4つにしか分類されていないのではなく、2次元に展開しているのです。
だからマトリックスなんです。
4種類の事項をたてに並べているわけじゃありません。まして4つに分類しているわけじゃありません。状況はこの2次元空間で最低数十種はあり得ます。
ものを作って売ると言うときは、2つの次元で考えるのが有効だということを言っているのです。モノと客です。それ以外に次元を考えられるなら3次元にしても4次元にしても別に誰も文句は言いません。
次元の一つはモノ=製品です。製品自体がいい悪いじゃなく、新規性があるか、コンベンショナルな価値があるかというのを、2つにひとつではなく定規を当てるように図ってみようじゃないか、です。
これは、作る側の考え方思想が展開するモノです。
タバコひとつでも、たとえば火をつけないで味わえるタバコというなら新規性があると言えば言えます。そういう製品がないからです。しかし、嗅ぎタバコという文化は古代に存在するわけで、そうすれば最大のコンベンショナル製品と言うことになります。
それをどこに配置しますか。そこに事業者の哲学が入ってくるわけです。
これは思想であって、新規性のあるものとして売るほうがいいか、伝統品としてわかるやつ以外にわからないぞといって売るのがいいのか、何とも言えません。
そこでべつの次元が入ってきます。客=市場です。
こちらは買う側の価値観を展開して考えるものです。
ラークならどれだけ売れる、両切りピースならどれだけ、というような事実は存在します。
そこに、火をつけないタバコをいれようと考えたらどう見るかです。
やっぱりこれも、昔からある売り方がいいのか、びっくりさせるのがいいのかを考える必要があります。
タバコ屋のショーケースに置いておいて何番をくれといわせたり、スーパーで棚の何番をくれという売り方が、コンベンショナルな売り方です。
アイドルのコンサート会場だけ、美術館の土産物売り場だけ、という売り方をするならきわめて新規性の高いものと言えます。
しかし、ここからがアンゾフの思想の重要なところです。
CD販売がそうですけど、コンサート会場で握手をしてもらいながら買うほうが定番だという考え方もあり、その場合はこちらのほうがコンベンショナルになります。アナログのレコード盤なんかみたことがない世代だと、昔の楽器屋がレコード店をしており、中をあけて横から角度を変えてすかして見ながら売ってくれたなんていうのを知りませんから、CDショップという考え自体がないかもしれない。
いいでしょうか。観測する立場、何を見るかによって定規のどの点になるかは正解がありません。ちょっと何かが変わっただけで、配置している座標が変わるのです。これから起きることを予測するのですから、そこには偶然的要因が加わります。
そういうリスクを踏みながら想定していき、事業を計画するので「成長マトリックス」というのです。
したがって、運用を開始してもなんどかこのマトリックスに立ち戻り、想定していた通りの状況になっているかどうか、修正が必要かどうかを頻繁に見直しする必要があるのです。
経営陣がひとり変わっただけでこのマトリックスは大幅に変わる可能性があります。