現代ギリシア語なら、数字のゼロに対応する言葉はあります。それは中性名詞の medeniko(メーデニコン,μηδενικον。[注] これは古典ギリシア語式の読み方です。現代ギリシア語だと読み方が少し違います。例えば、「ミーディニコン」と読むのかも知れません。現代ギリシア語の辞書・文法書を入手しておかないといけませんね。このサイトで回答すると、その必要があるようです)です。
しかし、古典ギリシア語の場合、確実にそうとは言えませんが、「無、何も無い」の意味の「ゼロ」ならありますが、数字を書く時の「位取り」の機能を果たすゼロ(0)はなかったというのが自然です。元々インド数字の位取りの「ゼロ」も、sunya というような言葉で、これは『般若心経』で、「色即是空」とか云っている「空」が、この言葉に当たるのですが(少し形が違っています。お経では、「空性」と云っていて、「空」の抽象的名詞になっていますが、元の言葉、そしてゼロは、この sunya・シューニャです)、結局、「何もない、無」というような意味です。位取りの記号も、これで呼んだのが画期的であったのです。
古典ギリシア語で、「無、空、何もない」は、幾つか候補があると思いますが、端的に、「無、ゼロ」は、kenon(ケノン,κενον)、または keinon(ケイノン,κεινον)です。ただし、これは、数字表現の位取り記号のゼロの意味や、機能は持っていません。インド人がそういう数字の表現方法を見つけ、発明し、それがアラビアに伝わって、更にヨーロッパに伝わったので、知る限り、古典ギリシア語には、その概念や言葉はありません。ただ、概念が伝われば、「ケノン」で、位取りの「ゼロ」にしても良い訳です。
なお、zero は、アラビア語の sifr の変形で、cipher というのは、アラビア語ではなく、英語です。「sifr(アラビア語) → cifra(中世ラテン語) → cifre(古フランス語) → siphre(中世英語), cipher(英語)」となったものです。
お礼
大変参考になりました。 zeroもcipherももともとは一緒なんですか。 感じがだいぶ違いますね。 ありがとうございました。