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「野火」で主人公の聞いた声
「野火(大岡昇平/新潮社)」の p132で主人公が聞いた「汝の右手…勿れ」の声を、 直後に「村の会堂で私を呼んだ、あの上ずった巨大な声」 と書いていますが、それは作中のどこに出てきた「声」のことなのでしょうか? 出来ましたら、ページ・行とともに、お教えください。
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よい機会なので読み返してみました。 ご質問の箇所は「二九 手」の終りのところですね。 「村の会堂で」と本文にあるのですから、主人公が十字架を目指して村に下りてきたところ、 つまり、会堂のところを思い起こし、ページをさかのぼってみましょう。 すると「一八 デ・プロフィンデス」の章に、 「デ・プロフィンデス」 昨夜夢で私自身の口から聞いた言葉が響き渡った。 とあるのが見つかると思います。これが答えです。 ついでにいえばこの言葉は、「一三 夢」の章で、棺に横たわる自分の口から発される、 「デ・プロフィンデス」 「われ深き淵より汝を呼べり」 De profundis clamavi から来ていることは明瞭と思います。 三段階を踏んで強調されているので、たいへん重要な節目のところです。よいご質問です。 この小説は、ちょっとしたこと、なんでもなさそうなところも複眼的な意図をもって貫かれた「高度」な小説。 「野火」のもつイメージも重層的、象徴的です。 誰かに見られている、あるいは自分が自分を見つめている、といった箇所が何度も出てきます。 作者にとって関心があるのは、極限状況における人間の意識なんでしょうね。
お礼
読み返して頂くなどと言う、お手数をお掛けして済みません。 会堂のところだとは思ったのですが、良くは分かりませんでした。 言われてみると、三回にも渡って強調されていたのですね。 「野火」を改めて、『「高度」な小説』だと思いました。 ご回答、ありがとうございました。