まず、質問には、質問に応じた回答を書くべきでしょう。この質問は、突然、月がなくなったらというような、かなり難しい仮定を前提に質問しています。
>もし月が急に無くなってしまったなら、一体どういう事態が考えられるのでしょうか?
短期的効果、長期的効果などがありえると思います。短期的効果について考えます。
まず、人々が、月がなくなったと言って、大騒ぎするでしょう。TVでもインターネットでも情報が氾濫し、天文学者や物理学者がTVに出て、理由が分からないなどと言いつつ、何とか、対面を取り繕うとする姿が見られたりするでしょうし、ともかく、人間の世界は、情報氾濫で、大騒ぎになります。
人間の世界での騒ぎはおいておくと、月が突然なくなると、出てくる効果は、物理的には、「月の引力の消滅」と「月の光の消滅」の二つが、重要になります。
月が存在しなくなって、月の引力が存在しなくなるということは、月の引力による潮汐効果がなくなるということです。しかし、忘れてはならないのは、潮汐は、月の引力だけで決まっているのではないということです。太陽の引力も潮汐に関係します。大体、月の1/4ぐらいの大きさだったと思います。
従って、月に向いた面とその反対側での満潮という潮汐はなくなりますが、太陽に向いた面と、その反対での満潮という潮汐は残ります。干満の差が、月の一ヶ月周期で変化していたのは、月の引力と太陽の引力が合成される効果の周期が、月の一ヶ月公転周期で決まっていたからです。
かなり弱くなりますが、一日周期の干満は太陽引力の影響で残ります。しかし、一ヶ月周期の干満は、なくなります。一日周期の干満のリズムで生活が決まっていた生物、例えば海中生物などの生活活動は、干満差が小さくなって、続行不能になる生物と、弱い干満に適応できる生物に分かれるでしょう。
他方、一ヶ月周期の干満に生活や生存が影響されていた生物は、これに適応して、何か変化するか、または滅亡するでしょう。
月の光の消滅に関しても似たようなことが言え、月の光の大小をリズムに生活を決めていた生物は、リズムの欠如に適応するか、滅亡するということになります。
「月の引力の消滅」は、実は干満のリズム以上の大きな効果を地球との相互公転運動で引き起こします。ちょっと正確に計算できませんが、地球は、月のあった方向の反対方向に、千キロメートルか数千キロメートルか、あるいは1万キロメートルか、落下するはずです。(落下というより、移動というのが正しいです)。
この移動運動は、慣性で、継続運動となりますから、地球は運動方向に、ある大きさの運動エネルギーを持つことになります。
短期的効果としては、月が消えた瞬間の地球の落下は、大地震になるのではないかということです。また、満潮部分の海水は、引っ張る力がなくなり、干潮領域の海へと、海上の大津波となって広がって行きます。これがどの程度の規模か分かりませんが(計算しても、分からないとも思います)、大陸に衝突すると、高さ1万メートルぐらいの津波となる可能性があります。こんなに大きくなくとも、高さ100メートルの津波だと、沿岸部の都市や、大部分の低地平野は、海水に覆われてしまいます。もし500メートルを越えると、ほとんどの大都市は、壊滅します。死者が、十億の単位で出るはずです。
地震の影響がもっとすさまじいかも知れません。地球は巨視的には弾性体ですから、急激な力の変化で、ゴムまりのように歪み、この歪みに対応できない地殻などは、大亀裂ができるかも知れません。深さ、1千メートル、または数千メートル、長さ千キロメートルの大亀裂ができるとか、世界中の火山が一斉に凄まじく噴火を始めるとか、厳密に境界条件を入れて、計算しないと、どういう規模の何が起こるか分かりませんが、こちらの引力の消滅による、地球の移動と、大洋海水の移動、地球の弾性変化の効果が本当に大きいと、最初に述べた、月が消えたという情報で、大騒ぎになるどころではありません。
人類の文明が一瞬で壊滅する可能性があります。また、この天変地異によって、滅亡する生物種が多数出現するでしょう。
火山の噴火や、大地震や地殻の変動を述べましたが、これは、中生代末に地球に落下して、多数の生物を絶滅させた小天体の落下以上の衝撃である可能性が高いです。この効果で、100万後には、地球上の生物は、原始的な細菌やウィールスを除いて、すべて絶滅とか、生物種の90%が絶滅というような結果になるかも知れません。
>また、原始地球において月が存在しなかった場合、生命発生は考えられないことだったのでしょうか?
これに対しては、月周期の干満はなくなっても、太陽重力に起因する干満はあります。従って、生命の発生は可能であろうと思えます。高山があるかないかは、プレートテクトニクスに月の引力が関係あるかないかです。関係ないと思いますから、高山もあれば、造山輪廻もあり、ただ、海中生物の進化に影響が出ると思います(ただし、地球自転周期が、プレートテクトニクスに影響するなら、関係があります)。
しかし、それでどうなるかは分かりません。まったく天文的に同じ条件で、地球を40億年前に戻して、もう一度、生物の発生と進化が起こるとしても、現在と同じになるということはありえないからです。従って、進化はより速くなっていたかも知れず、人間のような知的生物は、10億年前に出現したかも知れません。
無論、その逆のことや、まったく生命が発生しないという可能性もあります。しかし、それは、地球が微小天体の衝突蓄積で造られた時点に時間を戻って、もう一度、歴史を繰り返したとき、生物の発生・進化はあったのか、という問いと同じになります。
バージェス頁岩中の化石が実証した、先カンブリア時代の種の大量生成が、何を引き金に起こったのか、現在分かっていないはずです。進化についても、分からないことばかりです。「一度、それは起こった」ということは分かっています。しかし、同じことが、また起こるのか、分からない現在において、生命の発生や進化の速度などについて語るのは、あまり意味がないでしょう。
お礼
ありがとうございます。大変詳しい内容でかなり参考になりました。
補足
ちょっと回りくどい質問になってしまったのですが、実のところ本当に知りたかったのは、現在における人間と月のかかわりなんですね。その辺について、改めて具体的な質問をたてたいと思います。