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事故で妊婦が流産した場合、殺人罪は適用されない?
例えば、雨の日に妊婦が路面の滑りやすい歩道を歩いていました。 忙いで走ってくる人が後ろからその妊婦にぶつかり、妊婦は転倒し不幸にもその妊婦は臨月で病院に運ばれ緊急出産しましたが子供は死亡してしまいました。 胎児はこの世に出てこなければ人として認知されないことから、流産してしまった場合は殺人罪は適用されないと聞いたことがありますが、今にも産まれそうな赤ん坊の場合傷害の結果死亡してしまった子供が産まれてきた場合は殺人罪は適用されるのでしょうか?
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回答者の皆様が指摘されているように、この事例では加害者に殺意がないため、殺人罪が成立する余地はありません。 次に、質問文にあるように傷害の結果によって死亡した場合は、傷害致死罪に当たりますが、これも否定されます。加害者は不注意のために妊婦にぶつかったと思われるので、傷害致死罪の成立要件である傷害の故意、つまり、わざと傷害を負わせる目的で加害行為に出たということが認められないからです。 常識的に考えても、たまたまぶつかった相手が臨月の妊婦だったから、殺人罪に問えるかというのは論理の飛躍です。刑法は、偶然性に起因する結果だけを評価して刑罰を科すような法理論はとっていません。 結局、ここでは過失致死罪の成否が問われることになります。 さて、刑法での殺人罪や傷害罪等の客体は「人」ですが、胎児がどの時点から「人」になるかについては、出産時に母体から一部分でも外界に出た時とする「一部露出説」が通説になっています。 このように、刑法を厳格に解釈すると、胎児は「人」ではないので、胎児に対する傷害罪等は成立しないことになります。そこで、胎児の身体への侵害をどのように保護すべきかという「胎児性致死傷」の問題が刑法上の争点になるわけです。 これに似た問題が争われた胎児性水俣病の事件で最高裁は、胎児を母体の一部と捉え、「人」(母親)の身体の一部に危害を加えることによって、生まれてきた「人」(胎児が生まれた後の状態)を死亡させたのだから、業務上過失致死罪が成立すると判示しました。これは、胎児を母体の一部とした上で、母親と生まれてきた子どもを共に「人」として符合させるという捉え方でした。 しかし、このような論理構成には批判も多く、胎児にではなく母親に対する傷害罪を考えればよいとする主張等がありました。 この判決は、明確な企業犯罪事実をどのように処罰するかという観点から、当該事件にのみ適用される法理であり、以後の判例にはならないとするのが妥当かと思われます。 なお、下級裁判所の裁判例では、出産間近の妊婦が負傷し、その後に生まれた新生児が死亡した交通事故について、業務上過失致死傷罪を肯定したものがありますが、上記の最高裁判決の捉え方との兼ね合いから、極めて異例な事案とされています。 上記の交通事故の裁判例をご質問の事例に当てはめたとしても、常に人を殺傷する危険を伴う自動車の運転者と単なる歩行者とでは、その注意義務の程度に大きな差があります。 この事例では、加害者が後方から急いで走ってきたのであれば、相手が妊婦であることも認識できなかったと思われるので、安全配慮義務は軽減されるでしょう。 結局、この事例では、刑法上の可罰性が低いので、刑事責任は問えないと思われます。強いて処罰を求めるのなら、妊婦に対する過失傷害罪にとどまるでしょうが、これは親告罪なので妊婦が告訴しなければ罪に問えませんし、仮に有罪になっても罰金刑のみの微罪です。 ただし、加害者が相手を遠方から臨月の妊婦であることを認識しながら、何ら危険を回避することもなく衝突したようなケース、つまり、故意に近いような過失があった場合は、その過失行為と胎児の死亡に因果関係が認められれば、過失致死罪が成立することも稀にはあるでしょう。
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- pulsar-gti
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殺人罪には絶対に問う事はできません(殺意がないから)。そのため、車の事故で相手が死亡しても殺人罪には問われません。これは「業務上過失致死」となります。 問うなら「過失致死」みたいなもの。事故と因果関係を証明できれば。
- n_kamyi
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殺人罪は「殺意」を持っている場合に適用されます。
- isoyujin
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故意ではないのだから、出産前の胎児が人と認められても、業務上過失致死罪になります。間違っても殺人罪にはなりません。 つか、そんな例え話はないでしょう。
お礼
詳細なご回答ありがとうございました。 大変参考になりました。