以下、他の回答者の方と重複する部分もあるかもしれませんが、学校文法の立場からご説明します。
●二通りある「主語と述語」
学校文法(中学)で始めにつまずきやすいのがこの点です。
「主語と述語」といった場合、次の二つの場合があるのです。
(1)文節どうしの関係を表す用語
まず中学では、文節の働き、および文節どうしの関係を習います。その関係には、次のようなものがあります。教科書によって、呼び方が異なるかもしれませんが、基本的なことは変わりません。
A主語・述語の関係
B修飾・被修飾の関係
C接続語
D補助の関係
E並立の関係
以上は、あくまでも文節どうしがどういう関係にあるかを示す言葉であって、下に書くような、文中における働き(成分)を示す言葉とは別です。
さて、ご質問の言葉の場合、「兄の」と「描いた」とが、Aの主語・述語の関係にあります。「兄【が】描いた」と言う、主語・述語の関係(意味)を表しています。くどいようですが、ここでいう主語・述語は、文全体における成分としての主語・述語とは別です。
(2)文の成分を表す用語
これは、文全体においてどのような働きをしているかを表す用語です。つぎのようなものがあります。
a主語
b述語
c修飾語
d接続語
e独立語
以上は、誤解されやすいので、文法の本を書いたり、文法の試験問題を作ったりするときに、非常に気をつけるところなのですが、質問者の方の学校の先生は、はっきり言って全く理解なさっていないようですね(失礼!)。
(3)連文節
ここで、連文節についてちょっと説明しましょう。連文節とは、二つ以上の文節が合わさって、文の成分となったものを言います。上の(2)a~eにあたる働きをします。連文節の場合は、「主部」「述部」……というように、「~部」と呼びます。
ほかの方もおっしゃっているように、「兄の描いた絵」というのは文の体裁をなしていません。よって、”この文の「主語・述語」は何か”と問うことは全くナンセンスです。もし先生が心の広い方でしたら、この回答を見せて差し上げるとよいと思います。心の狭い方ならば、この場は黙っていた方がよいでしょう。ただ、この先生の言うことは(少なくとも国文法に関しては)全く信用できないので、独学するしかありません。残念ながら。
具体的に、文の組み立てを見ていきましょう。
「私は兄の描いた絵をじっと見つめた。」
この文では、「私は」と「見つめた」は、文節どうしの関係という点でも、文の成分という点でも、「主語」「述語」です。「兄の」と「描いた」は主語・述語という文節どうしの関係で連文節になり、修飾部として「絵を」に係っています。そして、「兄の描いた絵を」という三つの文節からなる連文節(修飾部)になります。「じっと」は単独の修飾語です。
以上を整理すると、次のようになります。
(1)文節どうしの関係
私は-見つめた。……主語・述語の関係(たまたま成分でもある。)
兄の-描いた……主語・述語の関係
描いた-絵を……修飾・被修飾の関係
絵を-見つめた。……修飾・被修飾の関係
(2)成分
私は……主語
兄の描いた絵を……修飾部
じっと……修飾語
見つめた。……述語
説明がわかりやすかったかどうか、どこまで理解していただけたかどうかはわかりませんが、一応中学校で習う国文法の立場からいうと、上のような説明になります(私は中高生向けの文法書などを書いている者です。)。学校で習う文法以外のことについては、混乱なさるといけないので省略しました。ほかにも説明すべきこと(どのような場合に連文節になるのか、など)はたくさんあるのですが、長くなるのでこれでやめます。もし疑問やわからない点がおありでしたら、質問を補足してください。
補足
kyouzaiya-kさん、わかりやすい解説ありがとうございます。 ボクとしては、ほぼ理解できたつもり(?)です。 大きく端折りますが、例えば問題が 「『兄の描いた絵』の主語と述語の関係にあるのはどの語とどの語か」 などと書いた問題ならば 「兄の」と「描いた」が主語と述語の関係である。 と答えれば良かったのでしょうね。 子供から口頭でしか聞いていないのでもしかしたら そのような問題だったのを子供が上手く理解出来ずに ボクに説明したのかもしれません(^^;) 一方で、子供の言ったとおりの問題だとすれば回答はやはり 「兄の描いた絵」というのは文の体裁をなしておらず、 ”この文の「主語・述語」は何か”と問うことは 全くナンセンス!!となる、と考えていいでしょうか。 ボクは、kyouzaiya-kさんの説明でそれ以外の部分もかなり 納得したのですが、子供にどれだけ説明できるかが心配です(苦笑)。