- ベストアンサー
ヒトの脳の変化について
ヒトの脳の変化の仕方が変わり始めたのは、だいたい300万年前ぐらいだと思うのですが(ホモ・ハビリンス時代だと240万年前?)、その年代以降、脳はどのように変化していったのでしょうか? それ以前とでは、変化の仕方も違うんでしょうか? あと、その脳の変化の原因は二足歩行が出来るようになった事と関係があるのでしょうか? 質問ばかりで心苦しいのですが、宜しくお願いします。
- みんなの回答 (1)
- 専門家の回答
質問者が選んだベストアンサー
こんにちは。 お久しぶりです。 人類の歴史は現在のところ600万年弱です。人間の脳はその後半300万年の間に「容量が三倍」という生物史上異例の進化を遂げました。 前半300万年といいますのは「アウトラロピテクス(猿人)」の時代であります。このとき脳の容量は「400~530cc」、体重比はチンパンジーよりもちょっと高いといった程度ですが、やはり前頭葉や側頭葉の発達が目立つということです。そして、人類の二足歩行を象徴するように手を使う神経が細やかで、「脳の左右分化」も既に始まっていたのではないかと考えられています。では、300万年で三倍といいますのはこれ以降の進化です。 私の年表では「ホモ・ハビリス:270万年前~150万年前まで」ということになっています。「ホモ族(原人)」に進化してから150万年前までの間に脳の容量は「800cc弱」に増え、「ブローカ野」の痕跡が発見されています。ですから、前半300万年のアウトラロピテクスとの最も大きな違いといいますのは、容量の急速な増加に加え、何と言いましても言語能力の発達が伴ったということであります。そして、次の「ホモ・エレクトス」では脳の容量と共に言語野の領域も拡大しています。 年代を整理しますと、 「アウトラロピテクス(猿人):600~270万年前:500cc」 「ホモ・ハビリス(原人):270~150万年前:800cc弱」 「ホモ・エレクトス(原人):150~20万年前:1000cc超」 「ホモ・サピエンス(現人):20万年前~現在:1400cc」 さて、我々人類の脳の容量は先人類・ホモ・エレクトスの時点で1000ccを超え、300万年間で三倍という急速な進化の果てに現人類の1400ccに達しました。ですが、現在ではそれが「停滞期」にあり、我々人類の脳の進化はかれこれ20万年に渡って停止しています。つまり、ホモ・サピエンスになってからはぜんぜん増えていないということですね。 にも拘らず、人類の文明の発達は定住生活以降の1万年間に集中しています。では、如何に急速な発展とはいえ、脳は全く変化していないのですから、それは人類の進化ではなく「人類の進歩」ということになります。 どうしてなのかは分かりませんが、このような「脳の進化の停滞期」というのは過去にも繰り返されており、概ね「数十万年~百万年以上」は続いたということです。ですから、これだけ急速に文明が発達したのだから近い内に「新人類」や「ニュー・タイプ」が誕生してもおかしくないのではないか、といったような話は、可能性がないとは言えませんが、ほぼ希望的観測と言わなければなりません。 人類の脳がこのような急速な進化を遂げたのは直立二足歩行の獲得と関係がないとは言えないと思います。 一般的には、我々の祖先は前足を手として使うようになったため、そのための神経伝達や機能分化を進行させる必要があったと考えられています。そして事実、新しい石器や武器が発見されるたびに人類の脳は大きくなっていました。 さて、果たしてこれは「考古学的な説明」であり、生物学・進化論でこれを述べるならば人間は道具を使うようになったから脳が進化したのではなく、脳が発達したから道具が使えるようになったと解釈しなければなりません。ですから、これではどうして脳が大きくなったのかに就いてはきちんと説明することができないわけです。ですが、他の四足動物は手を使うことが許されないためにこのような方向に進化することがなかったというのは間違いないことだと思います。ならば、脳が発達したことと手を使えるようになったことが無関係であるとはどうしても言えないわけです。 同様に、直立歩行の身体骨格は脳の重量を支えるのに適していますので、これが脳の発達を可能にしたというのは生物学的に筋が通っています。ですが、これも人類の脳が他の哺乳動物の平均値を遥かに超えて拡大し続けた直接の理由にはならないように思えます。 ならば、ここから先は私の憶測ですが、恐竜の絶滅によって適応放散した哺乳動物の脳の容量は体重に比例して拡大を続けました。この「脳の体重比」が哺乳動物全体を通して平均を保っているのは、それは必要以上に脳が発達するならば生体活動の均衡秩序が乱れ、それが進化・存続の妨げになるからです。では、哺乳動物の脳の容量はといいますのは元々常に増加の傾向にあり、二足歩行を獲得した人類だけがこの体重比の制約を免れることができた考えることができます。鳥類や肉食恐竜は二足歩行ではありますが、骨格が直立歩行ではありません。そして人類は、脳が消費するエネルギーを手を使うことによって有効に利用しました。 何れにしましても、人類の脳の発達が二足歩行の獲得と関係しているというのは恐らく間違いありません。ですが、何が原因でこのような急速な発達を遂げ、挙句の果てには言語能力という特殊な機能を獲得するに至ったかはまだきちんと解明されてはいないと思います。
お礼
お久しぶりです。 いつもピンポイントの回答をありがとうございます! やはり脳のことは完全には解明されていないんですね。 現在は停滞期と言われますが、私としては今の状態から脳が進化した状態を思い浮かべる事は出来ないですね(笑 今回も的確な回答で凄く助かりました。 今後もお世話になると思いますが、宜しくお願いします。