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行政法の要件裁量説についての疑問
- 行政法の要件裁量説について、裁量の範囲を知りたいです。
- 要件裁量説に基づくと、事実の認定は裁判所が行い、処分の評価は行政庁の裁量権が認められます。
- しかし、どこまでが裁判所の範囲で、どこからが行政庁の裁量なのかについて詳しく教えていただけませんか。
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質問文を読むと,「事実認定」の言葉の意味に混乱があります。 裁判所の「広い意味での事実認定」には 1,事実の存否 2,1で存否の確定された事実の評価 があります。1の事実の存否を「狭い意味での事実認定」と言うことができます。 例えば,コップに半分水が入っているというのが「狭い意味での事実認定」,コップに半分水が入っている事実を評価して(上記2)「もう水が半分しかない」「まだ半分も水がある」「適量だ」というのが「狭い意味での事実認定」です。 質問者さんは事実認定を「広い意味での事実認定」で使っており,問題集は「狭い意味での事実認定」を使っています。 上記1について,人によって事実があったりなかったりするのはおかしいですから,問題集の書き方が理解しやすい正しい説明になっています。 行政処分の違法理由として「事実誤認」があるのは,評価の前提である事実の存否の判断に誤りがある場合です。事実を前提にその評価を誤った場合が「評価すべき事実を考慮せず,考慮すべきでない事実を考慮した」等々の裁量権濫用に該当する場合です。
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#2の補足 ご質問者がお持ちの問題集の中で、ご質問の箇所は、どのようなお立場の方が、どのようなお考えでお書きになられたのかが、明確ではないところに、ご質問に対する回答も、腑に落ちないものも含まれるのではないかと、懸念します。 さらに、日本に於ける直近の対応ですら、立法を含めた議論に於いても、現政権が、以前に交代する最後の国会に提出された行政瑕疵の対応のための立法案は、十分に検討されないまま廃案になってしまい、公務員の為した行政瑕疵に対する是正や、救済対応が、不明瞭のまま、被害が続いているものもあります。 但し、当該問題集の著作者は、何故、それを敢えて記した意図はわかりません。しかし、法論議の上でも、何を隠そう、多くの行政学者が書いている通り、日本に於いては、司法審査に付す場合ですら、行政裁量の自由性を尊重し、論議を深めない判例があったことも指摘されているので、司法審査に付す実効性まで熟考すると、一筋縄では解決できない根深い問題があると思います。 ご参考に: 「実質的法治主義行政法との対話(3)15 イメージを深める行政裁量論の切り口と食べ方 比山節男先生の著作物」 http://ksurep.kyoto-su.ac.jp/dspace/bitstream/10965/811/1/SLR_46_1_91.pdf ところで、そもそも論に立ち戻ると、法の経緯からは、行政裁判の請求対象外とする行政裁判の自由裁量の考え方は、そもそも、オーストリアのベルナチクが1886年の著書で、「裁量の認識」に対して論じられたことです。※1(以下引用) ご参考に:「自由裁量とその限界-行政裁量の司法統制-田村悦一先生の著作物」 http://www.ps.ritsumei.ac.jp/assoc/policy_science/073/073_04_tamura.pdf いわゆるこの「要件裁量ないし、判断裁量」と言われたもので、「法規がこの公益実現のために如何なる規定をおいているかを重視して、その法律要件の認定に行政の自由な活動が生じる」としたものです。そうした意味では、ベルナチクの場合には、行政裁量は、行政裁判所の審査対象外としたと思いました。 しかしその後、さらに検討が加えられ、テツナ―の厳しい批判にさらされることとなり、行政裁量の範囲を、「具体的な処分に内容や手段の選択」といった効果の発生ないし行為の選択の領域に留める所謂『効果裁量ないし行政裁量』が唱えられるようになったと説明していると思います。 というわけで、提唱者からは、おかしな論議で、公共の利益に反するかどうかという論議は無いと思いますが、その後の展開の中で、広義に広まっていったものですから、ご質問者のお考えも含まれるようになったと考えます。 さて肝心の、『司法審査請求対象とするものの解釈の棲み分け』ですが、これは、寧ろ、「行政瑕疵に関する要件を明示している著作物をご参考になさられると良い」と思いました。
お礼
詳しいご説明ありがとうございます。これは国家総合職の試験問題集であり、表面だけの説明でそこまで詳しいことが書かれていなかったので、質問させて頂きました。 問題の根はどうも複雑なようですので、今回は、試験対策として問題集の文言をそのまま暗記することにしました。 詳しくご説明してもらってすみません。そして、ありがとうございました。
- Gracies
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結論から端的に申し上げますと、古典的な自由裁量への司法不介入から、現在は、逸脱や濫用による行使においては、司法権が介入できるとしているからではないでしょうか。換言すれば、覊束(きそく)行為ではない自由裁量であっても、権限が適正に行使されなかった場合には、司法権の請求により、取り消しもありますよということだと思います。 ☆一般的に、コンパクトに纏めたサイト (1)http://ja.wikiversity.org/wiki/%E8%A1%8C%E6%94%BF%E8%A3%81%E9%87%8F 政策上のより詳述されたサイト:改正行政事件訴訟法施行状況検証研究会報告書 平成24年11月 立法行為に伴う問題や法人個人等、いろいろと書いてあります。 (2)http://www.moj.go.jp/content/000104296.pdf ☆☆次に、(1)要件裁量説(佐々木惣一説)と効果裁量説(美濃部達吉説)を再考します。 ここで、要件裁量という意味が、ご質問者と異なっていることをご確認下さい。 つまり、行政行為により、法の条文を定めるという行為そのものは、法の条文を定めない という状態からすれば、既に、覊束なのです。 何もなければ、とやかく言われる筋合いはないのですから。 但し、自由裁量と言えども、権利・義務の適正な範囲を定めなければ、余計なお節介や公 権力で、迷惑を受ける場合もあるからです。 依って、この覊束的自由裁量による権利・義務関係を明確にしようというのが、広義のこの 法律に関する考え方だと思います。ですから、 ※要件裁量説 法定要件の解釈・当てはめの段階に裁量を見出すもの 法律が要件を定めていない場合や、抽象的な目的という形で定めている場合⇒自由裁量を認め るとする立場 これに対して、 ※効果裁量説では、いわゆる、覊束裁量を除く自由裁量 法定要件の認定に対する裁量を否定 自由裁量が認められるか否かは処分の性質により判定 国民の権利・自由を制限する処分⇒自由裁量を否定 国民の権利・自由と無関係な分野や、国民に権利・利益を与える処分⇒原則として自由裁量と考える立場 ☆★☆故に、効果裁量は、そもそも、覊束裁量を除いていますから、問題には出てこない考え方かと思いますが、要件裁量説では、行政事件訴訟法第30条により、権利の逸脱や濫用への救済を含めた事実認定のことを言っているのではないでしょうか。 ☆★☆★司法請求との関係で言えば、広義には、問題とする行政法の条文の法源から始まって、改正の経緯、法が定める権利・義務状態、他の条文との関係、他の法律との関係で、行政行為の権限の逸脱又は濫用の有無について、疑義のある場合には、司法請求によりそれを確認し、その結果、権限を逸脱又は濫用した処分した行政行為は、取り消すこともあるという、救済の道も検討すると思います。 また、個別の行政指導を含む処分については、上記に加え、通達や通知、または、決定の方法等を含めての対応を検討すると思います。 何故ならば、義務付け訴訟では、当然処分すべき行政行為を、処分をしないという理由で、損害が発生した場合には、処分をしないことが、権限の逸脱又は濫用に当たるとされる場合もあるからです。(URLの(2)をご高覧下さい) 参考に:法的根拠:行政事件訴訟法第30条 第三十条 行政庁の裁量処分については、裁量権の範囲をこえ又はその濫用があつた場合に限り、裁判所は、その処分を取り消すことができる。
お礼
事実があったかどうかの認定は、狭い事実認定の両者の説とは関係ないということですね。 詳しいご説明ありがとうございました。