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自律神経と神経伝達物質の関係について
- 自律神経には交感神経と副交感神経がありますが、これらは異なる状態や位置に存在するのか、それとも同じ神経が異なる状態になるのか疑問です。
- 自律神経と神経伝達物質との関係について、セロトニンを例に取り説明します。ある文献では、セロトニンが体温調節や睡眠調節などを行うとされていますが、別の文献では同じような作用を自律神経が行っていると述べられています。この二つの関係はどのようなものなのでしょうか。
- 自律神経と神経伝達物質の関係についてのイメージを表現するならば、交感神経と副交感神経は道路網のようなものであり、異なる状態を持つ神経として存在しているのかもしれません。一方、神経伝達物質と自律神経の関係は、主人と家来のような相互作用の関係かもしれません。
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こんにちは。 >1 自律神経には交感神経と副交感神経がありますが,この二つは状態の違いでしょうか,それとも存在場所そのものが違うのでしょうか。 「自律神経」といいますのは「身体の生理作用を司る中枢」から「末梢の臓器」に信号を伝えるための「末梢神経」です。「自律神経の出発点」は、我々の身体の様々な生理状態を専門に扱う「神経核」であり、「自律神経の種類」はその「神経核(出発点)」の数だけあります。 「交感神経」といいますのは標的臓器に「NA(ノルアドレナリン)」を放出して信号を伝達します。これに対しまして、「副交感神経」が臓器に伝える信号は「Ach(アセチルコリン)」です。 「神経核A」から身体末端に向かうのを「自律神経A」としますならば、「神経核B」を出発点とするものは「自律神経B」です。A、Bは共に同じ「臓器C」に繋がっているのですが、自律神経Aが臓器Cに対してNAを放出する自律神経であるならばそれは「交感神経」です。では、Bが「副交感神経」であるならば同じ臓器Cに対してAchが使われています。 このため、「AのNA」を受容するのと「BのAch」を受け取るのでは臓器Cの反応は異なります。 一般的には、 「交感神経:臓器の活性」 「副交感神経:臓器の抑制」 という役割に分かれています。 多くの場合、「交感神経」と「副交感神経」はセットで使われており、我々の身体の働きはその「活性伝達」と「抑制伝達」によって操作されています。ですが、どちらか一方しか繋がっていない臓器もありますし、また、副交感神経がAchを使っているからといいましても、その信号は必ずや「抑制」として伝達されるわけではなく、臓器によっては「活性」や「通常」といった状態で働くように接続されている場合もあります。 >2 自律神経と神経伝達物質とはどんな関係にあるのでしょうか? 神経伝達物質の働きには、 「細胞同士の情報伝達に使われるもの」と 「神経系の活動状態を変化させるもの」、この二通りがあります。 只今ご説明致しましたような「NA(ノルアドレナリン)」や「Ach(アセチルコリン)」といいますのは自律神経系では「情報伝達」に使われています。 これに対しまして、「5-HT(セロトニン)」いいますのは細胞同士が特定の情報をやり取りするのではなく、それは「脳内広域で常時一定の量」が分泌されており、主に「中枢系の覚醒状態を安静にするため」に使われます。 このようなものを「伝達物質の修飾作用」といいます。NAは自律神経系では情報伝達に使われていますが、中枢系では神経伝達を修飾して脳の覚醒状態を亢進させるという働きを持っています。 5-HTは脳内に何時も一定量が分泌されており、安静覚醒状態を維持するための「修飾物質」ですが、NAといいますのは「いざ!」というときに臨時に分泌され、脳の覚醒状態を一気に亢進させるのがその役割です。このNAの一斉分泌を「ストレス対処反応」といい、我々動物は何か事態が発生した場合はそれに対処するために安静覚醒状態を一時中断して頭の中をきっちりさせます。 自律神経系といいますのは中枢系の命令を身体末端に伝達するのがその役割です。ですから、上記のような中枢系の覚醒状態の変化は自律神経系を介して伝えられ、我々の身体の生理状態はいざという事態に備えるように変更されます。 具体的には、NAが分泌されますと生理状態を活性化させる「交感神経系の神経核の働き」が一斉に強まります。では、NAといいますのは事態が収拾するならば分泌は止まります。ここで、5-HTといいますのは常に一定量が分泌されていますので、NAの分泌が止まれば脳は安静覚醒状態に戻ります。これにより交感神経系の働きは弱まり、副交感神経系の作用が通常通りになりますので、我々の生理状態は日常に戻ります。 このように、我々の身体に実際の命令を伝達しているのは「自律神経系」です。そして、5-HTやNAの修飾作用といいますのは「中枢系全体」に働き掛け、自律神経の命令を伝えやすくしたり抑えたりする働きをしています。 >ある文献には神経伝達物質(この場合はセロトニン)が体温調節・睡眠調節・摂食抑制・催吐抑制・幻覚抑制・血圧の調節を行なうと書いてあり 5-HT(セロトニン)といいますのは中枢系の覚醒状態を変更しますので、結果的にはこのようなものが身体反応として現れるかも知れません。ですが、これが5-HTの働きであるとするならば、それは「間違い」です。これらの働きを司っているのは5-HTではなく、飽くまで各自律神経の神経核の方です。 因みに、この文献の説明はあまり正確なもののように思えません。もしここに「それが5-HTの働きである」と書かれていたとしますならば、それはちょっとおかしいですし、多くの場合、これでは神経伝達物質の理解に甚だしい誤解を招きかねません。 例えば、「体温調節」「摂食抑制」「催吐抑制」「血圧の調節」、このようなものが自律神経系の働きであることは高校の教科書にも書いてあります。 では、「睡眠調節」と5-HTの関係は現在研究中の最先端分野です。ならば、「幻覚抑制」っていったい何でしょうか。幻覚といいますのは自律作用ではありませんし、そもそも脳の働きではないです。 このようなものを参考にするとしましても、何処かである程度の認識と照らし合わせませんと、どうしても混乱してしまいます。現在は実しやかな情報が氾濫していますので、不明な点があるならば、今回のようにこのサイトに立ち上げるのも良いと思います
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- ruehas
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こんにちは。 #2です。回答を熱心にお読み頂きありがとうございます。 そこで、たいへん恐縮なのですが、まず「前回答の誤り」を訂正させて下さい。 正しくは、 「興奮性:脱分極」 「抑制性:過分極」 であり、私は前の回答でこれをうっかり逆さまに書いてしまいました。 ゴメンなさい。 我々が何かを理解しようとするとき、その性質や特徴に基づいてどうしても「分類」という作業を行なわなければなりません。ところが、神経伝達物質の性質や働きをひと括りに分類するというのはたいへん厄介といいますか、まずできないです。 「5-HT(セロトニン)」は「抑制性と興奮性を併せ持つ伝達物質」として知られています。このため、そこでは「第三の性質」に分類されていたのではないかと思います。私自身もしばしばこのような表現を使いますが、実は、厳密にはこれは「誤り」です。 何故かと言いますと、「興奮性・抑制性といいますのは伝達物質そのもの性質ではありません」であるからです。興奮性に働くか抑制性に働くかはその伝達物質の構造や性質ではなく、それを受け取る「受容体(レセプター)」が決定することです。 このため、その伝達物質を「興奮信号として受け取る受容体」であるならばそれは「興奮性:脱分極」となり、「抑制信号として受け取る受容体」ならば相手細胞には「抑制性:過分極」が発生します。 このように「興奮性・抑制性」という性質は「受け取る側の受容体」によって決まることです。そこで、今回は主だった伝達物質の受容体をざっと調べてみました。 まず、「受容体(レセプター)」には大まかに分けて、 「イオン・チャンネル型受容体」と 「Gタンパク質共益型受容体」 この二種類があります。 「イオン・チャンネル受容体」は伝達物質を受け取ることによって細胞体のイオン・チャンネルを開閉し、「特定のイオン」を通過させます。それが「+イオン」を通過させるチャンネルであるならば「興奮性」、「-イオン」であるならば「抑制性」となります。 「G共益型受容体」は「Gタンパク質」というのに働きかけ、細胞内に「シグナル」を発生させます。このシグナルがイオン・チャンネルを開閉させるならば「興奮・抑制」のどちらかに働きます。ですが、このシグナルが「細胞内の状態を変化させるもの」であるならば、その働きは細胞の役割や性質によって異なり、この場合は「信号としては不活性」というのもあります。 「Gul(グルタミン酸)」には、 「AMPA受容体」 「NMDA受容体」 「G共益型受容体」 があります(これが全部ではありません)。 「AMPA」と「NMDA」はイオン・チャンネル型であり、「AMPA」は主に「Na+」、他に「K+」、「Ca+」などの「+イオン」を通過させますのでこれは「興奮性」です。 「NMDA」ではイオンに選択性はなく、様々なイオンを通過させるのですが、普段は「Mg(マグネシウム)」による阻害を受けていますのでそのままでは「不活性」です。 あとは「G共益型」となりますが、「Gul受容体の働き」には全体を通して「抑制性」というのは余りはっきりとは目立ちません。そして、このGul受容体といいますのは「中枢系における興奮性接続の約40%」を担っているということだそうです。このため、我々の脳内でGulといいますのは「興奮性の信号伝達」という働きが最も顕著ということになります。 「NMDA受容体」は入力が繰り返されることによってMgによる阻害が解除されますと活性に転じ、同時に細胞内では「記憶を固定する機能タンパク質」の合成が行われます。このため、NMDA受容体を持つ神経細胞は「長期記憶を保存する細胞ではないか」と考えられています。 「GABA(γ‐アミノ酪酸)」の受容体には、 「GABA-A(イオン・チャンル型)」と 「GABA-B(G共益型)」があります。 「GABA-A(イオン型)」は「Cl-」を通過させますのでこれは常に「抑制性」です。 「GABA-B(G共益)」が何処でどのように使われているのかというのはちょっと分かりませんが、恐らく我々の脳内では「BAGA-Aによる抑制」の方が中枢系の40%を閉める「Gulの興奮性」と相反的に仕様されているものと思います。ですから、特別な場合を除くならば、そこにGABAの投射があるならば、それは「抑制接続」と判断して概ね構わないと思います。 「5-HT(セロトニン)の受容体」は全部で十数種類となり、この内「5-HT3型」のみがイオン・チャンネル型であるのを除きますと、残りは全て「G共益型」です。 「十数種類に及ぶG共益型受容体」、これがどういうことかと申しますと、つまり、この性質や働きをひと括りに分類するというのはまず不可能であるということです。数ある伝達物質の中でも最も正体の掴みづらいのがこの5-HTです。 5-HT全体では、中枢系の上向路では抑制に働き、その広域投射は脳を安静覚醒状態に保つ働きをしていますが、末梢系の下向路では主に内臓や不随意筋を活性化させています。朝起きて顔の表情が定まり、姿勢がしゃんとするのはこのためです。ですが、身体に「鎮痛作用」が働くためには同時に抑制性の受容体もちゃんと配置されていなければなりません。 中枢系では安静状態を保つために抑制に働いているわけですから、この分泌が不足しますと不安状態に陥りやすく、これが「うつ病」の原因になることははっきりと分かっています。ところが、この中枢系においても5-HTを興奮性として受け取る受容体があちらこちらにあり、その理由はまだほとんど解明されていません。これが、「5-HTは興奮性と抑制性を併せ持つ」と言われる所以です。 これに対しまして、「NA(ノルアドレナリン)」といいますのは中枢系の修飾作用」でも「末梢系の信号伝達」でも概ね興奮性です。 自律神経系によって司られている標的臓器にどのような受容体があるのかといったことはちょっと調べが付きませんでした。 ですが、前にご紹介しました、 「交感神経NA→心筋活性や立毛筋緊縮」 「副交感神経Ach→心筋抑制や立毛筋弛緩」 このようなものはその代表的な働きと考えて良いと思います。 このように、「興奮性」と「抑制性」はその受容体が決めることです。そして、その「一斉投射」によって神経系広域に発生する一様の変化が「覚醒・安静」であり、こちらは伝達物質の「修飾作用」によるものです。 「モノアミン」「カテコールアミン」「オピオイド」といいますのは、その化学的構造よる「化学分類」です。 化学的構造が似ているならば性質も似ているということになりますが、その実際の働きといいますのは受容体が決めることですから、我々の体内では「化学分類」と「役割分類」は必ずしも一致しません。 「モノアミン」といいますのは以下のようなものですね。 「5-HT(セロトニン)」 「NA(ノルアドレナリン)」 「AD(アドレナリン)」 「DA(ドーパミン)」 「HA(ヒスタミン)」 これは何処から眺めてもみな「修飾物質」ですが、このうちNAとADは「末梢神経系では連絡物質」に使われているわけです。 従いまして、飽くまでこれは、 「モノアミン:化学分類」 「修飾物質:役割分類」 ということになります。 「カテコールアミン」はNA、AD、DAといった「カテコール基」を持つモノアミンですが、中枢系での修飾作用という機能は他のモノアミンと統一することができます。ところが、この三種類は「副腎髄質」からホルモンのように分泌され、血液や体液を通して末梢系の覚醒状態を更新する物質であることが知られています。 従いましてここでは、 「脳内伝達物質:中枢系の修飾作用」 「身体伝達物質:末梢系の修飾作用」 という役割分類が可能になります。 現在、生体内の伝達物質として知られているものだけでも可也の数になりますし、そこには数種類から十数種類の受容体があります。そして、それがどのような目的で何処に繋がっているのかといったことはまだ全てが解明されているわけではありません。 だいぶ混乱なさったようですが、いっぺんに理解するのは到底困難なことですし、片っ端から覚えるなんてきつ過ぎます。実は、私も三年掛かりで勉強したんです。自分にも覚えがありますが、やはり少しずつ噛み砕いてゆかないとパニックになります。 それから、しばらく続けていますと、そこから先は情報収集がかなり楽になります。
お礼
ruehas様: 繰り返しご丁寧な返答に心から感謝いたします。受容体に関して拝読させていただきましたが,読めば読むほど人間(動物全般?)の体,とりわけ神経組織は実に素晴らしくできていることを改めて実感いたしました。神経伝達物質に関して基礎的な点をご教授いただきましたので,これから学んでいく上で,よい取っ掛かりができました。時間を割いて貴重な情報を提供してくださったことに心から感謝いたします。
- ruehas
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こんにちは。 #1です。回答をお読み頂きありがとうございます。 >NAとAchの両方が通る神経は存在せず,そのどちらが通るかによってその自律神経が交感神経とみなされたり副交感神経とみなされたりするという理解でよろしいでしょうか? はい、その通りです。 ですけど、私の説明はちょっと分かりづらかったですよね。 まず、「信号が通る」というのはどういうことなのかを整理しておきます。 神経伝達には、 「細胞内伝達(電位伝達)」と 「細胞間伝達(化学伝達)」があります。 「細胞内電位伝達」といいますのは神経細胞に発生した「活動電位」が細胞体から外に伸びている「軸策」を伝わって神経終末に到達することです。ここで軸策内を伝わっているのは活動電位に到達した「神経インパルス」です。 この活動電位が神経終末に伝わりますと、そこからは神経終末のシナプスで接続されている別な細胞に対して「NA(ノルアドレナリン)」や「Ach(アセチルコリン)」などの化学物質が放出されます。これが「細胞間化学伝達」であり、その化学物質を受け取った相手の細胞にはまた新たな電位の変化が発生します。神経信号といいますのはこのようにして「細胞内」と「細胞同士」を伝わってゆきます。 「交感神経」と「副交感神経」では神経終末の持っている伝達物質がそれぞれNA・Achと異なります。ですから、交感神経と副交感神経はこの性質の違いによって「解剖学的」に分類されます(中にはADアドレナリンを使う交感神経もあります)。最初からこっちの説明をすれば良かったですね。 これに対しまして、その性質が必ずや活性に働くということではありませんので、 「交感神経:活性」 「副交感神経:抑制」 といった、このような「役割による分類」は厳密にはできませんが、多くの場合はこのような働きをしているということですね。 自律神経や運動神経といった「末梢神経」は、最後まで一本の軸策で臓器まで繋がっているわけではなく、これには幾つかの「中継点」があります。この中継点で行なわれるのが「神経伝達物質の放出による化学伝達」です。 交感神経と副交感神経では、「標的臓器の手前」に当たる中継細胞の終末で放出される伝達物質が違います。 「交感神経核の神経終末(Ach)→中継細胞神経終末(NA)→標的臓器」 「副交感神経核神経終末(Ach)→中継細胞神経終末(Ach)→標的臓器」 >中枢系の命令を身体末端に伝達する役割は脳内伝達物質ではなくて自律神経が担っていると理解してよろしいでしょうか? そうですね、 ですから、中枢系の命令を身体末端に伝えるのは自律神経や運動神経といった「末梢神経系」です。では、ここで情報伝達に使われるのが「脳内伝達物質(神経伝達物質)」です。 他にも「脳内化学物質」などといった言い方もされますが、このように、それは脳の中だけではなく、身体の末梢神経系でも使われているわけですから、やはり「神経伝達物質」という言葉に統一した方が良いと思います。 そして、先に回答致しましたように、 神経伝達物質の働きには、 「情報伝達」と 「修飾作用」の二通りがあります。 これまでの説明で神経伝達物質がどのようにして「情報伝達」に使われるかというのはお分かり頂けたと思います。では、神経伝達物質の「修飾作用」に就いてもう少し纏めます。 「修飾作用」といいましても、何か用事があって伝達物質を使うのですから、それが「神経系の情報伝達」であることに変わりはありません。では、この情報伝達の特徴といいますのは、「通常の神経伝達」のように単一の経路で命令が伝わってゆくのではなく、それがひとつの神経核から脳内の無数の細胞に繋がっているということです。 脳内広域に分配できるNAを持っているのは「青斑核A4・A6」が代表的で、5-HTの含有核は「縫線核B6~8」といったものがあります。ですから、この場合は用事のある細胞に電話を掛けるのではなく、校内放送で全校生徒に指令を出すのと同じようなことです。 では、全校生徒に伝えなければならない用事とは何かといいますと、例えば「火事だ! すぐに非難して下さい」、ということですね。 「5-HT(セロトニン)」といいますのは起きている間は一定量が分泌され、中枢系の安静覚醒状態を維持する働きをしています。これに対しまして、中枢系で修飾作用に用いられる「NA(ノルアドレナリン)」は全校生徒に警報を送ります。 つまり我々の脳内では、 「5-HT:安静状態(抑制)」 「NA:注意覚醒状態(活性)」 という正反対の働きをしているわけです。 中枢系の情報伝達では、 「Gul(グルタミン酸):興奮性」 「GABA(γ‐アミノ酪酸):抑制性」 専らこのような組み合わせが使われています。 神経細胞は他の細胞から「Gul(興奮性入力)」を受け取ると「電位が上がる(過分極)」し、「GABA(抑制性入力)」では「電位が下がる(脱分極)」します。そして、神経細胞は複数の細胞から入力を受けており、この「+・-の総和」が活動電位に達しますと次の細胞に信号が出力されます。 このように、「0,1」の信号伝達は「Gul(興奮性)」と「GABA(抑制性)」の組み合わせで行なわれています。では、ここに横からNAが投射されるというのはどういうことかと言いますと、それによって「信号伝達が活性化」されるということです。 どのように活性化されるかといいますと、例えばNAが投射された細胞は「Gul(興奮性)の+入力」が少々足りなくても信号を発生させてしまったりするといったことです。この場合、脳内にNAが分泌されていなければその細胞は興奮性の数が揃わない限り活動電位に達することはできないはずです。あるいは、自律作用を司る神経核全体にNAが浴びせられますと、その神経核は普段よりも反応が鋭敏になります。 これと逆さまに、5-HTの通常分泌は活動電位に到達するはずの細胞をなだめてしまいます。つまり、「今は無駄な信号を発生させるな」というのが5-HTのメッセージということになります。 このような働きが「修飾作用」であり、これが中枢系広域に対して行なわれますので、脳全体の覚醒状態が一様に変更されます。 5-HTは朝目覚めると共に分泌が始まり、脳内の広域に常に一定の量が分泌されます。これに対しまして、NAは突発的な環境の変化に対して一斉に分泌され、脳内の覚醒状態を亢進させますが、事態が収拾してしまえば分泌は止まります。ですから、5-HTは常に一定量が分泌されているわけですから、NAの分泌が終了すれば、それは必然的に「火事は消えました、安心して下さい」という連絡になるわけです。 因みに、 「NA:覚醒」 「5-HT:安静」 これが必ずしも伝達物質としての役割の全てではありませんのでその点は留意しておいて下さい。ですが、これはたいへん大きな役割ですから、一般的な理解として使用しても別に間違いにはならないと思います。 >>NAが分泌されますと生理状態を活性化させる「交感神経系の神経核の働き」が一斉に強まります。 >とのことですが,「神経核の働き」とは例えば具体的にはどのようなものがあるのか教えていただけますでしょうか。 例えば、体温中枢が「暑い」と判定を下しますと、汗をかいて体温を下げるために以下のような組み合わせが選択されます。 「汗腺通常:副交感神経」 「血管拡大:副交感神経」 「立毛筋通常:副交感神経」 このとき脳内には5-HTが分泌されているわけですが、きちんと調べてはいないのですが、恐らく生命維持に拘わる体温中枢が5-HTによって抑制されているということはまずないと思います。 では、ここに緊急事態が発生し、脳内にNAが分泌されますと「交感神経系」の働きが一斉に強まり、「副交感神経系」の作用はほとんど現れなくなります。 「心拍増進:交感神経」 「血管収縮:交感神経」 「汗腺拡大:交感神経」 「立毛筋緊縮:交換神経」 「瞳孔拡大:交感神経」 「気管拡張:交感神経」 暑いなんて言っていられません、自分の身を護る方が先です。 この辺りが主にNAの分泌による「ストレス対処反応の組み合わせ」になると思います。 摂食行動や生殖行動など、目的の決まった本能行動が行なわれるためにはもうちょっと肌理の細かい組み合わせもあるかと思いますが、咄嗟の緊急事態ですから、取り敢えず「力任せ」といった感じですね。自律神経系は身体の生理状態を整えるのがその役目であり、状況に応じてどのような行動を選択するのかといったことは、もっと高次な中枢で処理されています。
補足
ruehas様: たいへん詳しい情報を提供してくださり本当にありがとうございます。知りたい点はすべて分かったのですが,ruehas様の情報が非常に興味深いため,(かつ,私の知識を遥かに超越しているため)自分なりに調べたところ,さらなる疑問が発生してしまいました。それで,もしご迷惑でなければ以下の点をご教授いただければうれしく思います。 >我々の脳内では、 >「5-HT:安静状態(抑制)」 >「NA:注意覚醒状態(活性)」 >という正反対の働きをしているわけです。 >中枢系の情報伝達では、 >「Gul(グルタミン酸):興奮性」 >「GABA(γ‐アミノ酪酸):抑制性」 >専らこのような組み合わせが使われています。 と,記されていましたので,私は覚醒・活性と関連しているNAはGul(グルタミン酸)の仲間,逆に安静・抑制と関連している5-HTはGABA(γ‐アミノ酪酸)の仲間ではないかと思って調べたところ,この二つの物質は「興奮性」とも「抑制性」とも異なる「興奮性-抑制性」という第3番目のグループに分類されていました。これはNAや5-HTが興奮性物質や抑制性物質にプラスαするような物質(火に注がれる油のような)というような解釈でいいのでしょうか?それとも,そもそも「興奮」と「覚醒・活性」とは全く別の反応ということでしょうか? そして「興奮性」の方にはドーパミン,「抑制性」の方にはエンドルフィン(ただし表記はオピオイド)という私の知っている名称が記されていました。そのドーパミンはNAと5-HTとの3点セットで「モノアミン神経伝達物質」と書かれていて,ますます頭が混乱していますが,この点は上記のような点とは全く別に考えた方がよろしいのでしょうか? 最初の質問から大きくスピン・オフしてしまいましたが,もし教えていただければうれしく思います。
補足
ruehas様: 早速詳しい情報をありがとうございます。とても参考になりました。いくつか確認および質問をさせていただいていいでしょうか。 「交感神経」と「副交感神経」はセットで使われていて,どちらか一方しか繋がっていない臓器もあるとのことですから,NAとAchの両方が通る神経は存在せず,そのどちらが通るかによってその自律神経が交感神経とみなされたり副交感神経とみなされたりするという理解でよろしいでしょうか? 中枢系の命令を身体末端に伝達する役割は脳内伝達物質ではなくて自律神経が担っていると理解してよろしいでしょうか? そして質問したいのですが, >NAが分泌されますと生理状態を活性化させる「交感神経系の神経核の働き」が一斉に強まります。 とのことですが,「神経核の働き」とは例えば具体的にはどのようなものがあるのか教えていただけますでしょうか。