原始取得と承継取得の本質的な違い。
原始取得と承継取得の本質的な違い。
(「94条2項の第三者は原始取得?」を受けて)
承継取得の典型は売買で、原始取得の典型は無主物先占かと思います。
売買は売主の物を取得するので承継取得ですし、無主物先占では前主がいませんので
承継取得したくても出来ないということが出来ると思います。
これは、当たり前の話であって、アプリオリなことと思っておりました。
ところが94条2項の第三者の取得や不法原因給付の終局的な給付を受けた利得者の
取得という問題に直面して、もう少し踏み込んで検討する必要性を感じました。
その結果、私的自治、取引の安全、私的自治の制限としての物権法定主義の検討が必要
かと思いました。
まず、売買と無主物先占では、取得者の意思として、承継の意思(又は認識)があるか
という点で大きな違いがあります。
売買の場合であれば、対抗力のある権利が付着している場合には、その権利の負担をも
覚悟しなくてなりませんし、それが当事者間の合理的意思ととられると思いますし、
取引の安全は保たれていると思います。
一方、無主物先占では無主物であると思っていたものに、実は権利が付着していてそれ
によって負担を強いられるのは、取得者の承継の意思がないこと、取引の安全にも反し
ますので妥当ではないと思います。
個々の制度について、原始取得とされる場合を見ていきますと、その制度趣旨と取得者
の意思から、承継とすべきでない(本来の権利関係から遮断)という妥当性が見えてき
ます。
時効では、本来の権利関係を永続する事実関係に置き換えてしまう制度ですし、取得者
も承継したという意思はないと思います。
即時取得についても、本来の権利関係を外観どおりの権利関係に置き換えてしまう制度
ですし、取得者も外観どおりの権利を取得する意思しかないことになります。
そして、これの場合に本来の権利関係を引き継いだために負担を強いられるのは、取得
者の意思に反しますし、取引の安全に反します。
94条2項の第三者、不法原因給付の終局的給付を受けたは利得者は、上記の観点から
は承継取得ということになりますが、前提となる契約が無効であるとすれば原始取得と
なるという論理も成り立つように見えます。
これをどのように整理したらよいでしょうか?
1.考えてみますと、前提となる契約なりが本来無効であるにもかかわらずに、例えば
94条2項の第三者との間では無効を主張しえないということですが、通謀の相手方の
承継取得の無効を主張しえないとすれば、原始取得云々を持ち出す必要はなかったので
すね。
2.最後に今回の問題の発端になりました、不法原因給付の終局的給付を受けた利得者
の取得なのですが、この場合には微妙なのかも知れません。
といいますのは、給付者は無効を主張しえないのではなくて、本来無効であるところ法
が返還の助力をしない反射的結果として利得者が取得するという観点からは94条2項
の第三者の場合と異なり、原始取得云々の問題になりうるからです。
しかし、利得者が承継取得の意思しかなく、法は積極的に取得を認めているのではない
以上は、第三者を犠牲にしてまで原始取得を認める必要性な少ないと思れます。
前回の質問で、3氏から、貴重なアドバイスを受けて、既に回答を得ていたものが多々
あるにもかかわらずに、理解できずに迷走に迷走を重ねておりました。
今回の一応の到達点も迷走到達点であることを恐れるところですし、飛んでもない思い
違いを恐れるところです。
忌憚のないご指導、ご教授をお願いいたします。