キー溝の存在が強度低下に及ぼす影響を知りたいのでしょう?
ならば、難しいことは後回しにして、ザックリとした検討を先にしてみましょう。
まず、キー溝の形状を図1のように想定してみましょう。
その時のキー溝主要部の断面寸法を図2のように定義します。
簡単のために、キー溝は、180°反対側にも対称的に存在するものと考えれば、その断面2次モーメントIと断面係数Zは、図2の下に書き込んだ式のようになります。
この時、キー溝底のρは0と仮定し、キー溝の外周側は円に沿わず、キー溝断面は長方形と仮定しています。
このZを使って計算した曲げ応力は、真の曲げ応力よりも高くなるため、設計上は安全側の評価となります。
ここで、キー溝底のρの存在による応力集中が気になると思いますが、図3のように、キー溝が軸全体にわたって彫られているような形状で、理想的な純曲げが作用すると、キー溝底には応力集中は生じません。
荷重の伝達方向に沿って形状変化がないので、応力集中は生じないのです。
しかし、実際のキー溝には、図1の○で示した部分のように、端部があります。
この端部は、荷重の伝達方向に対する形状変化になるために、応力集中が発生します。
その応力集中の度合いは、図4に示した「断面が長円形状の切欠き」の応力集中を超えません。
図4に示した形状の応力状態は、キー溝深さがあまり大きくない限り、図5に示した、長径端の曲率半径がρであるような楕円孔を持つ板の引張りの2次元問題の応力集中とほぼ同じです。
では、その場合の応力集中率αは?というと、応力集中の専門書(たとえば、西田正孝「応力集中」森北出版)に掲載されています。
この時の応力σは、図2で苦労して計算して求めたものではなく、図5右下に示した、キー溝がない場合の表面曲げ応力です。
強度に影響を与える応力は、ασ なのですが、αが3を越えたら、超高強度鋼以外では、αを3として計算して構いません。
要は、以上の検討でOKであれば、それ以上の詳細な検討は不要です。
もし、微妙にNGであれば、上記説明の中での”大胆な仮定”をより厳密なものに置き換えて計算してみるのも良いでしょう。
ただし、以上はサンブナンの原理を前提とした曲げに対する検討結果です。
実際にキー溝が図1のように軸端面にある場合には、端面付近の荷重分布や拘束状態の影響を強く受けるので、サンブナンの原理が適用できません。
もしこれに該当する場合には、キー溝の詳細形状や、相手側との結合状態を図示説明したものが必要となります。
それよりもこの質問、曲げモーメントに対する強度低下よりも、ねじりトルクに対する強度低下の方が、はるかに重大な問題だと思うのですが、大丈夫ですか?
最後の2つのケースに該当する場合には、この質問の延長ではなく、別の問題として質問しましょう。
そうすれば、他の方も改めて注目してくれて、あなたが希望する”ピッタリの回答”が得られるかも知れません。
お礼
ありがとう御座いました。