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権限外の表見代理の成立について
- 海外に住んでいるAが日本国内に住んでいる息子Bに不動産の賃貸借契約の代理権を与えた場合、Bが勝手に越権契約を結んだ際に、民法110条は成立するかどうかを検討します。
- 民法110条の成立要件には基本的代理権の存在、越権代理行為、相手方の正当な理由による代理権の信頼が含まれます。1と2の要件は満たしているが、問題は3です。
- 要件3の正当な理由には、相手方Cの善意無過失だけでなく、本人Aが外観作出に関与したことも必要です。相手方Cが外観を善意無過失で信頼している場合、Aの事情は関係ありません。}
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> 問題は3で、委任状があったとはいえ・・・(中略)・・・ > 善意無過失に信頼することに無理はなかったと言い切れるでしょうか? 設問の文だけでは、言い切れません。場合分けが必要です。 大学を卒業してからかなり経ちますので、判例・学説などフォローしていないことを最初にお断りしておきます。 さて、Bが偽造した「Aの売買委任状」には、Aの実印が押されていて、Aの印鑑証明書が添付され、記載された住所・氏名等はA自身の筆跡と見分けがつかない、本物の委任状ソックリだったという前提でしょうか? そうじゃないんだ。実印の印影はカラーコピーで、ちょっと見ればすぐコピーだと分かるものだった、ということなら、「過失アリ」でしょう。善意だったかもしれませんが、無過失だったとは言えません。 本物ソックリだった。Cがそれら(印鑑証明書等など)すべてを一々確認して、「本物の委任状である」と誤信したとすれば、それとAが海外在住であること(一般的には連絡は難しい)やBがAの子供であることを考えあわせると、Cが善意であるのはもちろん、「過失もなかった」と言い切って良いと思います。 そこまでやっても「過失あり」とすれば、無過失と認めてもらうにはどこまでやればいいのか・・・ 電話したって本人が電話に出るとは限りませんし、はるばる会いに行っても出てきた人がA本人かどうか分かりませんからね。代理制度など成り立たなくなります。 Aが甲地を失うためには、A自身の外観作出は必要です。また外観作出が帰責事由となります。外観作出とは違う、別な帰責事由というのは必要ないと思います。 本件では、賃貸借の代理権(質問者さんの言う「基本的代理権」)を与えていた、という事情が、「外観作出」にあたると考えられます。 Aは、賃貸借代理権を与えることで、Bに印鑑証明書も渡し、実印の印影も見せて、Bが委任状を偽造してAの売買代理人であるかのようなふりをするきっかけを作ってしまったのです。 いい加減な気持ちで、信じるべきでないBを(賃貸借の)代理人にしてしまったという事実が、Aの責めに帰すべき事由です。 Aがなにもしていなければ(Aに外観作出=帰責事由がなければ)、Bの行為はまったくの無権代理です。まったく無関係のDがAの委任状を偽造してCに甲地を売却した場合同様に、Cが善意であっても過失はあるはずで、Aは甲地を失うことはありません。
お礼
大変参考になりました! 丁寧な解説ありがとうございました!