溶媒だけが通る膜で隔てられた、純溶媒と溶液を考えます。溶液の中の溶媒の化学ポテンシャルをμ、純溶媒の化学ポテンシャルをμ'とします。
μ=μo(T,p)+φRTlnx...(1)
μ'=μo(T,p')...(2)
です。xは溶液中の溶媒の化学ポテンシャル、φは浸透係数です。これは活動度係数γの代わりでφlnx=lnxγです。
平衡なら(1),(2)が等しいですが、x=1で無い限り、p≠p'である必要があります。この時
π=p-p'...(3)
とし、これを浸透圧と名付けます。そこでμoの圧依存性を知る必要があります。さて
(∂μ/∂p)_t=v...(4)
です。圧縮率をκとしますと
κ=-(1/v)(∂v/∂p)_t...(5)
です。この式はκを定数とすれば変数分離形の微分方程式で簡単に解けて
v=v(T,0)e^(-κp)≒v(T,0)(1-κp)...(6)
となります。v(T,0)は圧力ゼロに外挿した時の溶媒のモル体積です。この式を(4)に代入すれば
μ=μ*(T)+pv(T,0)(1-κp/2)...(7)
の形の式を得ます。(7)を使えば(1),(2)は次のようになります。
μ=μ*(T)+pv(T,0)(1-κp/2)+φRTlnx...(1)'
μ=μ*(T)+p'v(T,0)(1-κp'/2)...(2)'
溶媒同士の化学ポテンシャルは等しくなければならないので(1)'=(2)'より
pv(T,0)(1-κp/2)+φRTlnx=p'v(T,0)(1-κp'/2)
(p'-p)v(T,0)=κ(p'^2)v(T,0)/2-κ(p^2)v(T,0)/2+φRTlnx
(p'-p)v=κ(p'-p)(p'+p)v/2+φRTlnx
ここで(3)を代入し
-πv(1-κ(p'+p)/2)=φRTlnx...(7)
となります。ここで
v(1-κ(p'+p)/2)...(8)
は溶液と溶媒の平均の圧力に対する溶媒のモル体積ですが、これを改めてVと書くことにすれば、(7)は
πV=-φRTlnx...(9)
即ち
π=-(φRTlnx)/V...(10)
となります。理想溶液ならば
π=-RTlnx/V...(11)
です。ここでκを無視してよいならばV=vとなりますので
π=-RTlnx/v...(12)
です。ここまでもって回った書き方をしていますが、(12)を得るには要するに(1)'=(2)'を
pv+φRTlnx=p'v...(13)
とすればよいわけです。
さて、溶質のx'が小さい(希薄溶液)ならば
lnx=ln(1-x')=-x'...(14)
ですので、(12)は
π=RTx'/v...(15)
ということになります。溶質の濃度の形は(15)より明らかです。