企業会計の視点で回答します。
損益計算書を含む財務諸表は、会社の利害関係者に対して会社の財務内容(収支の動き、財産状態)の真実の姿を報告するものでなければなりません。
◇先ず、「貸倒損失」は、通常の経営努力をしていたにもかかわらず、債権の回収に失敗した場合に計上する勘定科目です。
ところが、本件の売掛金は「時効」によって請求権を喪失しました。民法第百七十三条第一号には、「 生産者、卸売商人又は小売商人が売却した産物又は商品の代価に係る債権を二年間行使しないときは、消滅する。」と言う意味の規定があります。なぜ二年間も請求書を発行しなかったのか。なぜ「時効」になるまで回収努力を怠ったのか。二年間に少なくとも一度、請求書を発行すれば、時効の進行を止めることができたのに。とても「通常の経営努力」をしていたとは思えませんね。経営者の職務怠慢ではないのか。
なので、売掛金を帳簿から消すための科目として「貸倒損失」は使えません。
また、職務怠慢による債権の消滅に伴う損失は、経常損益に反映させてはなりません。これは、企業会計の基本的な考え方です。なので、この損失は「販売費及び一般管理費」にも「営業外費用」にも計上できません。「特別損失」に計上するほかありません。
◇それならば、この損失を特別損失の区分に計上するときの勘定科目は何か?
・先ず、企業会計原則には、「特別損益は、前期損益修正益、固定資産売却益等の特別利益と前期損益修正損、固定資産売却損、災害による損失等の特別損失とに区分して表示する。」とあるだけ。また同注解には「過年度償却済債権の取立額や過年度における引当金の過不足修正額」など、特別損失の科目を例示しておりますが回答に役立つ記述はありません。
・次に、財務諸表等規則第九十五条の三(特別損失の表示方法) を見ると、「 特別損失に属する損失は、固定資産売却損、減損損失、災害による損失その他の項目の区分に従い、当該損失を示す名称を付した科目をもつて掲記しなければならない。ただし、各損失のうち、その金額が特別損失の総額の百分の十以下のもので一括して表示することが適当であると認められるものについては、当該損失を一括して示す名称を付した科目をもつて掲記することができる。 」とあり、この”「当該損失を示す名称」を付した科目”が回答のヒントになります。
で、「当該損失を示す名称」の科目を考えてみたのですが『債権時効損失』を提案します。経営者の”怠慢”を端的に表示しているからです。
〔借方〕債権時効損失 ☆☆☆☆☆/〔貸方〕売掛金 ☆☆☆☆☆
これで問題の売掛金を帳簿から消去すれば良いでしょう。
お礼
企業会計の切り口からの回答をありがとうございます。また、御礼が遅くなり、大変失礼いたしました。質問の経緯はNo.1の御礼欄に記載したとおりです。 素人目からは雑損失が扱い易いと思いましたが、確認したところ、バイト先は、小規模ながら株式会社で決算書も作成しているとのことなので、債権時効損失が適しているように思いました。 ありがとうございました。 (追記) 個人的には、単なる商業簿記ではなく企業会計という視点が必要であることを認識しました。これを機会に会計業務の基礎知識の習得を行いたいと思います。