この冷却モデルに対して簡単な微分方程式を立ててみます。
MCdT/dt = -hA(T-Tg) + Q
M:質量
C:比熱
T:体やCPUの温度
Tg:外気の温度
t:時間
h:熱伝達係数
A:冷却フィンの面積
Q:単位時間の発熱量
この簡単な微分方程式をとけば、どのような冷却曲線が得られるか計算できますよ。
なのですが、この微分方程式を解かなくても、定性的な議論はできます。
外気への熱の放散量は、-hA(T-Tg)なので、
熱伝達系数が一定であれば、冷却フィンの面積を大きくすれば、それだけ高い冷却性能を得ることができます。なのですが、冷却フィンの面積を増やせば、空気の流れの速度が遅くなり、熱伝達系数(単位面積あたりの冷えやすさの割合)が一般的に下がります。冷却フィンの面積増大による冷却効率が落ちることも考えられます。つまり、実際は、いたずらに冷却フィンの面積を増やせば良いというものでもない、というわけです。
冷却に関しては、大切になるのは、熱平衡に達した時の、平衡温度ですよね。
平衡温度をT∞とすると、
熱平衡に達したとき(放熱量と発熱量がまったく等しくなったとき)は、左辺のdT/dt = 0になるので、
T∞ = Tg + Q/(hA)
冷却フィンの面積を増やせば、平衡温度は下がります。
また、冷却フィンの面積を増やさなくても、熱伝達系数を増やしても(たとえば、扇風機・冷却ファンの送風量を増やす)、平衡温度は下がります。
なのですが、人体の場合は、あまり効果がないと思います。人間には発汗という優れた冷却システムが備わっているからです。
人間は、熱くなると汗をかくでしょう。かいた汗を蒸発させることにより、上昇した体温を低下させます。この効果は、放熱板を取り付けるよりも、桁違いに大きいと思いますよ。
このことは、犬を見れば、確かめられます。犬、暑くなると、舌を出してハーハーと荒い息遣いをするでしょう。これは、汗の代わりに、ヨダレを強制的に蒸発させて、体温の調節をはかっているんですよ。犬は、象のように大きな耳、つまり、大きな放熱板を持たなくても、舌とヨダレを効果的に使うことによって体を効率的に冷やせるんですよ。
ということで、汗を全身でかくことのできる人間の場合は、放熱板を取り付けるよりも、かいた汗をいかに効率的に蒸発させることができるか、そのことを考える方が、効率的で安上がり、しかも地球にやさしくエコということになります。
また、気温が体温よりも高い場合、放熱板は外気から人体へと熱を運ぶ役割を果たします。この場合、放熱板は、冷却ではなく、加熱として作用します。