- 締切済み
核兵器の威力(熱線・爆風・放射線)の被害について。
核兵器は主に熱線、爆風・放射線で攻撃(破壊)しますが、このエネルギー配分は爆風50%、熱線35%、放射線15%と聞きました。 では実際の被害(人間、建物、動植物)などに与えた影響は、それぞれどの程度の割合(つまり何が原因で人が亡くなったかなど)を教えて下さい。 もちろん複合的要因、原因が明確に特定されてない方or建物などもあるでしょうし、そもそも熱線は放射線(中性子線)が発生原因でしょうし、爆風は強烈な熱の上昇が原因ですからややこしいですが、大まかにでも良いので回答御願いします。 追伸 少し不謹慎な質問かもしれませんが、物理学・軍事に興味があるので教えて下さい。
- みんなの回答 (2)
- 専門家の回答
みんなの回答
限定的ですが、東京と茨城県東海村にある高度情報科学技術研究機構のサイトからの引用です。 http://www.rist.or.jp/atomica/data/dat_detail.php?Title_Key=09-02-03-10 半径1.2km以内での死因の内訳は、爆風による外傷が20%、放射線障害が20%、熱線と二次的な火災による熱傷が60%であった。 http://www.rist.or.jp/
これは多くの核実験やシミュレーションで、核兵器の爆発が起こす科学的、技術的な効果については詳細な理解がなされているんですが、もし実際核攻撃があった場合に、それが住民や社会経済に及ぼす直接間接の効果および時間的変化に関して検討がなされた例は少ないそうです。1978年9月8日アメリカ上院外交委員会委員長スパークマンが議会技術評価局(OTA)長に書簡を送り、核戦争の効果について包括的研究を行うよう要請しています。OTAは79年12月「核戦争の効果報告」をまとめています。内容は四つのケースの核攻撃を想定してその場合に目標となった米ソが受ける被害と影響について検討しています。 第1のケースは単一都市に1発の核攻撃が行われた場合で、アメリカはデトロイト、ソ連はレニングラードが目標都市に選ばれました。デトロイトに地表爆発で1Mt×1発のとき、空中爆発で1Mt×1発のとき、および空中爆発で25Mt×1発のときについて検討されています。レニングラードについては、いずれも空中爆発で1Mt×1発のとき、9Mt×1発のとき、および40kt×10発のときについて検討されたそうです。1Mtでデトロイトの死傷者100万超、レニングラードで200万超、9Mtはレニングラード死傷者350万(デトロイト試算なし)、40kt10発でデトロイト300万超、レニングラード200万とのことです。 第2のケースは、限られた核兵器で、電力、精油所等のエネルギー源を破壊することを目的として都市および工業地帯に小規模の核攻撃を加える場合です。米ソとも戦略核10発を相手国の工業地区に投下することになるのですが、アメリカはポセイドン7発、ミニットマンIII3発でソ連の59ヵ所の精油所、貯蔵所を、ソ連は10発のSS18でアメリカの約300ヵ所の精油所、貯蔵所を狙うことにしたそうです。ソ連の攻撃により、アメリカの64%の精油能力が破壊され、空中爆発の場合には約500万人の死亡者が、もし地上爆発の場合には放射性降下物による被害も含めて約320万人の死亡者が推定されています。石油不足の社会経済に与える影響は大きいのですが、農業と重要産業は継続されるとのこと。アメリカの攻撃により、ソ連は73%の精油能力と16%の貯蔵能力が破壊され、空中爆発では約146万人の死亡、もし地上爆発の場合には放射性降下物による被害も含めて約102万人の死亡が推定されています。ソ連の精油所がアメリカより密集していることと、住居地から離れていることが被害の差として表れているそうです。ソ連の場合、農業と重要産業の生産は大幅に低下します。両国とも国民の精神上のパニックは計り知れぬほど大きいらしい。 第3のケースは、ICBM基地、爆撃機基地、ミサイル潜水艦基地等軍事目標に対する攻撃です。この種の研究は国防総省内で多く実施されているので、OTAはそれらの結果を検証する形で検討が行われました。結果は秘密とされていて全貌は明らかにされてはいないのですが、民間人の場合おもに放射性降下物による被害となり、放射線による30日以内の死者はアメリカで全人口の1~11%(200万~2200万人)、ソ連では全人口の1~5%(250万~1250万人)と推定されています。攻撃威力が大きく、現存の核シェルター設備だけと仮定するとアメリカで2000万人、ソ連で1000万人の死亡という計算にもなります。この差は両国の地理的条件によるもので、ソ連地区で生じた放射性降下物は人口密度の小さい地区や中国へ流れる結果となるからです。限定目標攻撃とはいえ、その被害は大きくかつ不確定性が大きいとのこと。放射性降下物に対してシェルターは効果的であり人命を救うのに役立つとはいえ、多数の生命を失い経済活動は進路が定まらず、回復の困難さが国民に精神的なインパクトを与えるそうです。 第4のケースは、非常に大きな核攻撃が米ソの軍事的・経済的目標に対して行われた場合です。まずソ連の先制攻撃ではソ連の有する戦略核兵器のほとんどが使用されます。この攻撃に耐えて残った戦略核兵器でアメリカの報復攻撃がソ連に対して行われます。先制攻撃と報復攻撃との差による被害の相違は、他の要素による大きな不確定性のため、なかなか計算に乗りにくいのですが、両国の死者は1~3までのケースになされた試算よりはるかに大きいとのこと。人口分布、シェルター設備状況、攻撃目標選定政策等の仮定によって変動はありますが、アメリカの死者は全人口の35~77%(7000万~1億6000万人)、ソ連の死者は全人口の20~40%(5000万~1億人)と推定されています。ソ連の死者が少ないのは、農村に住む人口が多いことと、アメリカの核弾頭の威力が小さく放射性降下物が少ないためといわれています。この数字は30日以内の死者でしかなく、そのほかに数百万人は負傷をうけ、その多くは医療不足から、さらに数百万人は次の冬に飢えと寒気で死に至るでしょうし、その後の放射線による死者も増えるはずです。生存者もシェルターから出た日から生存のための闘争が始まることとなります。一つは食糧、エネルギー等の生産で、この生産は残存する物品の消費の割合を上回らねばならないこととなります。おそらく核戦争前の人間の行動パターンは通用しないでしょう。 この報告が示すことは、核戦争の効果には「計算されるもの」と「計算されない不確定さ」があり、不確定性のリスクが計算可能なリスクに比べてきわめて大きいことでしょうね。直接的破壊もさることながら、その後に到来する社会システムの破壊、政治・経済機構の破壊、長期的な生態系の破壊、生存者の精神的ショックとパニック、これらを見積もれる政府はないと思われます。しかし、依然として核戦争の可能性は厳存するのであって、政治家はもし核の抑止が失敗したときに生ずることがらで、「何が分かっているか」と、さらに重要な「何が分かっていないか」を十分に知ることが必要だと結論づけています。核の冬、なんてものもありますしね。