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イオンエンジンってロケットだけですか。
先日はやぶさのエンジンが、イオンエンジンという新型の物だと始めて知りました。色々なサイトを見ても良く理解できません。燃費がいいのは分かりますが。なぜこれで飛ぶんでしょう。これはやはり画期的なんでしょうか。飛行機や車にも応用できるのでしょうか。簡単なご説明お願いいたします。
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No4のお気遣いありがとうございます。 1. >> 排気ガスなんかは出ないんでしょうか。 << 仮に空気中で動かせば キセノンガスを出しますが キセノンはもともと地球大気の成分です。 不活性さを利用して医学検査にも使われてるようで、下記に「高濃度における麻酔作用を除き生理作用はほとんどない。水溶解性が低く、吸入させた場合最初の体循環で95%以上が肺から換気されるため再循環の可能性はないといわれている」とありました。 http://mid.cc.kumamoto-u.ac.jp/data.php?record=1492500 で、イオンロケットでは、キセノンはエネルギ源ではありません、いわゆる「燃料」ではないんです。蒸気機関車の「ボイラー水」に相当します。 蒸気機関車のエネルギ源は石炭と空気中の酸素ですよね、はやぶさのエネルギ源は「太陽光」です。クルマで言えばソーラーカー、純正ソーラーカーなのです。 太陽電池のエネルギの一部でキセノンガスを強引に電離させ、残りのエネルギで静電加速(下敷きとゴミの力)してます。 それが化学的燃焼ロケットより高性能になるわけは、噴射ガスにエネルギを外から注入してるからです。静電気でゴミを加速するのは、もしエネルギ使い放題なら光の速さ近くまでも可能‥。 いっぽう化学的燃焼で高温を得る方式ではそれが絶対0度に冷えるまでのエネルギ放出が限界ですから、静電気式と同等の性能を出すためには超高温(=超高圧)が必要で、化学的燃焼ではそれに達し得ないのです。 2. イオンエンジンは気体的な圧力の代わりに電気の圧力を使ってると考えてもよく、はやぶさの例では加速電圧は 1500ボルトです。 ( 意外かも知れませんが 下敷きや冬のセーターの静電気の方がずっと高電圧です。) もう少し詳しく言うと、 キセノンを、電子と陽イオンに強引に分離させて 両方とも静電加速して噴射してます。 http://www.isas.ac.jp/j/enterp/tech/image/6-13-1.jpg 写真で派手に輝いてるのは陽イオン噴射の方です。 もし陽イオンだけを噴射し続けると、ロケット本体の方にマイナス電気が溜まってしまい、噴射した陽イオンを引き寄せて 「校門の出口に過去の卒業生がたむろしてその威圧感で新卒者が出ていけない状態」 になるので、溜まった電子をビーム砲で撃ち出して 陽イオンと合体させてもとの原子に戻してます。写真の実験装置では左にある控え目な光が電子ビームでしょう。 合体して戻るとき、強引に電離させたときに使ったエネルギが解放されて 中性ガスがそのぶん熱くなりますが、エンジンの外の自由空間でのことなので推力には寄与しません、このように電離に使うエネルギは無駄に捨てられるので、キセノンは電離エネルギが小さいゆえ好ましいのでしょう。 導電性のあるイオンが長く尾を曳いて残ると、地球との電波通信の面からも邪魔でしょう。 長話になりましたが、クルマで言えばソーラーカーである、排気ガスは蒸気機関車の白い湯気のようなものである、ということです。ソーラーカーということから「それほど力強いエンジンではない」ということをご想像下さい。 3. これは、はやぶさの静電気方式(下敷きとゴミの反発力)に対して、動電気(掃除機や冷蔵庫のモーターと同じ電磁力)方式です。 http://www.ep.isas.ac.jp/mpdarc/ 光の色はネオン看板と同じ原理でして、使うガスによって色々です。 燃費性能は静電気式よりいくぶん低いのですが、長所は 推力が静電気式より大きくしやすい(燃費は劣るけど馬力が出るタイプ)、静電気式ほどの高い電圧を使わない点です。電圧が低いぶん故障の恐れが少なく長期旅行での安全度が上がるかも、ということです。 宇宙空間で高い電圧をオンオフするのは、パソコンのモデム通信回線に雷が落ちたようなギャンブル性があります。 普通の衛星で、打ち上げ成功で一同喜んだあと、観測機器や送信回路の高圧電源をオンする司令を送った瞬間、どこかが死んで使用不能や半身不随になった衛星の話は少なくないです。 4. 小史; 電気推進の発案は「ロケット理論の創始者ツィオルコフスキー」自身です。氏は1800年代に 人類が宇宙に行く手段の数々を 空想ではなく理論で書きあらわした先駆者であったと賞されてます。 1900年代後半、米ソの競走時代に基礎研究が続けられました。日本の宇宙開発でも、カリスマ糸川英夫が率いた時代にすでに研究に着手されてました。こんなサイトがありました(1977年)。Kはカッパロケットですね。 http://www.ep.isas.ac.jp/missions/K-9M-58/index-j.htm MPDとは電磁・推進・力学の頭文字です。 ↓その3年後(今から25年前)に自前の衛星で搭載実験が。 http://www.ep.isas.ac.jp/missions/tansei4/index-j.htm しかし、 実用化されたのは10年ほど前(1990年代)からです。最大の原因はエネルギ事情=太陽電池がキロワット級に進歩したおかげです。 その頃のアメリカの方式は アーク放電で気体を加熱。電気溶接と同じです、電気溶接をしてる方は御存知のように高電圧が不要です。ひどく乱暴に言うと 日光が当たってる太陽電池をバチバチッとショートさせてアーク放電を発生させる。太陽電池は当たった光の分しか電流が発生しません(定電流源)のでアーク放電(負抵抗)の維持に好都合な電源なのです。この方式では電極が溶接棒に相当し、その減りが寿命を支配します。 5. 専門的すぎるので興味がなかったら読み飛ばしてください。 イオンロケットと従来の化学反応式ロケットとの性能比較が具体的に示されためずらしい図です。 http://www.isas.ac.jp/ISASnews/No.276/GIF276/front_line-z2.jpg 棒グラフが2種類混ざってるので判りづらいですが、 (1)右の4本は、 灰色の棒; はやぶさを打ち上げた固体ロケットの加速性能です。発射後第1段で秒速2kmに加速され、2段目の秒速3kmが加わって合計秒速5kmに。3段目で合計秒速9km弱で衛星軌道速度(8km/s)を越え、最後4段目で合計秒速約13kmになっており、地球の脱出速度(11km/s)を越えてます。 黒い棒; よく「ロケットは大部分が燃料である」と言われますが、点火前の全備重量を1とした燃料の割合です。下段は上段の重量が含まれてるので下段ほど率は低いです。最上段は金と技術の粋を集めて 率が高くなるように作ります。いちばん身軽ゆえもっとも加速が大きいからです。 (2)はやぶさの棒グラフ; 黒い棒(燃料の率)が 右端の4段目より遙かに少ないのに、灰色の加速性能は4段目に肩を並べてる、と読みます。 競技会で新人がいきなり大会記録と同タイムを出したようなものです。 燃料を脂肪と見なすと体脂肪率の差が歴然。将来性ゆんゆんですね。 6. >> 飛行機や車にも応用できるのでしょうか。 << (本題はこれでしたね、途中ですが一旦投稿します、ごめんなさい。)
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- Teleskope
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>> 解説がうまく理解できない << どうもです、昨夜帰って拝見してこれを書いたのですが、送っ たつもりで寝てしまいました。 1. ロケットの推進力は 力=排気ガスの速度×排気ガスの流量 です。ガスの速度が速ければガス流量が少なくて済む、 つまり高燃費だ。 たったこれだけの話です。 酸素と水素のロケットの排気速度は理論的に秒速約 5kmです。 ものを燃やす方法ではこのへんが限界です。 で、 静電気でものを引っ張る方法は、単純明快に光の速さまでも 近づけるのです。(と言っても実際に光速をねらうわけでは ないですが、はやぶさの排気速度は実績で 秒速30kmを越し てます。光速は秒速30万kmなのでたった1万分の1ですがw 次は加速電圧を10倍にして速度を√10倍、秒速100kmなど を計画してるようです。光速の 1/3000 。) 2. 物質の原子は核と電子でできてることは御存知ですよね。 キセノンは電子が54個です。イオンロケットは、最初まずこ の電子を(たった1個ですが)奪い取って、プラス電気を帯 びさせます。これが「下敷きとゴミ」のゴミに相当します。 はやぶさ では「電子レンジ」を使って 強い電波で原子を強 引にゆさぶって電子をもぎ取ってます。電子をとられた原子は プラスに帯電し、イオンと呼ばれます。 イオンと電子が混じっ たガスをプラズマと呼びます。それが冷えて元に戻らないう ちにすぐ使ってしまいます。 キセノン 1時間に約3グラム消費 ガス容器────┐ ↓ 電子レンジ─→プラズマ化──→金属の網───→噴出 (マイナス電極) 1500ボルトの高圧直流電源があって、プラス側の配線がプラズ マ容器に、マイナス側が出口の金属網につながってます。 プラスイオンは プラスの容器と反発し、マイナスの金網に引か れて「急激に加速」されます。ほんの数センチのあいだに 時速1万km(秒速30km)に。 そんなすごいスピードで網に衝突されたら持ちませんので仕 掛けがあって、それが網の防御=エンジンの長寿の要因になって ます。 仕掛けはプラスの電気同志が反発する性質を利用してま す。網を通過したあと引き返して来ないようにも工夫されてます。 ↓全体構成 http://www.muses-c.isas.ac.jp/pictures/ion-diag.gif ↓3枚構成の網。中央の本体(マイナス電極)を護ってます。 http://aero.kouku-k.ac.jp/nakano/optics_demo.jpg ↓耐久性シミュレーションですね。 http://aero.kouku-k.ac.jp/nakano/ISAS20.gif 3. >> 飛行機や車にも応用できるのでしょうか。 << 本題はこれでしたね、急用で遅れてしまいました。 宇宙が高 真空で邪魔な原子が居ないゆえに超高速の加速ができて高性能な わけです。地上では濃厚な空気分子が邪魔で全く駄目です。よく 健康グッズで「陰イオン空気清浄機」とか売ってますが、あんな 程度です。 地上で使えるのはイオン式でない電気推進、「気体 がいっぱいあっても対応できる方式」です。電気溶接式とかはイ メージしやすいですね、海水の導電性を使った電気推進の船もあ りました。燃費性能を度外視すれば推力は強力にできてます。 イオン式を地上で使いたいなら、真空の箱の中で動かして排気 で高速タービンを回し、減速して取り出す‥‥という構成も考え られます、しかし「電気を与えると軸が回る箱、しかもかなり高 い効率」はすでにありますよね、モーターです。 こんな所で。要は、静電式は原理的には光速近くまで行ける、 (実現化に際して決定的に阻害するような要因がない、)これが 高性能を得やすいことにつながってると思います。
お礼
私の疑問に何度もていねいに答えてくださり、ありがとうございました。さっさと締め切ってしまったため、わざわざgoo に頼んでくださったんですよね。こんなに親切にお答えいただいたのも始めてで感激です。失礼とは思いましたが、Teleskopeさんのポイント拝見しました。さすがにすごいポイントをお持ちですね。わたしも100回ほど回答していますが、Teleskopeさんを見習っていきたいと思います。今回は本当にお世話になりました。ありがとうございました。
- apple-man
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>真空でないと使えないんですか。 イオン噴射も方式によっては 空気中でも噴射できますが、 もの凄く弱いです。 うまくいっても家庭用扇風機 くらいです。 >イオンエンジンという新型の物だと始めて知りました。 イオンエンジンっていう発想は 1950年代くらいあるんです。 1960年代には実験が行われて いたようで、1968年のSF映画 「2001年宇宙の旅」では、 木星に向かう有人探査線、ディスカバリー号 がイオン噴射エンジンで飛んでいるという設定に なっていました。 噴射の力が弱いんで、気象観測用の人口衛星の 軌道修正用の補助ロケットとして長い間 使われていたんです。 1998年にアメリカが無人探査機の メインエンジンとしてこのイオン噴射を 使い話題になりました。 今回、日本はアメリカと違う方式で、 はやぶさのメインエンジンに使ったようです。 >飛行機や車にも応用できるのでしょうか。 ファンが付いていない扇風機には 応用できると思います。(笑)
お礼
2001年宇宙の旅は見ました。あまり理解できませんでしたが。それにしてもそんな昔から発想があったとは、知りませんでした。どうしてもイオンを噴射するというのが、理解できないんですよね。最近やっとリニアモーターが分かってきたくらいですから、イオンエンジンを理解するにはあと10年かかりますね。きっと。
- Teleskope
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反省します。 × 高燃費 → ○ 低燃費
お礼
いえ、いえ意味は十分伝わっています。ありがとうございました。
- Teleskope
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小学校などでノートの下敷きをこすって静電気を起こして遊んだことはありませんか? 小さなゴミが下敷きに触れると 反発して飛び去ったはずです。その反発力は同じ電気(プラスとプラス、マイナスとマイナス)の反発力です。 電気推進ロケットも同じ原理でして、ゴミの代わりにキセノンというガスを使ってます。 これでクルマが走れれば高燃費の電気自動車と呼べますが、残念ながら真空中でないと作動しません。それに推力は微弱なんです、なんせ下敷きがゴミをはじく程度の力ですからw
お礼
真空でないと使えないんですか。ということは地上では無理なんですね。排気ガスなんかは出ないんでしょうか。
- sqwe-ir
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燃料はキセノンです。 これをプラズマ化して超高速で噴出させる訳です。 出来れば、 近所じゃ使ってほしくないな。 あぶねーみたいし。^^;
お礼
キセノンですか、燃料は。キセノンのランプは持っていますが、これをプラズマにするということは燃やすということとは違うのですか。燃やさないのであれば熱も排気ガスも出ないクリーンエンジンということでしょうか。???だらけです。
- kikiki99jp
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イオンを噴射させとびます。 ふくらました風船が飛ぶのと同じです。 飛行機や車への転用はできないでしょう。 噴射するエネルギーが大きすぎます。
お礼
イオンといえばマイナスイオンぐらいしかうかばないので、まったく原理が理解できないんです。イオンにそんな力があったんですね。ビックリです。
お礼
とても詳しく回答いただきまして、ありがとうございます。この詳しい解説がうまく理解できないので、永久に分からないかも知れないですね。でもこういった新型エンジンが出来てくれば、未来の宇宙旅行も夢ではなくなりますね。スタートレックのような時代が来るんでしょうか。