強制執行の要件を簡単に説明すると、次の通りとなります。
(1)債務名義の取得
(2)債務名義に執行文の付与
(3)債務者(被執行者)に対する債務名義の送達
(4)執行機関への強制執行の申立て
債務名義とは、強制執行により実現される請求権の存在と範囲を表示する「公文書」を言います。
執行文とは、債務名義によって直ちに強制執行をしてもよいという事を証明する文言の事を言います。
例えば、AさんがBさんに車を売る売買契約を締結し、Bさんがお金を支払わない場合、
AさんはBさんに対して、裁判で当該売買契約に基づきお金を支払う様確定した給付判決を得ます。
この判決正本が債務名義となります。
そして、この場合の売買契約においてBさんが契約で決まった日までお金を支払わなかった事(すなわち契約違反)が強制執行における実体的要件を具備したことになります。
これに対して強制執行における手続的要件を具備するとは、民事執行法に規定されている名文に沿って強制執行の手続きを行うことを言います。(条文どおりに強制執行の手続きを踏んでいるか否か)
例えば、執行文を付与しない債務名義で強制執行をした場合は、手続的要件を具備したとはいえません。
簡単に言えば、当事者(債権者、債務者)の問題が実体的であり、
当事者と執行機関等との問題が手続的ということになります。
民事執行法は、多くの不服申立ての機会が与えられており、
実体的欠陥執行(不当執行)、手続的欠陥執行(違法執行)とでその不服申立ての方法が異なってきます。(手続的、実体的の位置づけは大変重要です)
執行開始要件とは、
すでに説明したとおり強制執行には原則として4つの要件を具備する必要があります。
ただし次の場合には、別途()内の要件が必要となります。
(1)債務名義が確定期限の到来にかかる場合(確定期限の到来)
(2)債務名義が立担保を条件とする場合(立担保)
(3)引き換え給付を命ずる債務名義による場合(引き換え給付)
一般的にこれらを執行開始要件と位置づけています。
>>ある本には、債務名義の送達が、手続的要件にも、執行開始の要件にも含まれていたりするのですが…。単に、見方の違いなのでしょうか?
債務名義の送達も、広義の意味での執行開始の要件には当てはまりますね。
お礼
ご回答ありがとうございます。 つまり、債権者が強制執行を行うために必要な権利(根拠)に関する要件が、実体的要件で、それ以外は手続的要件という理解で良いのでしょうか?