ル・シャトリエの法則は、質問者さんの言われている例のような開放系の組成緩和については簡単ではありません。(面倒でしたら途中は読み流して最後の方だけでもご覧になって下さい。)
A=-ΣνiμiというAffinityを考えます。μは化学ポテンシャル、νiは反応式の係数(化学量数)で、生成系について正、原系について負とします。系が平衡ならA=0です。AはdQ'=Adξによって、反応進行度dξと非補正熱dQ'に関係付けられる量です。dQ'はdS=dQ/T+dQ'/Tで表されるものでdQ'>0が不可逆過程に対応するものです(エントロピー生成)。dQ'/dt=Adξ/dt=Av≧0が必ず成り立ちます。(dξ/dt=v;反応速度です。)
系に摂動が起こりAがδAシフトしたとき、原系はA=0だったので摂動系のAffinityはδA、また摂動系の反応速度をv'とすればδAv'>0という要請が出ます。これが「考えている因子が受けた変化と反対に変化するような補償的な変化が起こる」という根拠になります。
これから多くの前提とかなり長い計算で結局
(1/νi)(∂A/∂ni)_T,P<0...(1)
ということになります。_T,Pは偏微分するときに定数としたものです。さらに途中を省略して結局理想系(これの説明も面倒なので省きます)では
(1/νi)(∂A/∂ni)_T,P=(RT/νi)(ν/n-νi/ni)...(2)
を得ます。ここでν=Σνiです。
(1)と(2)から組成の緩和は
(1/νi)(ν/n-νi/ni)<0...(3)
即ち、
1/ni>(ν/νi)(1/n)...(3)'
あるいはモル分率xiを用いて
1/xi>ν/νi...(3)"
となり、この条件のときに緩和が起こります。(これが理想系についての結論です。)つまり開放系についてル・シャトリエの原理による組成緩和は反応の種類とモル分率に依存することになります。例えばν=Σνi=0なら(3)"は必ず成立します。質問者さんの例では
H2+I2→2HI...(4)
で、νH2=-1, νI2=-1, νHI=2でν=Σνi=0ですから必ず緩和がおきます。水素を入れれば水素を減らすほうに動きます。よってHIができます。
ν≠0でも緩和が起きる例として例えば
N2+3H2→2NH3...(5)
があります。νN2=-1, νH2=-3, νNH3=3, ν=-2となります。N2について緩和の条件を考えます。(3)"を見れば、
1/x(N2)>(-2)/(-1)...(6)(x(N2)はN2のモル分率)
即ち
x(N2)<1/2...(7)
です。この場合、N2のモル分率が1/2より小さければT,P一定でN2を系に少量加えればN2が消費され、アンモニアができます。しかしN2が1/2より大きければ少量N2をいれると却ってアンモニアが解離します。もしアンモニア添加について考えるならば
1/x(NH3)>(-2)/2=-1...(8)
でこれは常に満たされます。系にアンモニアを少量添加すればかならずアンモニアの解離で緩和が起きます。
なんだか上手に説明できなくて申し訳ありませんがこんなところです。
お礼
回答ありがとうございます。 >バランスを取り戻す方向に反応が起こった結果、また新たなバランスがとれた状態になります。このときのH2,I2,HIの濃度を最初の状態から比べると、I2は濃度減少、2HIは濃度増大であったというだけです。 大変参考になりました。原因と結果がごっちゃになっていました。