獣医師でウイルスに専門知識を有する者です。
まず鳥類全般にはインフルエンザは感染するでしょう。全てが調べられたわけではもちろんありませんが。元々全てのインフルエンザウイルスは、カモ類が持っていたウイルスが起源ですし。
ま、爬虫類や両生類はとりあえず論外です。
哺乳類の中では、ヒトと豚、それに馬では、他の動物種とは独立したインフルエンザを持っています。つまりヒトのインフルエンザは鳥や馬には感染しませんし(豚には比較的容易に感染しますが)、馬のインフルエンザはヒトや豚には感染しません。ヒトや鳥と比較的容易にウイルスをやりとりする豚ですら、「豚の間でだけ流行しているインフルエンザウイルス」を持っています。今回はそのうちの1種がヒトに来てしまったわけですが。でも、このウイルスは鳥やヒト由来のウイルス遺伝子も混じっているし、もう「豚インフルエンザ」とは別物のウイルスになってしまってますが。
ヒト、豚、馬以外の哺乳類では、とりあえずインフルエンザは流行していません。つまり自然宿主ではありません。
むろん、多くの哺乳類は、むりやりインフルエンザウイルスを感染させれば感染するでしょう。それでも感染しやすい動物種としにくい動物種がありますが。
例えばもう一昨年になりますが、宮崎県と岡山県で発生した高病原性鳥インフルエンザですが、このウイルスをマウスに感染させると、かなりの高率で感染して死にました。ただ、鶏では全身のあらゆる臓器に感染するウイルスなのですが、マウスでは脳と呼吸器では盛大に増殖していたのですが、肝臓や脾臓では検出されなかったそうです。
一方、同じウイルスをラットに感染させてみたところ、1匹も感染しませんでした。同じ齧歯類なんですけどね。でも、抗体価は上がっていたので、まるっきり感染しなかったというわけでもなさそうです。
こんな具合に、動物種それぞれがインフルエンザウイルスに対する感受性(感染するかしないか、あるいは感染してもどの程度の症状や致死率を示すか)は違う、ということです。
難しいのは、この「動物種による感受性」はウイルスによっても違う、ということです。例えば同じH5N1亜型のインフルエンザウイルスでも、東南アジアで蔓延しているウイルスはヒトに感染しやすいウイルスですが、日本で発生したものはいずれも感染しにくいウイルスでした。
世の中にインフルエンザウイルスは、それこそ星の数ほどのタイプがありますが、そのそれぞれについて「容易に感染する動物」や「感染刺せにくい動物」、さらに「ほとんど感染しない動物」が微妙に異なる、というわけです。
ま、それらを全て最大公約数的に捉えると、たいていの哺乳類には何かしらのインフルエンザウイルスが感染可能、ということになるのでしょう。誰も確かめた人はいないですが。
そういえばつい最近まで、犬科やネコ科の動物はインフルエンザには感染しない、とされていました。教科書にもそう書いていたような記憶があります。
でも、東南アジアのインフルエンザは、動物園のライオンやオオカミなどの動物に感染した例があります。インフルエンザで死亡した鶏をエサとして与えたような、それこそ「無理矢理感染させた」ようなに事例ですが、それでも教科書に書かれていた定説が1つ覆されたことには変わりありません。(そんなことはしょっちゅうですが)
でも、未だに牛や山羊などの反芻動物にインフルエンザが感染したという話はまだ聞いたことがないような・・・キリンに感染した例があったっけ?あまり確かな記憶ではありません。
これらは、無理矢理感染させた、という表現をしたくなるような事例なので、自然な状態でこれらの動物に感染する、というわけではありません。
ま、今度の新型インフルエンザがネコに容易に感染するタイプで、流行が始まると家庭のネコが続々とインフルエンザに罹患して・・・というような事態になったとしても、「へぇ~」くらいは言ってしまうでしょうけど、もはやそれほど驚かないかな。
お礼
興味深い回答、説明ありがとうございました。 参考にさせていただき、また色々調べてみます。