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三角翼飛行機の主翼前縁を下向きに折ると安定するのは
紙飛行機でかなり再現性のある現象だと思いますが、最新鋭の戦闘機の主翼がどちらかというと垂れ下がって見えるものが多いことと関係があるのでしょうか。
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>最新鋭の戦闘機の主翼がどちらかというと垂れ下がって見えるものが多い のには理由があります。 現在の戦闘機の殆どは超音速機です。 超音速で飛行すると、翼の表面を流れる気流の速度も超音速になります。 気流の中に何か障害物があると、障害物にぶつかって動きを妨げられた空気は圧力が高くなります。 空気は圧力の高い所から低い所へと流れるため、後から流れて来る空気は障害物の正面の圧力の高い所を避けるように流れます。 この時、空気の圧力の違いが気流の上流側にも伝わっているため、空気はぶつかる前に障害物を避けて流れる事が出来ます。 処が、圧力変化が空気中を伝搬する速度は無限ではなく、音速で伝搬します。 そのため、超音速の気流の中では、障害物にぶつかって流れを遮られる事によって圧力が高くなったという変化は、気流の上流側には伝わりませんので、空気は障害物を前もって避ける事は出来ず、障害物の前面の圧力が高くなっている所にも空気が次々と流れ込むため、障害物の前面付近の空気は高圧になります。 この高圧になった部分が空気中を移動して行く(周囲の空気と同じ圧力だった所に高圧部が移動して来る事により、その場所の圧力が上昇する)際の空気の圧力の変化が、空気中を伝搬して行く事によって生じる急激な圧力変動の波が衝撃波(正確には圧縮衝撃波)です。 前述の通り、衝撃波が発生する所は空気が避けられずに流れ込むため流れが滞ります。 航空機等の翼はその表面に沿って流体が流れる事によって揚力を生み出しますから、衝撃波が生じて流れが滞ると揚力が減少してしまうため、航空機は失速してしまいます。これを衝撃波失速と言います。 その様な事態にならない様にするために、超音速機の多くは、後退翼や三角翼などの前縁が斜めになっている翼を使用しています。 圧力の変化は、気流の下流の方だけではなく、上下左右の方向にも伝わります。 後退翼や三角翼の場合は外翼部の前縁よりも内翼部の前縁の方が前に位置していますから、斜めになっている翼の前縁の内、前の方に位置している部分で発生した圧力の変化は、その部分よりも少し外側、即ち少し後ろ側にある前縁部にも伝わります。 その少し後ろ側にある前縁部は気流の下流側にあるため、前述の「前の方に位置している部分で発生した圧力の変化」と同じ圧力の変化は少し遅れて起きる事になります。 そのまた少し外側(後ろ側)にある前縁部で同じ圧力の変化が起きるのは、更に少し遅れる事になります。 このため同じ圧力となる部分は、翼の前縁に対して概ね平行に分布する事になります。 これは、前縁部で生じる圧力の変動が、翼の前縁に対して垂直の方向に伝播するという事と同じ事になります。 圧力変化が「気流に対して斜めに設けられている前縁」に対して垂直方向に音速で伝搬するのですから、航空機の前後方向には音速以上の速度で伝わる事となります。 もし圧力変化が航空機の前後方向に伝わる速度が増して、気流の速度を上回る様であれば、流れが滞って衝撃波を発生させる事もありませんから、後退翼や三角翼などの前縁が斜めになっている翼は、衝撃波による失速をし難くさせる効果があります。 そのため、戦闘機などの超音速機では、後退翼や三角翼などが使われる場合が多いのですが、後退翼や三角翼にも短所はあります。 例えば、後退翼や三角翼は直線翼と比べて同じ面積で得る事が出来る揚力が小さいのです。 只、この事は必ずしも悪い事ばかりではなく、飛行機の安定性に寄与する面もあります。 直線翼の固定翼機の場合は横揺れや横滑り(機種が向いている方角とは異なる方角に向かって進む事)を防ぐために、主翼を翼端部の方が高くなる様に上半角を付けて取り付ける必要があります。 【参考URL】 www.CFIJapan.com > お勉強室 > 19.Wing Dihedral and Roll Stability 上反角と横安定 http://www.cfijapan.com/study/html/to199/html-to199/186a-Wing_Dihedral.htm 一方、後退翼や三角翼の場合、例えば右に向かって横滑りをすると機体は右斜め前方に向かって進む事になりますから、気流を受ける方向の点から見ると、右側の翼は後退角が小さく、左側の翼は後退角が大きくなります。 後退角が大きくなるほど同じ翼面積で得る事が出来る揚力は小さくなるのですから、右翼の後退角が小さく、左翼の後退角が大きいという事は、右翼の揚力が増し、左翼の揚力は減少する事になり、機体は右側が持ち上がり、左側が下がる形で傾き、主翼が発生する揚力の向きも左側に傾くため、機体を左方向に横滑りさせようとする力が生じて、右方向への横滑りを抑えますので、上半角と同様の効果が得られます。 尤も、「主翼の後退角が大きな機種」や「主翼を胴体の上面に取り付ける高翼配置の機種」では、上半角効果が強力になり過ぎて、例えば右方向への横滑りが起き始めると、左方向へ横滑りさせようとする力が強すぎて、今度は逆に左方向への横滑りが起き、それを抑えようとして再び右方向への横滑りが起き、という具合に返って安定に飛行する事を妨げてしまう場合があります。 その様な悪影響を抑えるため、後退角が大きな主翼を持つ航空機の中には、主翼に下半角を付ける事で過大な上半角効果を打ち消している機種もあります。 質問者様が仰っている >最新鋭の戦闘機の主翼がどちらかというと垂れ下がって見えるものが多い とは、おそらくこの事ではないかと思われます。 因みに、主翼に下半角を付けている戦闘機は何も最新鋭のものばかりではなく、既に旧式化しているF-4ファントムなども下半角付きの主翼を使っています。 尚、後退角の短所は他にもあり、翼の前縁が斜めになっている翼の場合、翼の上面を流れる気流が、斜めになっている前縁の中で、前の方に位置している部分から、後ろの方に位置している部分に向かって、翼の前縁に少し沿う様な形で気流が斜めに流れる傾向があります。 つまり後退翼や三角翼の場合は内側から外側に向かって流れる事になるため、これをアウトフロー現象と言います。 【参考URL】 ロバート・S・マクナマラ - skyexのエアロダイナミズムAero dynamism of Skyex http://d.hatena.ne.jp/skyex/20090718/p1 このアウトフロー現象のため、後退翼や三角翼の外翼部は内翼部の下流に位置する事になります。 流れの中にある物体の表面には、流体が持っている粘性によって流体が物体の表面に薄く張り付いて流れが滞っている層があり、これを境界層というのですが、境界層は物体の表面に流体が粘り付いて流れが遅くなる事によって生じるものなので、物体表面の下流側になるほど層の厚さが厚くなる傾向があります。 【参考URL】 境界層 - Wikipedia https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A2%83%E7%95%8C%E5%B1%A4 境界層は流れが滞っている部分なので、境界層が厚くなり過ぎると流れは翼の表面に沿って流れる事が出来なくなってしまい、翼は揚力を発生させる事が出来なくなり、失速してしまいます。 アウトフローによって境界層が厚くなるのは翼端に近い部分なのですから、後退翼や三角翼は翼端に近い部分が失速しやすいという事です。 翼端は機体の重心から離れた位置にあるため、てこの原理により翼端に近い部分での揚力の変化は航空機の姿勢制御に大きく影響しますので、翼端失速が起きやすいという事は後退翼や三角翼の重大な欠点の一つとされています。 処で、このアウトフローは翼の仰角が大きくなるほど顕著となりますので、翼の仰角を小さくすれば軽減する事が出来ます。 三角翼の前縁部を下に少し折り曲げると、内翼部では折り曲げた部分が占める割合は小さく、外翼部では折り曲げた部分が占める割合が多くなるため、翼端に近づくほど仰角が小さくなります。 翼端部に近くなるほど仰角が小さくなっているという事は、翼端近くではアウトフローの強さが弱まる事になるため、三角翼の翼端失速を軽減する効果があります。 その様な仰角の変化を、前縁の折り曲げによって行うのではなく、翼端近くの前縁が下を向く様に翼を捻じった様な形にする事をコニカルキャンバーと言い、F-15などの高仰角で機動する必要がある現実の戦闘機の一部にも採用されています。 【参考URL】 コニカルキャンバー - 航空軍事用語辞典++ http://mmsdf.sakura.ne.jp/public/glossary/pukiwiki.php?%A5%B3%A5%CB%A5%AB%A5%EB%A5%AD%A5%E3%A5%F3%A5%D0%A1%BC 但し、翼端失速による悪影響が顕著になるのは高仰角で飛行する場合であり、仰角が低い状態ではさほど問題になる事ではありませんから、前縁の折り曲げによって翼端失速が防止される事が紙飛行機の安定性を増す事に寄与しているかどうかは疑問です。 ※まだ話の途中なのですが、このサイトの回答欄は4000文字までしか入力する事が出来ない仕様となっていて、そろそろその限度を超えそうですので、残りは又後に投稿する事に致します。
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- kagakusuki
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回答No.5の続きです。 個人的な推測に過ぎませんが、前縁の折り曲げによって紙飛行機の安定性を増すのは、三角翼の前縁を折り曲げたり、三角翼にコニカルキャンバーの様な捻じり下げを設けたりする事によって、翼端部が水平尾翼の働きをする様になるからではないかと思います。 例えば、主翼と水平尾翼を合わせた揚力の中心点が、機体全体の重心よりも前にある場合を考えてみて下さい。 揚力が重心よりも前に加わっているのですから、機体はどんどんと機首を上げて行き、終いには仰角が大きくなり過ぎて失速してしまう事になります。 逆に、主翼と水平尾翼を合わせた揚力の中心点が、機体全体の重心よりも後にある場合には、機首を下に向けて墜落してしまう事になります。 そのため安定して飛行するためには、"主翼と水平尾翼を合わせた"揚力の中心点(主翼だけの空力中心ではない事に注意して下さい)の位置と、機体全体の重心の位置が一致している必要があります。 処が、例えば機首が上を向いた状態では、機体の斜め下から気流を受ける事になりますが、主翼と水平尾翼を合わせた揚力の中心点の位置と、機体全体の重心の位置が一致している場合、もし同じ面積当たりで発生させている揚力の大きさが、主翼や尾翼のどの部分でも同じである場合には、主翼と尾翼を合わせた翼全体の中で、重心よりも前方の部分で下からの気流を受けた時に発生する機首を上げようとする力と、重心よりも後方の部分で下からの気流を受けた時に発生する機首を下げようとする力は釣り合ってしまいますので、昇降舵を積極的に使用して姿勢を立て直さなければ機体は水平に戻りません。 同様に機首が下を向いた状態では、機体の斜め上から気流を受ける事になりますが、重心よりも前方の部分で上からの気流を受けた時に発生する機首を下げようとする力と、重心よりも後方の部分で上からの気流を受けた時に発生する機首を上げようとする力は釣り合ってしまいますので、昇降舵を積極的に使用して姿勢を立て直さなければ機体は水平に戻りません。 そのため、同じ面積当たりで発生させている揚力の大きさが、主翼や尾翼のどの部分でも同じである限り、余程細かく昇降舵を調節し続けなければ安定して飛行する事は出来ません。 そのため、通常の航空機では、水平尾翼で主翼とは逆に下向きの揚力(?)を発生させるように設計されています。 尾翼がマイナスの揚力を発生させているという事は、主翼と水平尾翼を合わせた揚力の中心点の位置は、平面図上で主翼と水平尾翼を合わせた面の中心点の位置よりも前に位置する事になります。 この面の中心点よりも前方に位置する揚力の中心点の位置と、機体の重心位置を一致させるように設計しますと、機首が上を向いた場合には、機体の斜め下から気流を受ける事によって発生する風圧の中心は、機体全体の面の中心位置とほぼ一致しますから、重心位置よりも後ろにある機体全体の面の中心位置の所に上向きの力が加わる事になりますので、機尾が上がって機首が下がり、昇降舵を操作しなくても機体は水平に戻ります。 同様に機首が下を向いた場合には、機体の斜め上から気流を受ける事によって重心位置よりも後ろにある機体全体の面の中心位置の所に下向きの力が加わる事になりますので、機尾が下がって機首が上がり、昇降舵を操作しなくても機体は水平に戻ります。 この様に、安定して飛行する様にするためには、翼の中で機体の後の方にある部分が発生させる揚力をマイナスにするなどといった方法で、最も面積が広い翼である主翼の中心の位置が重心よりも後方になっている様にする必要があるのです。 【参考URL】 九州大学鳥人間チーム > 鳥人間入門 > 飛行の理論 > 3章:尾翼の働きについて http://www.aero.kyushu-u.ac.jp/birdman/introduction/theory.html#chapter3 先述の様に、三角翼の前縁を下に折り曲げますと、翼の中で翼端部に近い部分の仰角が減り、折り曲げ具合によっては俯角(マイナスの仰角)になります。 下向きに取り付けられた翼はマイナスの揚力を発生させます。 三角翼の場合、翼端部に近い部分は主翼の中でも後ろにありますから、翼端部に近い部分がマイナスの揚力を発生させているという事は、主翼の空力中心よりも後ろの位置でマイナスの揚力を発生させている部分があるという事であり、それは水平尾翼があるのと同様の働きをしますので、三角翼の前縁を下に折り曲げた紙飛行機は、安定して飛ぶようになるのではないかと思われます。(前縁全体を折り曲げるよりも、翼端部付近のみに対して捻じり下げを加えた方がより効果が高いと思います)
お礼
機体の重心の位置も重要なことは経験的につかんでいました。これから翼の後退角なども変えてご教示の内容を追認してみたいと思っています。
No.1です・・・・ もう一つの可能性としては、主翼の強度がアップして、飛行中のたわみが軽減されるということです。
お礼
確かに。折り紙ですので、そのままだと、たわんでいるはずですね。調べてみます。
No.1です。 「主翼の前縁を下に折り曲げる」という事は、「主翼の後縁を下に折り曲げる」のと同じ意味を持つ可能性が高いと思います。 なぜなら、「機体の胴体への主翼の取り付け角度=飛行中の迎え角」となるとは限らないからです。
お礼
早速検討してみます。三角なので後縁を曲げるとかえって下向きに飛ばないかと予想してしまいますが…
前縁を下向きに折るってことはキャンバーを付けるってことでは? 主翼はキャンバーをつければ平板より当然揚力は大きくなります。 これが所謂「翼型」と呼ばれるもの。 主翼が先端に行くほど下がってるのは下反角ですね。 戦闘機の場合は安定性より運動性を重視した物ですから…旅客機など通常は逆向きの上反角を付けるケースが多いです。 これは安定性を求めた物です。
お礼
私の文章がまずいのです。三角翼の前縁を角をつけて折り曲げるという意味でした。この飛行機を後ろから見ると(前から見ても同じですが)ひらがなの「ひ」の字のように見えるので、いわゆるキャンバーと同じ働きになる事がわかりませんでした。曲げた部分が尾翼のような作用をするので安定するのかと思いました。
戦闘機は操縦における機動性とステルス性重視です。安定性とは逆の方向へ技術を使っています。 ある意味、非常に不安定に作ってあり、操縦桿を1ミリでも動かしたら機敏に反応するようになっていますが、あまりシビアにすると人間では制御できないので、それをコンピューター制御で補っています。 翼にキャンバーを付けると、紙飛行機のような超低速でも揚力を得られます。飛行器が着陸時にフラップを出すのに近いのではないでしょうか。
お礼
投げないで手を離すだけでもきれいに滑空していくのは揚力が与えられたからでしょうか。まっすぐに飛んでいくことができるようになっているようにも思います。
お礼
なかなか読み切れないと思いますが浩瀚なご教示をお願い申し上げます。折り紙で作った三角翼飛行機にすぎませんが、きれいに滑空する条件が見つかって喜んでいます。皆さんからのご教示を読ませていただいて真相に近付ければと思います。