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Ni2+の配位数
ある参考書の配位数の考え方では、Fe2+だとd電子は6つでlow spinで考えるとt2g6でeg軌道に二つ、4s,4p軌道にそれぞれ1つ、3つ空いた軌道が存在するので、d2sp3混成により最大で6配位まで可能という解釈をしているのですが、Ni2+のd電子は8つで、同じように考えると最大で5配位までしか配位できないような気がします。しかし、Ni2+では通常4配位か6配位とされているのは考え方が間違っているのでしょうか?
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はい。考え方が間違っています。 その解釈では、3d軌道に空いた軌道がない場合、最大で4配位までしか配位できないことになりますから、[Mn(H2O)6]2+, [Fe(H2O)6]2+, [Co(H2O)6]2+, [Ni(H2O)6]2+, [Cu(H2O)6]2+, [Zn(H2O)6]2+, [Ga(H2O)6]3+ などの6配位の錯イオンが安定に存在することを説明できません。 混成軌道を使う“古い”考え方では、これらの錯イオンは4d軌道を使うd2sp3混成により6配位になる、と説明されます。もしもっと詳しい話が知りたければ、図書館などで古めの錯体化学の教科書をみるか、あるいは「外軌道錯体」か「外部軌道錯体」をキーワードにネット検索してみてください(t2g軌道, eg軌道という配位子場理論の言葉を使って混成軌道の説明をするような本は、参考書としてはおすすめできません)。 空の4d軌道を使ってもいいのなら、「d2sp3混成により最大で6配位まで可能」という解釈はおかしいですよね。たとえば3d軌道をふたつと4d軌道をふたつ使えばd4sp3混成により8配位が可能なのですから。「空の4d軌道を使う」という考え方は、配位子場理論の人気に負けて廃れた考え方というだけで、それほど間違った考え方というわけではないのですけど、「最大で6配位まで可能」という考え方は完全に間違っています。 最近の教科書では、6配位より大きい配位数をもつ3d遷移金属錯体がまれなのは、単純に、3d遷移金属イオンのイオン半径が小さいから、と説明されることが多いです(例えばシュライバー・アトキンス無機化学の上巻8章)。