「作家が自殺するというケースが多いような気がする」というのは、確かに言葉足らずの短絡的な質問だと思いますが、その姿勢に批判ばかりしても前へ進まないのでとりあえず実例を。
新人物往来社の「日本<死>人名事典 作家篇」に載っている70人の作家の内、自殺者は6人です。目次より、火野葦平(服毒)・原民喜(轢死)・有島武郎(縊死)・太宰治(溺死)・芥川龍之介(服毒)・三島由紀夫(切腹および斬首)となっています(有島と太宰は心中)。これを多いと見るか少ないと見るかはお任せします。この本には新聞の死亡記事や医師の見解、追悼文、追想文、遺書などことこまかに載っているので、この6人の作家については自殺に至った経緯(らしきもの)を知る手掛かりになるのではないでしょうか。
探したけどなかったので記憶に頼りますが、三島が確か「本当の文学というものは人を断崖絶壁につれていってそこに一人残していくようなもの」と書いていました。こういうものと常に対峙している作家の内、絶壁からダイブしてしまう人もいるでしょう(別に作家じゃなくても)。作家だからこういう要因で死ぬというものでもないでしょう。作家である前に人間なのですから。
もう一つ、作品社「孤蝶の夢」渥美饒兒著には北村透谷の自殺に至るまでの25年の生涯が書かれており、たいへん興味深いです。北村透谷の死についても「結婚したせいだ」と述べる友人もいましたので、何を読んでも解釈は様々です。
作家によっては毎作「遺書のつもりで書いた」という人もいます。「作家が自殺する」という大きなくくりで捕らえず、「自殺をした作家」というピンポイントで要因を探ってはいかがでしょうか。
お礼
ありがとうございます。 ご意見参考にします。