実はウイスキー用もビール用も、国産麦芽は主要各社への国による割り当て制が採られています。
使用量としては圧倒的にビール用が多いので、まずこの説明をします。
麦飯用の六条大麦とは違って、ビール用もウイスキー用も原料となるのは二条大麦です。
北関東が主要生産地で、今では栃木県が大半を占めています。
この二条大麦を原料として麦芽が作られるのですが、国産の場合コストがあまりにも高いため、ビール会社としては輸入麦芽(北米、欧州、豪州等)の方を主として使うことになります。
また供給の安定性、危険分散、要求品質・規格等の理由から、調達ルートを多様化させている訳です。
国産大麦から麦芽を製造する場合、歩留り・加工コストなどを含めると、輸入麦芽に対する競争力に乏しいのが実態です。(輸入麦芽34千円/t、国産麦芽150千円/t)
しかし我が国の農業政策としては、戦前から栽培を続けて来ているビール麦農家の救済援助もしなければならず、大手メーカーが加入している「ビール酒造組合」との間で調整の上、近年の各社がビール生産に使用した麦芽の量に応じて比例配分し、高額の国産麦芽を引き取ってもらっていることになります。
ウイスキー用麦芽も同様になると思います。
サントリーの場合は、子会社のカンバク(旧・関東麦芽)が栃木県にありますので、そこで少量ながら製造しているようです。
しかし、輸入麦芽に混ぜて醸造するはずですので、国産麦芽オンリーのものはないでしょう。もし国産原料を謳い文句にした商品を作ったとしたら、ばか高い値段になってしまうと思われます。
しかし当然のことながら、海外の製麦会社には自社で受け入れられる品質規格を提示した上で、それに適合したものだけを輸入するのですから、ジャパニーズ・ウイスキーであることに違いはありません。