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繰延税金資産の回収可能性
素人質問ですが、繰延税金資産を回収するとは具体的にどういうような動きをいうのでしょうか?また回収できなければどういった問題が生じるのでしょうか?
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長くなりますが、根気良く読んでください。 本来的にこの話を完全にわかるためには、税金計算の減算加算、繰越欠損金、一時差異の意味、実効税率、住民税、事業税、意思決定のキャッシュフローの考え方、回収の概念などを理解していることが必要です。 No1の方のリンク先は、理解している方にはいいかもしれませんが、素人にはちっとも理解できないと思います。学習上は会計士になって、やっと読むような高度な内容だからです。 したがって、イメージでなるべくわかるようにお話します。 繰延税金資産は「将来の法人税等の節約額」と考えます。 会計と税務の目的の違いによって、会計上の費用と税務上の費用(損金)と内容が異なっており、会計で費用計上したものが税務上では認められないものがあります。 税務上で費用として認められるタイミングが会計上の費用よりも遅くなるものがほとんどです(将来減算一時差異)。 税務上で一度費用として認められなかったものは、一部を除いて将来一定の条件を満たすと費用(損金)として認められます。 このときに税務上の利益(課税所得)がその費用分だけ少なくなります。 法人税は、税務上の利益(課税所得)に30%をかけることによって計算されるので、税務上で費用に入れることが認められると、費用に入れられなかった場合に比べて、税務上の利益が少なくなり、それにつられて法人税の支払額が少なくなりますよね? これが、法人税等の節約効果です。 そこでこのような「将来の法人税等の節約効果」を会計上表現するのが、繰延税金資産です。 繰延税金資産を回収するとは、「法人税等の節約効果で法人税等の支払額が少なくなった」ことを意味します。 繰延税金資産の本質は、法人税等の支払いが少なくなることにより回収されるとみなされるキャッシュ(現金同等物)です。 それでは繰延税金資産が回収できなくなるとはどのようなことでしょう。今までの話で、回収できないとは「法人税等の節約効果がなくキャッシュ回収が出来ない」ことを意味することはよろしいでしょうか? 繰延税金資産は、税法上の独特の決まりごとによって回収が出来なくなります。 それは、「法人税はゼロ以下にはならない」ことと「繰越欠損金の使用期間が限られている」ことです。 簡単な例題を出しましょう。 毎年税務上の利益が10億円稼げる企業で、ある年に税務上の利益が-100億円出た(欠損金)とします。 特に制約がなければ、税務上の利益がマイナスの場合、全額還付されるとしたら、30億円が会社に戻ってくるはずです。ところが、国は赤字になったら法人税を還付してばかりいては大変です。そこで、税務上の利益がマイナスになったら、そのマイナスは次期以降の課税所得と相殺できますよ、として還付はしないのです。このマイナスが「繰越欠損金」です。 これが「法人税はゼロ以下にはならない」ということです。 次にこの繰越欠損金の使用期限は法人税法上7年と決まっています。毎年税務上の利益が10億円なので、7年間で70億円しか税務上の利益が出ません。したがって、-100億円の繰越欠損金のうち70億円しか税務上の利益と相殺できません。したがって、税務上の費用(ここでは繰越欠損金)のうち30億円分には、「法人税等の節約効果」がないことになります。 繰延税金資産でいうと、実効税率(法人税の他に住民税と事業税を考慮した税率のこと)が40%として、繰越欠損金100億円全額相殺可能な場合は繰延税金資産として40億円計上できますが、例題では相殺可能なのは繰越欠損金70億円だけなので、回収可能な繰延税金資産は28億円(70億×40%)となります。 すなわち12億円が回収不能ということです。 回収できないものを資産に載せているとどうなるかというと、利益がかさ上げされ、自己資本が見かけ上大きく表示されるということになります。回収できないのに載せているということは、回収できない売掛金を載せているのと同じことです。 つまり、回収できないことを正しく表現しないと、企業の財政状態が正しく表示されないという結果になります。 以上長々と書きましたが、素人だとこれでも難しすぎるかもしれません。完全に理解するには、長い長い道のりがあります(実際、会計士補でも知識不足でこの話を理解できない人がたくさんいると思われます)。
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- newcinema
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今まで触れていなかったので、念のため補足しますが、税務上の「(繰越)欠損金」は会計上の「欠損金」とは異なります。 青色欠損金ともいい、単年度の当期純損失(税無常では課税所得がマイナスの状態のこと)に該当するものですので概念の混同をなさらないように。 期限切れになっていない未使用の欠損金を「繰越欠損金」といいます。
- newcinema
- ベストアンサー率62% (50/80)
税理士試験受験生でしたか。それでは、簡単に書きすぎましたね。 ・欠損金には法人税相当額と地方税相当額とがあるのでしょうか?それぞれ詳しく教えてください。 欠損金は、会計上の利益から加算減算して計算するものなので、それ自体に地方税という概念も法人税という概念もありません。税金を計算するための基礎金額だからです。 ・欠損金にも繰延税金資産があるのでしょうか? 法人税は勉強なさってないようですね? 欠損金は損金算入というか、減算できるので、将来減算一時差異として税効果があります。したがって、繰延税金資産は計上できます。 ・そもそも損金や益金に算入限度額を設けている理由は? 限度が設けられているのは大体損金側ですが、要するに税金を取るためです。それぞれのもっともらしい理由は、法人税法を勉強してください。 ・貸倒償却で税法上損金と認められなかった場合は、有税の貸倒償却となりますが、ここでいう償却とはどういう仕訳ですか?また有税とはどういうことでしょうか? 償却は減価償却と同じ意味です。簿価を減少させ費用化するということです。通常の貸倒引当金の仕訳のことです。 有税、無税というのは誤解を与えるあまりよろしくない言葉と言われていますが、貸倒引当金として繰り入れたうち損金算入できるもの=無税償却、損金として認められないもの=有税償却です。 税法は外形的に画一的基準で不確実な費用は排除するため、会計上は実質回収不可能な債権と認められるものでも損金算入が認められなかったりします。 会計上で費用に計上した貸倒引当金繰入額で、損金算入が認められないと、費用計上しなかったのと同じ税金が課されます。だから、「有税」という言い方をしているのです。 ・一時差異が解消できる時期の基準ってあるのでしょうか? 基準は、法人税法そのものです。法人税を勉強してください。 以上、簡潔にお答えしましたが、これらを詳しくすると法人税法の講義になってしまうため、出来れば学習なさったほうがよろしいです。
お礼
ありがとうございました。 税理士の財表は結果待ちで、合格していれば簿記論に進む予定です。法人税法も早く勉強したいのですが、必須の2科目を先に取った方が良いと思いまして。 しかし勉強してても実務はなかなか難しいですね。
- zorro
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参考にしてください。
お礼
非常にわかりやすい回答ありがとうございました。私は税理士試験の財務諸表論を勉強していたので(今年8月受験)ある程度はわかりました。今年から実務でも財務に関わるようになったのですが、実務レベルではわからないことだらけです。さらに質問して良いでしょうか? ・欠損金には法人税相当額と地方税相当額とがあるのでしょうか?それぞれ詳しく教えてください。 ・欠損金にも繰延税金資産があるのでしょうか? ・そもそも損金や益金に算入限度額を設けている理由は? ・貸倒償却で税法上損金と認められなかった場合は、有税の貸倒償却となりますが、ここでいう償却とはどういう仕訳ですか?また有税とはどういうことでしょうか? ・一時差異が解消できる時期の基準ってあるのでしょうか? 長ったらしい質問ですみません。宜しくお願いします。