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逮捕・勾留の目的(刑事訴訟法)
刑事訴訟法上、逮捕勾留の目的は罪証隠滅と逃亡を防ぐことと理解されていると思います。そうすると、出頭滞留義務としての取調受忍義務を肯定した198条との整合性が問題になります。 取調受忍義務を肯定して、取調の法的性質を強制処分と考えた場合には、逮捕勾留の要件と逮捕勾留の目的がずれてくるような気がするのですが、その場合の逮捕勾留の目的はどのようになるのでしょうか? 教えてください。
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>>というのは取調べを目的とする逮捕を否定してしまうと、余罪取調の限界の話がでてきません。 取調受忍義務はありませんから、取調は本来は任意処分で、余罪取調の限界もありません。しかし実際には、捜査官が被疑者に、取調を拒否する自由を与えずに無理やり取調に付き合せているので、現状では違法な強制処分なのです。だから事件単位の原則を(類推)適用することになります。 >>別件逮捕を否定するための説明が困難になるのではないでしょうか? 別件逮捕は本来は別件基準説(別件逮捕を事実上否定)でよいのです。問題は、こないだ無罪判決が出た自衛官官舎へのビラ巻き事件でもそうですが、裁判官による令状審査が実に杜撰で、ほとんど捜査機関の言うなりに令状の発布を認めているということです。 しかし、あくまでも被疑者に取調拒絶権が保障されていない現状では、取調は逮捕・勾留を悪用した違法な強制処分なので、実質的に考えて、取調を逮捕・勾留の効果と擬制して本件を基準に、別件の逮捕・勾留を違法とするということです。 >>取調官が留置所にやってきて、任意で事情を訊くことも許されないのかどうか 純粋に任意で行う分には構わないと考えます。ただし、あくまでも純粋な任意ですから、参考人の家を訪問して話を聞くのと同様、いや、逮捕・勾留されている被疑者には拘置所外に移動して取調を免れることができないわけですからより厳格に、被疑者が拒絶の意思を明示した場合には直ちに立ち去らなければならないと考えます。 >>判例および39条3項との関連をどう解決するのか 判例は取調受忍義務を肯定する前提に立っていますから、そもそも取調受忍義務を否定した時点で、判例とは矛盾するわけで、今さら判例を気にするのは無意味です。 39条3項との関係ですが、例えば捜査機関と被疑者の間に、いうからいつまで取調を行う旨の合意が取り交わされた場合などに、それと衝突するような接見は、時間をずらすことができますよといった感じで解釈すればよい話です。
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質問者さんは既に問題点がお分かりのようですね。 逮捕・勾留の目的とズレが生じるから、通説は取調受忍義務を否定するのですよ。ま、受忍義務を肯定する見解からは、「被疑者を取り調べること」なども逮捕・勾留の目的とすることがあるようですが、屁理屈の域を出ませんね。 弾劾的捜査観、現行法の採用する当事者主義などからしても取調受忍義務は否定されるべきでなんです。あとは198条の文言を、きちんと読めばよいだけの話です。198条は、「逮捕・勾留されていない」→「退去」つまり家に帰れるということを書いてあるだけです。逮捕・勾留されていれば、拘置場所に帰せと求めることができるだけで家には帰れないので、退去できるとは書かれないのは当たり前です。私に言わせれば、198条の文言を、取調受忍義務を認めたものと読むのは馬鹿げていると思います。本当に受忍義務を認めるなら、逮捕・勾留の効果を定めた重要な条文であり、もっと正面から定めるはずです。
お礼
ご回答ありがとうございます。 被疑者を取り調べることも目的とする見解があるんですね。参考になりました。 ここからは余談ですが、私はむしろ取調受忍義務を否定する見解に疑問を感じています。というのは取調べを目的とする逮捕を否定してしまうと、余罪取調の限界の話がでてきません。特に逮捕時に本件が明かになっていない場合の別件逮捕を否定するための説明が困難になるのではないでしょうか? 黙秘権の限界の話として、黙秘権を行使する相手に対して取調べをすることが可能かどうかという意味で、198条と黙秘権の関係をどのように理解するかという問題だと思いますが、198条の出頭滞留義務を監獄への滞留と理解して、取調室に滞留する義務がないとすれば、たとえば取調官が留置所にやってきて、任意で事情を訊くことも許されないのかどうかという問題に直面することになります(実務上は問題が大きいのでやられていませんが…)。 さらには接見交通権との関係でも、取調を理由とした接見指定は許されないことになるんと思いますが、判例および39条3項との関連をどう解決するのかという問題に直面してしまって、その部分をどうやって解決していくのか悩ましいのです。 ここはとても難しいですね。
お礼
ご回答ありがとうございます。 派生的な疑問にまで付き合って頂いて感無量です。 本来は取調受忍義務のところではこれを否定して、他の場面では現実的に取調受忍義務が肯定されてしまっている事情を考慮するということでしょうか。 なるほど明確な考え方だと思いました。 一点だけ、どこかで取調受忍義務を正面から肯定した判例はなかったような気がしますが、手元に資料がないので断言はできません。 いろいろ参考になりました。