実験的にはそれぞれの性質に応じた使い分けがなされています。
電子線回折は、電子線の試料への侵入長が短いことを利用し、試料表面の構造を調べるのに用いられます。
X線回折は、試料の結晶構造を決定する標準的な手法として用いられます。詳細な解析を通じて、構成元素の定量的評価をすることもできます。
中性子回折は、中性子がスピン1/2を持つ粒子であるため、試料の結晶構造だけでなく磁気構造も決定することができます。また、(X線に比べて)入射ビームのエネルギーを低くできるので、格子振動や磁気励起の精密分光測定にも用いられています。
結晶構造決定に関して、X線は電子に散乱されるのに対し、中性子は原子核に散乱されます。そのため、X線回折では軽元素が見えにくい弱点がありますが、中性子回折にはその問題はありません。そのため、酸化物における酸素位置決定などに威力を発揮します。
一方で、試料に中性子をよく吸収する元素が含まれていると、中性子回折を行うことは難しくなります。さらに、中性子の散乱断面積は小さいので、信号強度を稼ぐために大量の試料が必要になります。精密分光測定の場合には、大型単結晶試料が必要ということになります。それゆえに、中性子回折を有効利用できる試料の種類は(X線に比べて)限定的になる傾向があります。
お礼
各分析について、簡潔にまとめてくださいまして有難うございます。 中性子線のメリットなどよくわかりました。