興味が湧いたので少し調べてみました。
もちろんみなさんご指摘のように洋の東西を問わず,歴史ある印鑑文化が存在しているのですが,今のように印鑑が使用されるようになったきっかけは,どうも明治6年の太政官布告にあるようです。このとき,実印のない公文書は裁判上の証拠にならない旨が布告され,同年10月1日からの施行となりました。印章業界が毎年10月1日を印鑑の日とするのはこのためなんですね。
さらに明治10年には,諸証書への自署押印の義務(代書してもらった時も押印の義務あり)が布告され,いよいよ印鑑社会が到来し,うよ曲折を経ながらも今日に至っているわけですね。(すでに廃止されていますが)
まだまだ識字率の低い明治の初めのころですから自分の名前を書くのですらやっとという人は多かったと思います。身分が固定されていた江戸時代ではそれでも問題は少なかったのでしょう。しかし,明治の世となり,平民(農民・職人・商人)の誰もが取引に参加できるようになったのは良いのですが,いかんせん識字率が低い。字が書けない。でも代書は許されている。なので,誰かに姓名を書いてもらってその横に自分で実印を押印するという習慣がだんだん出来上がったのだと思います。
その証拠に,明治33年に施行された「商法中署名スヘキ場合ニ関スル法律」によって,商法で要求される「署名」は記名押印に代えても良いことになったんですが,このときの立法趣旨はまさに印鑑社会の習慣を前提にしているのです。つまり,当時の商習慣では署名より印鑑に重きが置かれていたのに,肝心の商法が実情を無視して「署名」を要求しているのでこれはいかんということになった訳です。
なお,現在の法律では登記などの一部の例外を除いて印鑑の有無が効力を左右することはありませんし,とくに法律行為は意思表示のみにより行うことができますから本来書面すら必要ありません。でも我々は相変わらず契約書を作りますし,契約書には印鑑を押印していますね。これが習慣というものでしょう。
名前に被せるような押印ですが,これは偽造防止か,あるいは公印のマネが習慣化したものと思っております。
お礼
回答有難うございます。 意外と歴史は浅いのですね。