物事の根幹に存在する性質(の存在)を前提にして論理的に思考する力、といったところでしょうか。
いくつくらいの方かは存じませんが高校生以上の教養をお持ちであろうということを前提に説明します。もしもそれよりもお若かった場合はちょっと難しいかもしれませんがご容赦のほどを。
たとえば、空気抵抗がない条件下での物体を投げる運動は、投げられる物体の初速と角度そして重力加速度さえ分かれば、その運動の総ての瞬間における位置と速度は確定することはもうお勉強なされたかもしれません。
が、忘れてはならないのが、このとき投げられるものの形状や色や重さなどの性質は総て無視して同一の『投げられるもの』として扱われることなのです。それは何故なのかといえば、空気抵抗は無視していいという条件下の実験ではことごとく同様の結果が得られ、そこから投げられるものの性質は運動そのものにはなんの影響も及ぼさず、ただ運動に影響を及ぼすのは先の三点のみであることが導きだされたからで、その過程で投げられるものは総て同じものとみなしてもいい、という抽象化が行なわれたのです。
こうした、多くの事象から導きだされた普遍的な性質や法則を前提として考えをすすめてゆくことを抽象的な思考というのです。
しかし、人文科学分野(時には人間に関する科学分野でも)ではその抽象化が個人の印象やその時代における社会/文化的な枠組みに左右されがちなため、客観性よりもそれらに重きを置いた安易な抽象化によって、到底論理的とはいいかねる『論』がまかりとうりがちな傾向がなくもありません。