- ベストアンサー
姉歯建築士の設計したマンションが、今年の震度5強の地震に耐えられた理由
今年の夏、東京で最大震度5弱の地震があって、JRもメトロもみんな止まりましたよね。 首都圏一帯、ほぼ震度5弱だったようです。 http://www.shizushin.com/feature/jisin/jisin_kiji/20050724000000000008.htm 私は都心部にいましたが、とっさに爆弾が至近距離に落ちたのかと思ったほどです。 例の偽装マンションのうち、最も弱いものは、「震度5弱の地震でも倒壊する危険あり」と判定されたとのこと。 でも、今年の夏はもう建っていたか建築中だったはずなのに、一棟も倒壊したり壊れたりしていません。 どういう説明がなりたつのでしょうか? ちなみに、震度5程度の地震は日本全体だと年に100回ぐらいあるそうですが、同じ地域(例えば東京)に限ると、何年に一回ぐらいなのでしょうか? 彼も、地震がおきて自分の偽造がばれるという危険については、考えてみたはずだと思うのですが。。。
- みんなの回答 (3)
- 専門家の回答
質問者が選んだベストアンサー
まず、世間で言われている震度5弱という地震と現行の建築基準法との因果関係は一切ありません。 震度5弱で倒壊というのは素人目に見てわかりやすい表現なだけで、実際に5弱の地震で建物が倒壊するかどうかなんてことは、地震の種類(加速度の大きさ、速度の大きさ、変位の大きさなどは地震動に因って異なり、さながら、人間の指紋と同じように同一の条件は現実的にありえません。)によって異なります。 世の中の構造の専門家は今の世の中の報道が正確なものだと思っている人は一人もいないと思います。あくまで、素人にわかりやすい余裕を持った表現方法の一つに過ぎないと思われます。 で、現行の基準法は最下階の設計せん断力係数が0.2というのが一般とされ、これは、最下階の地震時の水平加速度が200gal(200cm/sec2)というレベルが標準となっています。 この水平加速度は、震度5弱では80gal~200gal程度とされており、先の地震も水平最大加速度がこの範囲に入っていたため震度5弱と公表されています。で、一般の建物の倒壊のレベルはおよそ1000gal以上(設計せん断力係数で1.0以上)ですので、世間の公表数値を見る限りでは相当耐力に乏しい建物ということは伺えますが、地震という来てみなければわからない自然現象に対してはどこまでが真実をあらわすものかはわかりません。 さらに付け加えると、局大地震の設計せん断力(1.0)に対して各部材は終局強度以内に収まるものとされており、終局強度目いっぱいということはありません。ある程度の余裕のばらつきは入ります。で、さらに云うと、材料強度のばらつきや施工精度、施工誤差などでそれらの余裕が変動し、それでも最低限度の耐震性能が確保されるように構造設計がなされるように規定されています。 つまり、現状建っている建物は、世間で言われる建築基準法の終局強度が最低限の値であってそれのさらに2割増3割増しで余裕があり、地震の性質によっても震度5弱を超える地震が来て初めて現行基準に設定されリレベルを超えることと成ります。 あまり過剰に余裕を持ちすぎると過剰設計といわれますが、生産性、経済性を考えると一番クリティカルに成る部材で最低限の耐震性能が担保されはするものの、他の部材は余裕を持たせ、部材の形状をそろえた合理的な形で建物は存在することになります。 いろいろ書きましたが、震度5弱の地震で倒壊する危険性はあるものの震度5弱の地震で倒れると断言はしていませんので、怪しい建物が倒れなかった現実と矛盾はしません。 ちなみに、震度5強程度の地震は100年に1回有るかないか程度の頻度となります。 同業者としては、正直なところ、ありえないことを彼はしたと思います。構造設計の道に踏み込んで今に至るまでに、良い上司、良い先輩にめぐり合えなかったのかと不憫でなりません。 (構造計算という技術を身に付ける以前に構造設計者のモラルや思想を身に染み込ませ、その精神にだけは忠実に生きるののが、構造設計者を生業とする者に他ならないはずだからです。その道を外れたらこの仕事は出来ない、そういう世界なはずなのに。。。)
その他の回答 (2)
- 10pph
- ベストアンサー率19% (50/252)
震度というのは、揺れかたを判りやすく説明するために表現する方法です。震度5強とか震度5弱とか言うのは正確には「震度階級」といいます。 また、地震計で得られた水平加速度と垂直加速度をもとに複雑な計算式に基づいて「計測震度」を算出し、計測震度をもとに「震度階級」が決められます。一概に「震度5弱」といっても地震の大きさには幅があります。 また地域の震度は地震計の値から計測されますが、1カ所の地震計の加速度がその地域の全てに当てはまるわけではありません。 また、耐震設計で地震力として入力する値も以前は建物の重量の2割とか単純な数値でしたが、現在では動的設計法が用いられており、言葉で説明するのが困難です。 おそらく、「震度5弱」と言っているのは、壊れるであろう地盤加速度から当てはめて導き出したものと思われます。 同じ地域でも場所により加速度には違いが出ますから、「震度5強」だから必ず壊れるものでもありません。 また、計算には表れない余力もありますから、必ず壊れるものでもありません。 危険である事には変わりませんけど。
お礼
>同じ地域でも場所により加速度には違いが出ますから、 そうでしょうね。昔の池のあとだったり、いろいろですよね。 姉歯ビルは、夏の地震でいちばん揺れた足立区にもあるそうですが、運良くそこは地盤がよかったのでしょうか。 でも、それで大きなクラックも入らなかったのだとしたら、「震度●まで耐える」という計算のしかたは、相当悲観的にというか、厳しく見積もったものなのでしょうか? ご回答ありがとうございました。
- MandF
- ベストアンサー率32% (21/65)
千歳あめを折るとポキンと二つに折れてしまいますよね。 同じ太さの竹を折ると真二つには折れず、筋が残ると思います。 さらに同じ太さの金属棒を折ると曲がりはしますが折れません。しかし何度も曲げていると金属疲労を起こしいつかはポキッと折れてしまいます。 民家と違い、ビルの場合地震が起きるとゆらゆらと揺れます。1階2階部分の鉄筋は何度も曲げられもしかしたらすでに折れているかもしれません。今はコンクリートだけで支えられているのかもしれません。つまり首の皮一枚でつながっている状態です。次の地震でも持ちこたえるという保障はありません。今まで震度5の地震に耐えられたからといって、今後も問題がないとは限らないのです。 ただこれは全ての建物に同じ条件で適応されるので、正式に基準値をクリアーした建物であっても保証はないのではないかと思います。 阪神大震災のときの映像を見ても、1階2階で倒壊しているビルがほとんどでしたし、実はそのころからビル建設で偽造がなされていたとは思いたくありませんから。
お礼
とてもわかりやすい喩えで理解できました。 ただ、内部の鉄筋が破断したり損傷を受けたりするほどの力が加わったら、外側のコンクリ部分にも、大きなクラックが入りそうな気がします。 それもなく、外見はまったく無事なのに、中の鉄筋だけダメージを受けることもあるのでしょうか? だとしたら、築後何年か経ったビルを、建築士さんに見てもらったとしても、(コンクリを壊して中を見るわけにはいかないから)ほとんど何もわからないことになるのでしょうか? だとしたら、何を信じてマンションを買えばいいのか、わかりませんね。~_~; 結婚したらマンションに住むと思うので、ちょっと心配です。 ご回答ありがとうございました。
お礼
大変詳しくわかりやすいご回答、ありがとうございます。 ちゃんと作られた建物は、かなりの余裕をもっていることが多いわけですね。 >業者としては、正直なところ、ありえないことを彼はしたと思います。 >その道を外れたらこの仕事は出来ない、そういう世界なはずなのに。。。 こういう良心的な建築士さんがほとんどで、彼が例外中の例外ならばいいのですが。。。 素人はどうしても、「氷山の一角とまではいかないまでも、まだぼろぼろ出てくるのでは?」と思ってしまいます。^^: >震度5強程度の地震は100年に1回有るかないか ちょっと安心しました。彼もそれで「ばれない」と思ったのでしょうか。 ご回答ありがとうございました。とても参考になりました。