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債務不履行に基づく損害賠償の算定基準時(履行不能時
債務不履行に基づく損害賠償の算定基準時(履行不能の場合)についてわからないところがあります。 判例は、損害賠償の算定基準時を、原則として「履行不能時の価格」とし、 例外として「目的物の価格が騰貴しつつあるという特殊事情が有り、かつ債務者が履行不能時にその事情を予見可能であった時は、騰貴時の価格を基準とする」(最昭28.12.18)としてます。 この例外の意味がよくわからないのですが、例えば 目的物のコレクターA(転売などは全く考えていない)がBと売買契約したとして (1)600万円で売買契約を締結 (2)Bの債務不履行 履行不能時の目的物の価格は時価800万円 (3)A訴訟提起 (4)その後、目的物の時価はいったん1000万円まで騰貴 (5)本件訴訟の事実審口頭弁論終結時には900万円 という場合、例外の基準を当てはめると、損害賠償額は900万円ということになりますか? 「騰貴時の価格」とはいったいいつなのか((2)or(5)?)がわかりません。 「騰貴時の価格」というからには、最高値である1000万円ということも考えうるとおもうのですが、 ただ、中間最高価格を基準とするには、債権者がその具体的な利益を転売などで得られたということを、債務者が知っていないといけないのですよね。 とすれば本質問のような、転売等の予定のない人の損害賠償の算定基準時はいつなのでしょうか? あと、仮に上記の例で (5)本件訴訟の事実審口頭弁論終結時には500万円 となっていた場合、損害賠償額はどのようになるのでしょうか。 どなたか回答よろしくお願いします。
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- shooter555
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416条による損害賠償請求とは請求者の受けた「通常生ずべき損害」を填補させるためのものです。これを前提に話を進めたいと思います。 転売目的のある場合であれば、目的物をいつ買うか、更にそれをいつ売るかという点のそれぞれの違いによって、損害を受けた程度つまり利益不利益に大きく影響するわけです。 判例が、転売目的の場合に、損害賠償の算定基準時を、原則として「履行不能時の価格」としているのは、この時点を原則とすることによって、客観的にかつ正確に損害賠償価格を認定することができるからです。「通常生ずべき」という文言はここに影響しています。 そして、例外を「目的物の価格が騰貴しつつあるという特殊事情が有り、かつ債務者が履行不能時にその事情を予見可能であった時は、騰貴時の価格を基準とする」としているのは、先の原則を覆すほどの証明を当事者がすることができる場合に鍵って、証明された事実に従って損害賠償価額を改めようというわけです。 請求者が頑張れば、「履行不能時の価格」よりも高い価額を損害として、つまりは中間価額や最高価額を請求することもできるのです。 さて、転売目的のない取引に話を変えましょう。ここでも416条により賠償請求することができるのは、請求者の受けた通常生ずべき損害分のみです。 転売目的のない場合も、原則は「履行不能時の価格」になります。しかし、転売目的がない以上、訴訟の提起や口頭弁論終結の時までに価額変動があったとしても、不利益(損害)の幅が上下したとは言えません。 言ってしまえば、請求者の損害は履行不能時に、目的物を買えなかったこと自体が損害であって、その後の事情が損害とはできないわけです。