>1パラメータを時刻、Kをベクトル空間における値、
>変換群を演算子として考えると、たとえば、時刻tに対
>して連続に変化する演算子A(t)を考え、同様にtが若
>干変化した演算子A(t+dt)を考えると、y1=A(t)x と
>y2=A(t+dt)xを計算した場合、Lie微分はy1とy2の差で
>ある、という解釈でよろしいのでしょうか?
概ね正しいと思いますが、いくつかの注意が必要です。
1.前回は可能な限り平易に書いたつもりですので、
その対価として著しく厳密性を欠いています。
ここを考えた上で、「y1とy2の差」というとらえ方を
修正する必要があります。
2.演算子A(t)の大まかな意味を理解していないと意味がありません。
[1について]
Lie微分の正しい式は、ベクトル場Xの1-parameter変換群をφ_t(x)と書くとき、
lim_{t→0} [{(φ_(-t))_*}Y - Y] / t
です。
これは、tでparametrizeされたベクトル場{(φ_t)_*}Yの意味を
理解していれば、次のように読むことができます。
(tを固定するたびにベクトル場が1つ決まる、という状況です)
いま、φ_0は考えている多様体M上の自己微分同相ですが、
1-parameter変換群の定義によりこれは恒等写像です。
ですから、ベクトル場の族Y(t)を、
Y(t) = {(φ_t)_*}Y
で定めれば、上の式は
lim_{t→0} {Y(-t) - Y(0)} / t
と書けます。
符号にさえ注意すれば、あとは普通の微分と同じように理解できます。
(これは「-Y'(0)」です)
republikyさんの言葉で言えば、A(t)は(φ_t)_*に相当すると思います。
よって、修正するとすれば、Lie微分とは
A(t)のt=0での「導関数」の、符号を反対にしたもの、となります。
#1では符号については敢えて書きませんでした。
[2について]
後は(φ_t)_*の意味をつかめばいいのですが、
正直、これは図なしで説明するのはキツいです。
まず、一般の微分同相写像fの場合の、(f_*)Yを説明します。
(数学的には、fが単に写像、というだけでは定義がうまくいかないことに注意してください)
ベクトル場Yを「流れ」として考えた場合、
その「流れ」を表す曲線たちをfで写すことができます。
その写した後の流れが表すベクトル場を、(f_*)Yと書きます。
例えば、Euclid平面上で、Y=d/dx(x軸方向の大きさ1の「流れ」)、
微分同相fを原点を中心とする90度回転、とする場合、
(f_*)Y=d/dy(y軸方向の大きさ1の流れ)
となります。
数学的な式では、{(f_*)Y}(x) = (f_*){Y(f^(-1)(x))}です。
(この式と上の定義が同じ、ということが分かれば理解完了です)
(右辺のf_*はdfと書くこともあります)
(fの逆写像を使って定義するため、fが微分同相と仮定しました)
さて、{(φ_t)_*}Yに戻ります。
tが十分小さい場合、{(φ_t)_*}Yは、
ベクトル場Yを上のやり方で、Xの流れに沿って少しだけずらしたもの
と考えられます。
「流れを、流れに沿って流す」わけです。
図を描いてイメージをつかむのが良いと思います。
うまく説明できなくてすみません。
[補足]
・Lie微分の計算は、L_X(Y) = [X,Y] = XY-YXを駆使すればできると思います。
・Lie微分の他に、共変微分というものもあるのですが、
共変微分と比較した場合のLie微分の特徴は、点pでのL_X(Y)の値が
何に依存するか、という点です。
共変微分はXのpでの値と、Yのpの周りでの値に依存し、
Lie微分はXのpの周りでの値と、Yのpの周りでの値に依存します。
(Lie微分には「微分する側」と「微分される側」の性質上の区別がありません)
お礼
詳しいご説明ありがとうございます。 まだ力不足で、理解が不十分な点が若干ありますが、 以前に比べかなりクリアになったような気がします。 zzzzzzさんの回答を参考に、再度勉強して完全な 理解にしていきたいと思います。