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固体中の転位と不純物

こんにちは 固体中に発生した転位が不純物にピン止めされることで その運動が阻害される現象がありますが、なぜ不純物と相互作用するのか分かりません 不純物原子の半径が母体の原子より小さいため・・・という記述がありましたが その意味がいまいち理解できません、ここでいう不純物原子は炭素や窒素を仮定しています どうぞよろしくお願いします

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  • Umada
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回答No.1

なるほど、転位が結晶中の単なる仮想的な曲線で、不純物が単なる点であるならば相互作用するのは不思議に思えます。 しかし実際の転位はその周辺に必ずひずみを伴いますし、不純物の存在も周囲にひずみを与えます。その不純物が置換型であっても侵入型であってもです。ひずみを伴うもの同士と考えれば相互作用があることは納得できると思います。 とりあえず結晶中の刃状転位の図を描いてみます。○は個々の原子に対応します。またご存じかと思いますが「⊥」は転位の存在を表す記号です。  ○  ○  ○  ○  ○  ○  ○  ○A ○  ○   ○  ○ ⊥ ○  ○    ○   ○   ○  ○    ○  ○  ○  ○ 図1 結晶中の転位 図中で転位の上方、Aと記した原子の近傍は圧縮側にひずんでいます。これと逆に転位の下方では引張り側にひずんでいます。ここに不純物がやってきた場合、その不純物の原子半径が結晶を構成する原子のそれより小さいなら、転位上方のAの位置に入った方がエネルギー的に安定です。(原子半径が大きければ当然、転位下方に入るのが安定) とりあえず図2のように不純物原子(●)を入れてみます。半径は結晶構成元素のそれより小さいとします。ひずみの変化を図でうまく描くのは難しいですが、図1よりエネルギー的に安定となることはお分かりいただけると思います。(細かく言えば原子半径以外の要素もあるのですがここでは割愛します)  ○  ○  ○  ○  ○   ○  ○   ●   ○  ○   ○  ○ ⊥ ○  ○    ○   ○   ○  ○    ○  ○  ○  ○ 図2 不純物での置換 また図2の状態から例えば図3のように転位を移動させようとすると、エネルギー的により安定な状態から転位を引き抜くことになりますからその分余計にエネルギーが必要です。図2のようにいったん転位と不純物がペアで落ち着いたなら、不純物を動かすにしても転位を動かすにしても簡単ではないということがお分かりいただけるでしょう。  ○  ○  ○  ○  ○   ○  ○   ●   ○   ○   ○  ○  ○ ⊥ ○    ○   ○  ○   ○    ○  ○  ○  ○ 図3 転位の移動 そもそも転位の周辺には不純物が集まり易いことも知られています。上で「原子半径が小さければ転位上方に入ると安定」と書きましたが、その相互作用は意外に大きくて室温での熱的エネルギーの10倍~20倍あります。 実際に転位周辺に不純物が集まってくるかは母相中での拡散速度にもよりますが、金属材料などを溶融で作る場合は固化直後に温度が十分高い状態を経ることになります。その温度域であれば当然ながら室温より何桁も大きな拡散速度を有するので、不純物の転位近傍への集積は一般に容易に生じる現象です。 転位周辺に不純物が集積するとエネルギー的にはさらに安定になり、転位をそこから移動させるのはますます難しくなります。このように転位を理由に不純物が集まった周囲環境(雰囲気)のことをコットレル雰囲気(Cottrell atomosphere)と呼んでいます。 転位やひずみ、不純物との相互作用についてここで全てを説明することは残念ながら不可能です。大学の講義にして少なくとも1、2回の分量はあります。もしさらに詳しく知りたければ鈴木秀次「転位論入門」(アグネ、1967)あたりをご覧になることをお勧めします。版を重ねて長いこと出ている本なので、大学工学部の図書館などで見つかると思います。

acquapazza
質問者

お礼

詳細なご回答をして頂きありがとうございます 結局転位と不純物間で直接起こる相互作用というより お互いが作り出す歪み場の相互作用と解釈したほうがいいのでしょう 小さな原子を不純物として入れることで誘起される歪みが影響していると >熱的エネルギーの10倍~20倍あります。 一度ピン止めされるとそう容易には動けないんですね とても有意義な講義を聴いているような気がしました ありがとうございました

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