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年功型賃金について
日本で年功型賃金がなぜ採用されたのか教えてください。お願いします。
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以下は、個人的考察ですので、他の方のご意見とは異なるかもしれません。 年功型賃金の特性はご承知でしょうか? 若年期には「能力>賃金」で、壮年期には「能力≒賃金」となり、50歳代になると「能力<賃金」となるように賃金カーブを描く特性があります。これは、終身雇用制があるからこそのカーブの付け方でしょう。 年齢と共に賃金が増えていくのは、標準生計費の伸びを考慮していることと、「年齢を重ねて経験を積めば、昨年できた以上の結果を出せる」という“標準的労働者イメージ”があったからで、これも、終身雇用を前提にしているからだと思います。 では何故、終身雇用を前提にしたのかというと、戦後の復興期にはとりわけ戦時中に若年の男性労働力が多く失われたため、復興に要する労働力をできるだけ多く、できるだけ長く確保しておきたいという事情がありました。このため、「長く働くことにインセンティブがある」という賃金体系を採用することの方が経営者にとって都合が良かったのだと思います。退職金制度もその一つでしょう(退職金制度の歴史はもっと古いといわれますが、現実の意味としてはそういった狙いがあったものと思います)。 また、労働者にとっても、「生活の変化(独身⇒結婚⇒出産⇒住宅購入⇒子の成長に伴う教育費増)にあわせて賃金が増えていく体系の方が生活設計がしやすい」といったメリットもあったのではないでしょうか。 一方、年功序列型賃金のもう一つの側面として、「学歴による差」があります。これは、「高学歴=高等教育を受けた者であれば、より高度な課題を任せられるはず」と経営者が考えたからでしょう。幹部候補として採用する者は大卒(現在よりも大学進学率はずっと低かった時代)で、現場業務は高卒以下という構造が主流だったと思いますから、人数的に多い現場労働者に支払う賃金を設定する際に、学歴以外に客観的な賃金構造格差を説明できなかったこともあるかもしれません。これは官僚制度(キャリア制度)の模倣だとも考えられます。 やがて、経済復興が成り、労働力が十分な量になると、少しでも低い賃金で必要な労働力を確保することが競争力の強化になりますし、「従来の手法」「従来のシステム」を植え付けられている熟練労働者よりも、社会経験が浅い若年労働者の方が経営者の狙いに沿った新たな事業展開を進めやすいといった事情で、若年労働者を比較的低い賃金で雇用できるシステムのままの方がメリットがあったのでしょう。 やがて、1980年代を迎えると安定成長期⇒バブル景気⇒平成不況と時代が変わる中で、企業は更なる競争力を身につけるため、「成果・能力主義」に傾き、「できる者に報いる」という発想が取り入れられました。能力主義のシステムとして代表的なのは「職能資格制度」ですが、この職能資格制度を運用する中間管理職達が「年功序列型」で処遇されてきたことや、明確な評価指標を示せないといった事情から、「年功的な職能資格制度」という訳の分からない実態に陥っていき、経営者は「成果の果実」を手にできない不満を抱えることになりました。 そこで、「成果主義・実力主義」に更に踏み込むことで、経営者は「成果の果実」を手にしようと考えているのが現状でしょう。
お礼
質問に答えていただき本当にありがとうございます。非常にわかりやすいです。助かりました。