これは、いわゆる「JISコード」と呼ばれる字体の問題だと思います。
1980年代の初めごろにワープロが普及するまで、一般の人は手書きで文書を作ることが多かったので、知らない漢字を使うという機会があまりありませんでした。しかし、ワープロ使用が一般に広まり、変換すれば難しい漢字がいくらでも出てくるので、今まで使うことが少なかった漢字を目にする機会が爆発的に増えました。
このため、常用漢字表外の漢字の字体がワープロ機種によってばらばらにならないよう、規格が決められたのですが(日本工業規格<JIS>コードといいます)、このとき、一部の字で略字体が規格になるということが起こりました。
たとえば森鴎外の「鴎」は、区のメの部分を品と書くのが正しいのですが、手書きの際省略して書く形である「鴎」が、規格として採用されているのです。
これに関しては、異議を唱える声が多くあり、現在も審議されている問題です。
「区」という字は、もともとは中を「品」と書く字でしたが、戦後、「区」という略字体が常用漢字として採用されました。常用漢字外のものについては、字の中に「区」が含まれていても新字に直す必要はなかったのですが、JISコードでは新字体にしたもの(一般には略字と思われているもの)を規格にしてしまったのです。
草かんむりも、戦前は十十と書いていましたが、花、草など常用漢字表にあるものは3画で書くことになっています。蠣は、常用漢字外なので草かんむりを4画で書く(総画が20画)ほうがよいと思いますが、ワープロの字体はJISコードに基づいているので草かんむりは3画、総画が19画になります。
正しい漢字は一つ、と考えがちですが、昔からある活字も、種類によって字の書き方、形が違います。その中のどれを正しいとするのかは、なかなか決められないことのようです。
「蠣」に関しては、草かんむりを3画で書くのは一種の省略形ですから、漢字検定という性格上、4画で書いておくほうがよいと思います。
詳しいことは参考URLに出ています。
草かんむりについては、その中の「字体表の見方6」に出てきます。