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経済物理学
純粋に物理のネタでなくて恐縮ですが質問させてください。 経済学の修士(金融工学専攻)なのですが、最近経済物理学に興味をもって何冊か入門~中級的なテキストに目を通してみました。 しかし物理を体系的に学んだことがないため、使われている手法の系統的な見通しがありません。参考文献などをみると、 ・熱力学、統計力学 → 市場全体の動きをマクロな溶液にみたてて分析し(熱力学)、個々の株価の変動はブラウン運動などで表現して両者の総合を図る(統計力学的)感じはアナロジーとしては理解できる。 ・流体工学 → 株価の変動にクセがあるのは、単なるブラウン運動ではなくて粘性や乱流があるからだという定式化。 ・量子工学 → 量子はちょっと難解でまだ飲み込めていません・・ などの分析手法が断片的に取り上げられているようにみえますが、アドホックな適用に過ぎないようにも思えます。そこで質問です。経済物理の分野を学ぶとすれば、物理学のどういった分野を基本として学べばいいのか、またはどういうテキストをみればいいのかを知りたいと思っています。関連分野の物理の定番教科書(あまり難解すぎるものではなく、学部上級から大学院前期くらいレベル)や本の紹介でも構いません。
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- moumougoo
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#2です。 "確率解析から眺めるより物理法則からみたほうが直感に訴える気がしているのですが"とのことですが、この場合、波の重ね合わせと拡散過程(確率過程)の重ね合わせ(?というよりか、パスごとの独立性、重ね合わせ)みたいなものの対応関係を言っているので直感的かどうかは微妙なような気がします。解析接続を直感的と思えるかどうかといったところでしょうか? 私は直感的というよりは、上手くできているなぁーと関心して興味深く思ったりします。一方の視点では気がつかなかったり、計算が難しかったりしたことが簡単にできたりするのが重要なのではないでしょうか?(でなければ、学術上はわざわざ経済物理学をする意味がないような気がします)
- moumougoo
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> 使われている手法の系統的な見通しがありません。 > 分析手法が断片的に取り上げられているようにみえますが、アドホックな適用に過ぎないようにも思えます。 物理学自体は、観念的には、粒子の運動がわかれば、ありとあらゆることが分かるという、 還元主義的な学問であるかのように見えるので、なにか系統的な見通しをもって、 すべてのテクニックが体系だてられているかというとそうでもないと思います。 還元していったとしても変わらないものを見出すことが法則や「素」粒子を見出すことで、 そのためにはいろいろなテクニックが使われているように思います。 「ミクロな運動」を「すべて束ねて考える」という意味で 確率微分方程式 →ファイマン・カッツ~複素化~ファインマン経路積分(=量子力学)~複素化~統計力学 →フォッカープランク方程式(=拡散方程式)、シュレーディンガー方程式 といったところはわりとまとまっていると思います。 L.S. シュルマン 「ファインマン経路積分」がよいのではないかと思います。 (シンプルで寄り道せずに、概略をつかめると思います。) これらが、「ミクロな運動」を「すべて束ねて考える」という意味で基本法則を与えるものであるとすると そこから、具体的な現象論を結びつけるのが、スケーリングや繰り込み群の考え方で 現象に潜む特徴をどう捉えるかという、テクニックです。 これに対する適当な教科書は 西森 秀稔「相転移・臨界現象の統計物理学」とかかな。 相転移と臨界現象のような系の自由度が相転移によりどう変化するかといった話と 平均場のような系の自由度をいかに殺して本質を取り出すかといった話がわかればいいと思いますが・・・。 つまり、テクニックとはいっているけど、単純なミクロの経済活動の複雑な絡み合いから、 有意な現象(ミクロな統計量だったりマクロな経済指標だったりするかもしれません)をどうとりだすか? といったことに対応しているのではないでしょうか? ある意味、経済学の醍醐味(意味のある議論)だと思うので、テクニックでありながら本質であるように思います。 一方、流体力学、熱力学はもちろん力学や統計力学から説明はなされますが、現象論的に整えられてきた体系なので、 「有意な現象(ミクロな統計量だったりマクロな経済指標だったりするかもしれません)」を直接扱えるかもしれません。 流体力学については、おっしゃるように工学の方が活発に研究されてるように思います。 経済学とどのように結びつくか良く分かりませんが、単純な保存則? それともエントロピー流みたいなものをいれたもの?乱流の理論? 単純な保存則みたいなものは教科書に良く書かれていると思いますが、それ以外は、 それぞれ専門的な書籍になってしまうように思います(アドホックな手法が必要というか、ちょっと専門的)。 ・・・ということでコメントできません。 熱力学については、平衡やエントロピーといった概念を還元することなく扱うという意味でとても抽象的な話の一方、 具体的な話が入り混じって結構難儀するとおもいます。こちらもコメントできませんが、 できるだけシンプルにポイントを抑えることが必要かなと思いWEBで調べましたところ、 小野 嘉之「熱力学」が評判がよいように感じました。 著者による講義ノートがWEBに掲載されていました。 http://soliton1.ph.sci.toho-u.ac.jp/sm.pdf に10ページ程度にまとめられているので、これくらいシンプルに把握しておいて、 必要なときに必要なところを勉強するような感じがよいのではないでしょうか? お伝えしたかったのは(お伝えできなかったので書いてしまいますが)、 確かに、それぞれのテクニックは個別だったりするのですが、根底には、保存則のような不変なものを見出し、 系を丸ごと上手く説明したい(それを法則を見出す、方程式を見出すといったことだと思いますが)、 という物理学的な動機があって、それはなんというか、そういうセンスで物理学としてまとまっていると思いますので、 そのあたりの感覚がわかると、経済を理解する上でもよいかなと思います。 ・・・物理が分かっているわけでもないのでこんなこというのは実にお恥ずかしいものですね。長々失礼しました。
お礼
質問が漠然としているにもかかわらず、イメージしていたのと非常に近いご回答でした。ありがとうございます!確率微分方程式は伊藤積分とその周辺しか使っていないので、挙げていただいたような範囲の広がりはとても参考になります。資産価格の変動方程式を粒子の運動方程式に見立てるという意味では、ミクロの動きをどこまで精緻化できるかだろうと思っています。金融工学は工学的手法を使っているものの、背後にミクロ経済学と市場全体を扱うマクロ経済学とに別れた理論があるので、ミクロの運動をマクロの系とどう繋げて理解するかという点に、経済物理学の手法を応用できるのではないかと思っています。相転移・臨界現象も興味深いですね。また質問させていただくかもしれませんがよろしくお願いします。
補足
ご指摘の経路積分の本が本屋でもみつからなかったので、確率過程論の本でブラウン運動について立ち読みしてみましたが、複素化や量子工学とのつながりがあまりよく分かりませんでした。確率解析から眺めるより物理法則からみたほうが直感に訴える気がしているのですが。
- AoDoc
- ベストアンサー率68% (100/147)
私は機械工学の材料が専門ですが、必要になったとき、化学や生物などの異分野の専門書を読みますと、はじめて触れる専門用語が多いのと化学などはケーススタディ的な事例が述べられていて共通する原理の記述などが少なく難解です。異分野の知識が必要なとき、私は講談社のブルーバックスを探し、更に詳しくはその本に記載されている参考文献を読みます。主婦向けに書かれているとのことでわかりやすい記述です。結構、参考データなど多く、時間の節約になっています。使えるかどうか分かりませんが、一度本屋の店先でご覧になることをお勧めします。
お礼
ありがとうございます。たしかに、ブルーバックスや新書は不案内な分野を速習する、鳥瞰するのにいいですね。それ以上興味が持てるかどうかの判断にも役に立ちますし、木を見て森を見ずの危険も減らすことができますよね。参考文献をそこから辿っていく方法は自分でもよく使います。
補足
今日、新宿のブックファーストでブルーバックスシリーズの「高校数学から分かるシュレーディンガー方程式」をちょっと読みました。たしかにいきなり量子力学の教科書から入るよりもいいかもしれないと思いました。
お礼
またのご回答ありがとうございます!その後いろいろ読んだりしていると、非平衡の統計力学が結構問題意識に近い感じがしています。「確率解析より物理法則が・・」というのはそれこそドタ勘なのですが、たとえば経済学では動学的な均衡への収束過程などについて抽象的理論モデルはあるものの、実時間上の実証モデルとはリンクしていません。それは計量経済モデルや多変量時系列解析でアドホックなモデルをあれこれひねり出して仮説検定して有意水準に落ちていれば「まあOK」になっています。ですから例えば株価や為替が変動するにしてもランダム・ウォークでない理由を理論から探すのがとても難しいのです。なぜ急騰したり暴落するのか、といったことを行動方程式で内在的にみつけるにはそもそも「そういう運動をする似たような法則」をみつけようとすると、直感的にいいものがみつかるかも、という程度の意味です。その意味では「上手くできてるなぁ」という#2さんの言葉とあまり変わらないのかもしれませんが。