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不動態の「緻密な酸化皮膜」って?
不動態の説明で「緻密な酸化皮膜」という言葉をよく見かけますが、この「緻密な」というのにどんな意味があるのでしょうか。 単に「均一な膜になっているわけではない」というだけの話でしょうか。 緻密じゃない酸化皮膜だったら腐蝕する(しやすい)が、緻密な酸化皮膜なら腐蝕しない(しにくい)ということはあるのでしょうか。 さらに極端に言えば「○○という金属が、酸化○○の皮膜を作って不動態となる場合、酸化○○を溶かす液体には一般に単体も溶ける」と言ってしまうことはできるのでしょうか。
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> 緻密じゃない酸化皮膜だったら腐蝕する(しやすい)が、 > 緻密な酸化皮膜なら腐蝕しない(しにくい) 念のために説明しますが、このとき「腐食されるもの」は 「まだ酸化されていない金属部分」であって、 「酸化被膜(酸化物)の部分」ではありません。 もしかしたら、この点を勘違いされているのではないでしょうか。 (酸化被膜については、同じ条件下での酸化数の上限まで酸化数が 上がっていて、それ以上酸化は進まないものと思います) 不動態では、「緻密な酸化被膜」は文字通り「被膜」となって、 金属部分と外界(酸や空気)との接触を断ちます。 このため、金属はそれ以上腐食されずにすみます; 酸や酸素などが入る隙間がない ●●●●●● ←酸化物の層(酸化被膜) ○○○○○○┐ ○○○○○○|←金属 ○○○○○○┘ 一方、通常の酸化(→例えば鉄の赤錆)では、 金属表面に酸化物が生成した後も、そこには隙間が生じるため (→カウンターイオンや酸化数が異なるものが混ざることが、その一因と 思います ; 例えば酸化鉄(III)や四酸化三鉄、水酸化酸化鉄の共存)、 金属部分と外界とは接触可能なままになっています。 その結果、金属の腐食が続くわけです; 酸や酸素などが入る隙間がある ↓ ↓ ↓ ● ▼● ● ▲ ←酸化物の層 ○○○○○○┐ ○○○○○○|←金属 ○○○○○○┘ ということで、 > 「○○という金属が、酸化○○の皮膜を作って不動態となる場合、 > 酸化○○を溶かす液体には一般に単体も溶ける」 との2番目のご質問は、一応以下で説明しますが、上とは別のお話になります。 (上は金属部分の腐食に対する酸化皮膜による保護の話であるのに対して、 下は酸化被膜そのものの反応性の話なので) 通常、『金属酸化物を溶かす液体→単体を溶かす液体』との関係は 必ずしも成り立ちません(「CuO+2HCl→CuCl2+H2O」など)。 ただ、「不動態となる金属」という限定下では、 「不動態となる金属→水素よりもイオン化傾向が高い金属」となるので、 その「液体」を「プロトンを発生する酸」と想定する限りは、成り立つといえます。 一方、もし「金属酸化物を溶解可能な非プロトン性溶媒」というものが あれば(→とっさに思い当たるものは浮かびませんが)、 必ずしも成り立たちません。 (金属をイオンに酸化する能力がその溶媒になければ、「成り立たない」ことになります)
お礼
「緻密」という言葉は「(肌目が)細かい」という意味としか思っていなかったのですが「行き届いている」という意味もあるんですね。 他にもこういった例はあると思うのですが、どの本を見ても同じような表現をしていたような気がして、ちょっと憤りをおぼえました。 仕事で工業用クロムメッキの製品を扱っているのですが、めっきが冒される条件がよくわからなくて困っていたんです。 これで少しは何かわかるかも。ありがとうございました。
補足
「皮膜=孔の無いもの」と思っていたところが間違いだったんですね。よくわかりました。 私の質問した文の「さらに…」以降で言っている「金属」は、不動態を作る金属のことです。 これも的確に答えていただいて、ありがとうございました。 >一方、もし「金属酸化物を溶解可能な非プロトン性溶媒」というものが めっきの腐蝕の勉強をしているところなので、日常生活で起こりうる溶媒だけについて分かればいいので、 水の場合だけで十分ですし、それ以上は私には理解不能と思うので…