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アルツハイマー病の配偶者との離婚
ニコラス・スパークス原作『きみに読む物語』(原題:The Notebook)の小説(雨沢泰訳 アーティストハウス)では、アルツハイマー病に冒された妻アリーが夫ノアの愛の力で夫のことが分かるようになるという奇跡的なラストに感動しました。 一方、日本映画『半落ち』では、やはり同じくアルツハイマー病に冒された、原田美枝子扮する妻を寺尾聡扮する元刑事が嘱託殺人を犯してしまうという、悲しい結末を迎えます。 この2つの作品を読み、または観て思ったのですが、これは現実に起こり得ることだと思いました。 民法770条1項4号では、「配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき」は離婚の訴えを起こすことができる、としています。この「強度の精神病」の要件にアルツハイマー病は該当するのでしょうか?換言すれば、配偶者がアルツハイマー病に罹患し回復の見込みがないとき、離婚訴訟を提起すると裁判所は離婚を認めるのでしょうか?
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配偶者が強度の精神病に掛かり、なおかつ回復の見込みがない場合、民法では裁判離婚の原因としてこれを認めています。 強度の精神病とは夫婦生活の本質的な義務が果たせない状態にあることで、精神障害者保健福祉手帳障害等級判定基準の1級程度の判定が必要かと思われます。 1級の精神障害者ですと、精神疾患の症状として、人格変化、思考障害、妄想、幻覚等の以上体験があり、能力障害の状態では洗面、入浴、更衣、清掃等の身辺の清潔保持が困難な他、金銭管理能力がなくなったり、家族や他者へ適切な意思の伝達ができない、などがあります。病名では、 ・早発性痴呆・麻痺性痴呆・初老期精神病・躁鬱病・偏執病 などです。 配偶者がこのような精神病になってしまった場合、精神病の程度と回復の見込みに関して専門医師の鑑定が必要になります。 また、程度の問題は直ぐにでも判断が可能な要素ですが、回復の見込みに関してはその病状の経過をみて判断する必要がありますので、ある程度の期間が必要です。 それと、精神病になった配偶者の離婚後の生活に関しての見込みや予定が必要になります。 そもそも結婚生活には、お互いの扶助義務が発生しますので、「配偶者が精神病になったからといって扶助義務を放棄していいという事はありません」というのが、判例から見て取れる見解です。ですので、裁判所では精神病を理由に離婚を認める事に前向きな判例は残念ながらありません。
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- thor
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#1さん、精神病と精神障害は違う概念です。 精神障害は精神病よりも広い範囲を対象としているし、精神病でも精神障害ではないことがあります(第一、アルツハイマーは精神病ではない)。 誤解のないよう念のため。
お礼
回答を寄せて頂いた3名の皆様!どうもありがとうございました!とても参考になりました。どのご回答もそれぞれ納得のいくものばかりで、ホントは皆さんに20ポイントずつ差し上げたいところなんです。あるいはマスター20ポイントと準マス10ポイントを山分け(?)してもいいんです。それともいっそ公平を期すためにポイントを付けないというのもありかな、とも思ったのですが、「お礼の意味を込めてポイント付けるように」とのこと。そうもいきませんね。そこでここは私の独断と偏見(?)でポイントを付けさせて頂きました。でも回答に優劣があるとは思ってません。ですので、今回ポイントが付かなかった方も、また機会がありましたらぜひご回答よろしくお願いします!
補足
ご回答ありがとうございます。大変勉強になりました。アルツハイマーが精神病でないとすると、そもそも4号が適用 されないということになるのでしょうか?
これには判例があり、平成2年9月17日の長野地方裁判所の判決で離婚が認められました。 ただ判決をよく読むと、 妻は精神分裂病であるが、それが強度であり、かつ、回復の見込みがないとは認められないから、民法770条1項4号に該当することを理由とする夫の離婚請求は理由がない。 しかしながら、婚姻は遅くとも昭和44年10月頃には破綻するに至ったものというべく、その主たる原因は以上認定したような妻の粗暴で家庭的でない言動にあるものと認められ、また、妻の発病した主たる原因は、妻のお姫様のような未熟な性格及び炊事、掃除、洗濯等をすることなく、何かにつけてよしよしとして甘やかされ気儘に育てられてきた享楽的な家庭環境から一転して我儘のきかない通常の結婚生活にはいったことにあるものと認めるのが相当である。(中略) そうすると、民法770条1項5号所定の婚姻を継続し難い重大な事由があることを理由とする夫の離婚請求は、正当として認容すべきである。 とし、妻が老人ホームに入り、今後の生活も心配ないことなどを考慮し、離婚が認められたと記憶してます。
補足
詳細な判例をご紹介頂き、誠にありがとうございます。このケースでは4号でなく5号で認められた、というのが回答のご趣旨だと受け取りました。そうすると、こういったケースでは4号では認められないかもしれないが5号で認められることがある、ということでしょうか?
補足
とても丁寧で詳細なご回答、ありがとうございます。初めてこの民法の条文に接した時は冷たいものだと思いましたが、講師の説明で、心情的には悲しいものだが残された配偶者も辛いから法律では認めらてれるという趣旨の説明を受けました。しかし、法律で認めらてれいるとしても、実務上は異なる、というのが回答のご趣旨だと思いましたが、そう受け取ってよいのでしょうか?