れの方向に沿った物体の長さ(気流方向の翼弦長)と空気の動粘度(or動粘性係数)に依存します。
この3っつの値を使った関数であるレイノズル数は層流境界層であるか乱流境界層であるかの判断にも使われます。
4.より剥離しにくくなる
乱流境界層の方が層流境界層より剥離し難いというのは、上の説明である程度はお分かりだと思います。
5.翼端から失速すると矛盾する
境界層剥離(層流境界層、乱流境界層の区別はありません)は、翼端であるなどの条件は入れないで考慮します。
一定流速中の有弦長の平板(翼)の迎え角を徐々に増していきますと、流体は慣性で自由流と同じ流れを維持しようとしますが、流体の粘性が流体を平板(翼)に吸いつけよう(剥離をしないよう)と働きます。
やがて、境界層が厚くなるにつれ、自由流付近の境界層の一部が縦方向の渦となって、平板(翼)後縁付近で境界層の下に潜り込むような動きをし、ついには、平板(翼)後縁の境界層を剥離させ始めます。
更に、迎え角を増していくと、自由流と平板(翼)の方向との角度が大きくなり(慣性力>>粘性による吸着力)が剥離部分は平板(翼)前縁の方に進んでき、揚力を極端に減少させ、失速させます。
翼端では他の部分より元々境界層が厚いので、それだけでも一番先に境界層剥離 → 失速という図式を取るのは理解できることでしょう。
機速が遅い場合は、層流境界層剥離 → 失速、速い場合は、乱流境界層剥離 → 失速となります。
ジェット機の失速には、他に気流の部分的に発生する音速の衝撃波によるもの、高高度飛行による、空気密度低下によるもの等々があります。
>層流境界層であろうが乱流境界層であろうが境界層が厚くなるということは、それだけ上下面の圧力差が大きくなっているため失速しやすくなる。
「上下面の圧力差が大きくなっているため」… 違います。そんなこと言っていません。
5.翼端から失速すると矛盾する
上記の通り、層流境界層、乱流境界層の生成過程、境界層剥離 → 失速への移行と境界層の厚さ、などを考慮し検討すれば、同一ケースで、ただ単に「翼端の境界層が厚い = 乱流境界層 ⇒ より剥離しにくくなる ⇒ 矛盾する」という考察過程のどこが間違っているのかは容易に判断できることだと思います。
>ところで揚力の発生原理は、後付の理由と言われるベルヌーイの定理
から翼上下面の静圧の圧力差で生まれるようですが
完全流体の場合ベルヌーイの定理でほとんど説明できますが、実際はもっと複雑で、完全に解明できた理論は存在していないようです。 翼循環理論、平板理論...。
>回答を読んでいくと、揚力は境界層の差から発生すると書かれていることに気づきました。
違います。 そんなことは書いていません。
その他は、字数の関係でかなりはしょってあります。 詳しくは、ご自分で...。
補足
再度回答、ありがとうございます。 理解が遅く申し訳ありません。 >「境界層剥離」はもともと表面近くで逆流域が発生し、 >渦を巻いて流れる伴流の上に境界層がある状態のことを指しているので、 >例えば薄い層であれば表面近くすぐ上に速い流れがある訳ですが、 >厚い層では層の外側から次第に減速していって表面まで達するので >比較的遅い流れの占める領域の幅が広い筈です。 >この方が逆流が発生しやすいとは解釈できないでしょうか。 >圧力勾配云々で考えるよりややこしくないとは思うのですが。 境界層剥離とは、「伴流の上に境界層がある状態のこと」とは しりませんでした。言われてみたら剥離(特に初期?)の上はすぐ主流 というわけではありませんね。 どうやら私は、境界層剥離の基本が理解できていないようです。 確かに層が厚いと、比較的遅い流れの占める領域が広く逆流が発生しやすい と考えることができますね。 No8さまの >やがて、境界層が厚くなるにつれ、 >自由流付近の境界層の一部が縦方向の渦となって、 >平板(翼)後縁付近で境界層の下に潜り込むような動きをし、 >ついには、平板(翼)後縁の境界層を剥離させ始めます。 との説明とあわせると更に納得できるような気がします。 境界層が厚くなると剥離しやすい答えを得られたようで、 ほんとうにご丁寧にありがとうございました。 時間が遅くて、まずはNo6さままでの補足とさせて頂きます。