あなたがプロ野球の監督だったとしましょう。そうすると、最終的な目的はシリーズで優勝することですね。140試合あるとして、まぁ、85勝すれば優勝できるでしょう。ということは、55回は負けることができるという計算になります。
この85勝55敗を目指して、ピッチャーのローテーションを組んだり必要な補強をしたり練習計画を立てたりするのが、戦略です。つまり140試合全部を勝とうなどと思う必要は無いのです。ピッチャーを休ませる、或いは選手に休養を与えるために「わざと」二線級の選手を出して敢えて「負ける」ことも戦略のうちです。
一方、戦術というのは、「この試合」に勝つことを目的に施す各種の方策です。例えば、代打を誰にするか、ピッチャーの交替をどうするか等々の作戦がそれに当たります。
そうすると、戦略と戦術が矛盾する場合が出てきます。例えば、9回裏満塁。「今ここで、リリーフに○○という投手(そのチームのエース級)を投入すれば、相手を無得点に抑え、延長戦に持ち込むことができるだろう」という見通しがあったとしましょう。
戦術的判断とすれば、躊躇無く○○という投手をリリーフに送るべきです。その方が「この試合」に勝てる可能性がありますから。
しかし、戦略的に考えれば別の判断もあり得ます。「今、敢えて○○をリリーフに送って延長戦にもつれ込ませて1勝を取るよりも、ここはすぱっと負けて選手を休養させ、ピッチャーのローテンションを守った方が長期的には有利である」という判断です。つまり55回は負けても良いのだから、無理に「この試合」に勝つ必要はないという考え方ですね。
どちらの判断をするかは、指揮官次第ですが、戦略と戦術では結果として正反対の手を打つことにもなるわけです。
お礼
ご回答ありがとうございます。非常に明快です。 そのような定義上の差異があったのですね。てっきり、戦略と戦術の違いは、対応する関係者のポジションの上下だと勘違いしておりました。