補足を読ませていただきました。
事務管理以前においてはOKだと思います。
事務管理の相手方が不在であったり、手に負えない状況に
なっている場合に、代わりにその事務を行うことをその
内容としていますが、まず、制限行為能力者で
あれそうでなかれ、699条により、「私が事務管理を
始めました。」と、相手方に通知する義務をおいますから、
これをしないで履行をしてしまうと、それだけで損害を
賠償する危険も出てきます。
いわば、事務管理をまず始め、そしてそれを相手に知らせて
OKであればその事務管理を続行してもよい。という
流れになります。例えば被保佐人は、自分の財産を
浪費する癖があるため保佐人をつけられ、
重要な財産の処分を制限されています。彼もまた、
行為能力が十分じゃないと言われているものですが、
だからといって、屋根が壊れたから屋根を修理してくれ
と頼む能力がないわけではないでしょう。その被保佐人
に大工の能力が備わっている場合もございます。
それに対して代理人の同意がいるというのは想定しにくい
ことなのです。なぜなら同意、というのは、あくまで「法律行為」
に対して与えられるものであって、5条1項、9条本文
例外としては13条1項所定、あるいは、新しく同意を
ようする事項を家庭裁判所にお願いして定めた
場合なのです。(各条文参照。)
法律行為は、取り消すことができる。等書いてあり、
同意を要する行為、も明記されています。
成年被後見人のように、事理を弁識する能力を欠く
ような場合には話は別ですが、少なくとも、「行為能力が
ない」という一言で、無能力であるということは、
含めすぎている感がございます。行為能力がない
というのは、思ったよりも、限定的であるといえる
のではないでしょうか。そもそも
成年被後見人については
成年後見人に同意権がない事に注意なさってください。
第9条参照。または、5条、13条、17条には同意を要する
条文があるにもかかわらず、成年被後見人にはない
ところ参照。
事務管理を始めることに代理人の
同意は必要なのでしょうか。事務管理と契約が
違うのは、あらかじめ両者の同意があって初めて
なりたつのではなく、まず事務管理という行為が
あって、それにかかった費用を後から相手に
請求するのでありますから、事務管理自体は、
取り消されることもなく、その事務管理をする
能力があれば単独で、しかも無効ということも
ない、もはやそこでは行為能力というのは
問題とならず、事実行為を行っている
のだ。ということであります。そもそも取り消した
からといってどうなりましょう。すでに「行為は
なされてしまっている。」ということは無視できない
のではないでしょうか。
つまりまず先に義務がきて、履行ができたら
それに対して生じた費用の償還を請求できる
債権を得ることになります。
これをもって事務管理は「契約とは別の」債権発生原因
と言っているわけです。
事務管理を遂行する能力と、行為能力というのは
別のものである。ということがいえるのでは
ないでしょうか。
これに合わせて、
そして事務の遂行に失敗すれば、それは
相手方へ損害を賠償しなければならないわけ
ですね。
おせっかいをする善良な心を持つ人がなぜ
賠償をしなきゃいけないんだろう。しかし
「ありがた迷惑」という言葉もありますように、
やはり何事もやりすぎはよくないし、そのような
事務遂行能力のない人に任すのも心もとない。
だから両者の調整をしなければならない
ということですね。
具体的に疑問と呼べる部分がどこにあるのか、
少しわからなかった
のですが、全体として、質問者様の考え方が、
成り立ちうるのかどうか
ということに疑問があるということでしょうか。
故意・過失を本場で論じているのは、主に刑法の分野ですね。
ですから少しばかり刑法の話に入ってみようと思います。
故意とは、規範を認識しながらも、それをやぶることを認容すること
ですね。
例えば、制限行為能力者が、あ、明日約束の期日だ。でもめんどう
くさいからやっぱ履行するのや~めた。とかいってサボったら、
これはもちろん故意でしょう。深く言えば、契約により、
何月何日までに、~を行うこと。という当事者同士の義務規範を
認識していながら、それをやぶることを認容した。といえましょうか。
私が前に不法行為の故意と、契約責任の故意の性質は同様だ
と申しましたのは、やはり、「守らなければならないものを目の
前にして、それを破ることを認容することが、故意そのもの
だから、それは不法行為も契約責任でも一緒である。」という
判断に基づくものです。
では過失っていうのは?故意よりも過失の方が難しいです。
例えば、履行期日まであと3日である。そして2日後には
台風がきて、暴風波浪注意報が出されそうである。
天気予報より。
そんな日に履行はできもしない(ような契約だった。)
だからその2日前にしといた方が、もしくは今からでも
終わらせておかないといけないだろうと思った。
でも、台風なんてこないだろうと思って、そのまんま
2日間のんべんだらりとやっていたら、台風が来てしまった。
そして結果として履行期日に間に合わなかった。
つまり履行が不可能となるような「危険」を認識
したにもかかわらず、その「危険」をあえて避けようと
しなかったことに過失というものがあり、
故意のように、期日に積極的に遅れよう、遅れてもいいや
それであの人に損害をおわせちゃろう。
とする意思とは別物だということですね。
台風がこないことに注意が欠けていたし、もし
台風がこなければちゃんと履行はできていたと
いう違いがありますでしょう。そしてちゃんと、
履行する気もあった。
制限行為能力者はこういう故意、や過失において
重要な要素となる、台風の危険や、明日に迫った
履行期日でも全く危機感を抱かないというような、
そんな精神上の状態。こういう人たちは
責任能力がないといえるのではないでしょうか。
実際怠け者っていますけど
ね。。。
痴呆老人だと契約をしたことすら忘れるかも
しれません。子供は途中で嫌になって投げ出す
かもしれません。だから責任能力があるとは
言えない。と法律上見なされるわけでしょうね。
不法行為について制限行為能力者は
同意をもらってするわけではない。
ここは、私も気づかされました。
私の以前の回答ですと、これを踏まえて
不法行為へ話をシフトさせる必要がありました。
制限行為能力者は、前解答で申しましたように、
「行為能力」が制限されている者達をいいます。
ですから、きちんと履行する能力があれば、
行為能力がかけていたとしても、大した影響は
ないのですね。
そして、行為能力というのが故意・過失という
ものに影響を与えるかというと、行為能力
というものがそもそも故意・過失というもの
に影響を与えるということを予定している
ような能力ではない。ということになりましょうか。
あくまでも取り消されるような、代理人や、複数の
人間、(共有者などの共同行為者)、そして
無効な意思表示をしないで契約を締結
できるような能力があれば、(能力があっても、
仮装譲渡など意思表示が無効になるような場合があるが
それは、その意思表示をした人間に、そのような能力が
ないというわけではないことに注意。)
それは行為能力者だし、なければそれは行為能力者
ではない、ということになりまして、したがって、
故意・過失はもっぱら責任能力があるのか
どうか、というフィールドで論じられるべき
ではないでしょうか。
反復の多い解答でしたが読んでいただければと思います。
私も大変質問に回答することにより学ばせて
いただいておりますので、質問や疑問点がありましたら
またお書きください。
お礼
いつも、懇切丁寧かつ論理明快な回答をありがとうございます。 事務管理についての発想はとても、シンプルなことから、始まったのですが、シンプル 過ぎて、穴だらけのようですね。 事務管理についても、制限行為能力者には一定の修正が必要ではないかと思いました。 これは、制限行為能力制度をそのまま持ち込むのではなくて、その考え方を参酌すると いう表現のほうが妥当かもしれません。 まず、手始めは、法律行為に限定せずに、準法律行為である事実行為に拡大でしょうか。 事務管理では、本来は不法行為にもなりかねないことが、阻却されますので、その点 は責任能力ということで、阻却される範囲を修正できるのかもしれません。 しかし、一方で事務管理には、本人の利益に沿うようなかたちで行うことが要求されま すが、これは、責任能力ということよりも事務処理能力の問題かとも思えます。 (浪費癖であれば、経済合理性に反するような修理を行ったりする場合です) 事務処理能力ということであれば、制限行為能力で援用できないかということになりま す。 また、保護者によって同意が得られない場合に、取消すといっても意味がないというこ とも仰るとおりなのですが、継続義務を緩和するということが考えられないでしょうか。 やりかけたけど、やってみたら、手におえないのでやめた。 つまりなかったことにするということです。 しかし、保護者が同意した場合には、保護者が助力しえますので、継続できるように思 いますし、継続義務を緩和する必要がないともいえます。 この場合には、保護者と一体としての責任を考えればよいので、事務管理を特に修正 する必要はないように思います。 上記は、「制限行為能力者その2」で投稿させていただくことを考えております。