合議制の場合、つまり裁判官が複数いる場合には、そのうちのひとりが裁判長になり(裁判所法第9条第3項参照)、裁判官1人で審理する場合には、裁判官は複数いないのだから、裁判長となる者はいない、ということになります。
ただ、このあたり、特に呼称として「裁判官」を用いるか、「裁判長」を用いるかについては、明確な法律の規定はないように思われます。
裁判官1人の場合に、その人を「裁判長」と呼んでも、間違いとはいえないと思います。
現に我々だって、「裁判官1人の時に、その裁判官に『裁判官』とは言えないよね。ついつい、『裁判長』って呼んじゃうよね」なんて話をしたりします。
ごく普通の感じ方から言えば、たとえ裁判官が1人の場合でも、「法廷という裁判の場」があって、裁判官はそこを仕切る人、つまり裁判の場の長といえる人なわけですから、裁判官1人の場合にその人を裁判長と呼ぶことは決しておかしくはないですよね。
そこで、結論としては、厳密に言えば、裁判長とは、裁判官が複数で審議するときの長であって、1人で審議するときには裁判長はいない、しかし、普通の感覚では、裁判官1人のときにその裁判官を裁判長と呼んでも変じゃない、ということでいかがでしょうか。