通常、「ご丁寧に」とすると、“相手に対する感謝や、自身の至らなさに対して先方に侘びたい気持ちがあるときに使われます”が、「ご丁寧なことに」としたときは、“相手の行為の丁寧さに対して不満の意を表明して使われる”ことが多いです。
その様に、「ご丁寧なことに」は先方に対して、“必要以上に丁寧で嫌みである”、“くどい”、“わざわざ”ということを暗にほのめかしたり、“嫌み”で使われることが多いのです。
ですから、「ご丁寧に」との違いを考えたときは、「相手に対し不快感や迷惑な感情を持っていることを暗に強調したいときに使われる表現」だと言えます。
また、「ご丁寧なことに」を他の言葉で言い換えるなら、「慇懃無礼にも」とか「悪丁寧にも」と表現できます。
題目のそれぞれの用例ですが、
1)「あなた見て。ほら、ご丁寧に○○さんから残暑見舞いの葉書が来たの。お孫さんの写真付きよ。先日、お中元まで頂いたのに(こちらは、いただくばかりで気が利かずに申し訳ないわ)。」
2)「あなた見て、ほら、ご丁寧なことに○○さんから残暑見舞いの葉書が来たの。お孫さんの写真付きよ。先日、お中元まで頂いたのに(わざわざ写真なんか、孫の自慢がしたいのね)。」
1,2それぞれ( )で言葉を補いましたが、「ご丁寧に」と「ご丁寧なことに」では、同じ文章でも、そのぐらい印象が違います。
ご丁寧な「こと」とすると「余計なこと」といういう悪いイメージが付加されてしまいますので、使わない方が良いです。
他にも注意点があります。
「まあ、○○さんのお仕事はいつみてもご丁寧なこと」と言い切ると、
「ご丁寧なこと」=「見事である」
と、そのまま褒め言葉になりますが、「ご丁寧なことに」と「に」が後ろに続いてしまうと、それとは別の反語的な感情が付加されてしまいます。
そういった点からも、「ご丁寧に」にも、「ご丁寧なことに」ほどではないけれど、場合によっては悪いイメージを相手に持たれることがあるので、使うときは注意が必要です。
「ご丁寧に、ありがとうございます」と、省略せずに言った方が、誤解無く感謝の気持ちが伝わります。