私は全く門外漢なのですが、#1の方が挙げられた本川達雄先生の著作もいくつか読みましたので、若干ですがコメントさせてもらいます。
本川先生によると、恒温動物の種ごとの平均的なエネルギー消費量と体重との関係には、以下の式があてはまるそうです。
標準代謝率(単位:ワット)=4.1×(体重の3/4乗)
この式の意味するところは、エネルギー消費量は体重の4分の3乗に比例するということです。種によって個体サイズはもちろん違うのですが、エネルギー消費との関係ではこの式が常になりたつそうで、まずもってこの関係を満たすことがエネルギー面での適正サイズということになるようです。
この式で興味深いのは「4分の3乗」ということで、つまり身体が大きくなるほど身体の割りにエネルギーを食わなくなっていくことになる点です。仮に体重が10倍になってもエネルギー消費量は5.6倍にしかならず、ハツカネズミの10万倍の体重があるゾウの体重あたりのエネルギー消費はハツカネズミのわずか6%弱程度で、つまり大きい動物は相対的に小食だ、ということになるそうです。
なぜエネルギー消費量が体重に正比例しないのかは、動物学の大きな謎のひとつでまだ答えがないそうです。エネルギーを細かく体内に運ぶために血管が細かく枝分かれする必要があり、その程度が関係するのではないか、というフラクタル幾何学からの説明が最近試みられているとのことです。
(基本的に種の大きさを問わず細胞はほぼ10ミクロンという大きさだそうで、これは循環器なしで栄養物質を拡散によって行き渡らせられるサイズの上限なのでは、とされています。動物はこの細胞を積み上げて個体を形成するわけで、大きくなることで増える酸素や栄養物質の循環の能力負担、重力の問題…などもサイズの規定要因になっているはずです。)
このほか、種ごとのサイズについていろいろと考えられることがあります。
まず、当然ながら個体サイズの大小は「体積」と「表面積」の関係を変えるため、動物の生活形態と密接な関係にあることです。
個体サイズが2倍になると単純に体積は8倍になりますが、表面積は4倍にしかなりません。つまり、原生動物など相対的に小さな生き物は、体積に対する表面積の割合が極めて高いことになりますから、当然乾燥に弱くなり、必然的に水の中で生活することになります。逆に言えば、水の中で生活するからこそそのサイズが適正である、ということでしょう。
昆虫など外骨格型の生き物のサイズは、まさにこの「体積」と「表面積」の関係に大きく規定されています。
昆虫が大きくなれないのは、体積つまり重量が8倍になった時にそれを支える外骨格は表面積に比例して4倍にしかならないからで、充分な強度を保つためには中身を少なくしてまで外骨格を厚くせざるを得ず、結果として大きくなるメリットが無くなることになります。
また、サイズに伴うこの表面積の変化の問題は動物の移動手段とも関連します。小さな原生動物が筋肉でなくて繊毛で動くのは、体積に対して表面積の割合が高く、繊毛をたくさんはやせるからでしょう。身体が大きくなると表面積の比率が下がるために充分な動力が得られず、どうしても筋肉を使わざるを得なくなってきます。筋肉が発生させる力は断面積に比例しますので、身体の巨大化にみあう筋力が得られるわけです。
一方で身体が大きくなると、それだけ多くのエネルギーを必要としますので、餌を捕捉するためにそれに見合うだけの運動能力とスピードが担保される必要があります。これはそのまま、個体のサイズを規定する要件にもなってきます。つまり、種の個体の大きさは、身体の構造、生活形態、もろもろの条件が相互に関係しあったところに落ちついていることになるのでしょう。
他にもいろいろ条件があるはずですが、私にはうまく整理できませんので、詳しい方のフォローを期待させていただきます。
お礼
neil_2112様 若干どころか大変詳しくコメントを頂き有り難うございました!十分活用させていただこうと思っています!