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音速と気体粒子の速度について
音速と気体粒子の速度について質問します。 音は空気の振動が伝わることだと習いました。 そして空気の振動を伝えるものは気体粒子ということも習いました。 高校の教科書にはバネと質点が連なっている絵があり、質点の振動がバネを介して隣の質点に伝わっていく様子が描かれています。 これはこれで理解できたのですが、実際の気体分子は無音の状態でも四方八方に飛び回っていますよね。先のバネと質点の例で言うと、質点がランダムに飛び回っていることになります。僕にはこのような状況で振動が隣の粒子に伝わる様子が想像できません。さらに疑問が増すのは、気体粒子の平均スピードが音速よりも速いということです。(調べたら0℃1気圧で窒素分子は約490m/s,酸素分子は約460m/s,音速は約330m/sでした。) 長々としましたが疑問は要するに、 「音速を超える速さで飛び回る気体粒子が、音速で音(振動)を伝える様子がわからない」 ということです。 説明しにくい内容だと思いますが、どなたか詳しい方がいらっしゃいましたら教えてください。 よろしくお願いします。
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この問題は、良く分からんというのが、素直な反動だと思います。また、質問者さんがこの問題で混乱したのは、実は質問者さんには大変良い物理的なセンスがあることの証拠だとも言えます。何故ならこれから説明いしますように、この問題は物理学の未だに論争の耐えない問題、すなわち、不可逆性の問題、あるいは時間の対称性の破れの問題に直結した、奥深い問題に関係があるのです。 さて、その説明に絡んでいるのですが、#1さんの説明は、部分的には的を射ている面もあるのですが、説明は相変わらず不完全だと思います。 単に疎密だけが音波の伝わる原因だとすると、気体を構成する粒子の間で互いに衝突をしない仮想的な気体(それを専門用語では理想気体と言います)の中でも音波が伝播出来ることになってしまいます。 ところが、理想気体の中を疎密波は伝播出来ません。実際、そのような理想的な気体のモデルでは、運動方程式を厳密に解くことが簡単に出来ます。そこでその解を使って、初期条件に密度の疎密部分を用意したときの疎密部分の時間変化を、簡単に計算することができます。その場合、理想気体の運動エネルギーが自由粒子の運動エネルギー、すなわち運動量の2乗として、非線形に依存していることが本質的になります。そして、この非線形性のお陰で、最初の疎密部分はダラっと均一化するだけで、音波として伝播する解は出て来ません。専門用語では、非線形効果によって位相混合(フェーズミキシング)が起こるだけです。 気体中の音波の出現をミクロなレベルから理解するには、ボルツマン方程式というミクロのレベルの方程式から理解しなければなりません。この方程式には衝突項といって、時間の符号をプラスからマイナスに入れ替えると、元には戻らない項が付いています。即ち、衝突項は時間の向きの反転に対して対称性を破っています。その項を表す衝突演算子の固有値問題の中に、流体力学的モードと言う物があり、その特殊な例が音波モードなのです。したがって、気体中での音波は、その運動方程式の中に時間の対称性を破る項があるために起こって来る現象なのです。 ところが、バネを伝わる音波は単に力学的な調和振動子的な運動として伝わるので、時間の対称性が破れること(すなわち、摩擦や拡散がおこること)は邪魔にこそなれ、その伝播の機構として本質的ではありません。もしバネや結晶が完全に出来ていれば、その中を減衰せずに音波が伝わることも原理的には可能です。 その反対に、空気中の音波は気体の分子間で衝突が起こり、その過程で時間の対称性が破れていること(すなわち不可逆性があること)が本質的な原因で起こる波です。したがって、減衰せずに伝わる音波は、気体中には原理的に存在しません。 ですから音波の伝播を、通常のバネでモデル化するのは、そのモデルで波としての一面を表現していると言う意味では宜しいのですが、それが起こって来る理由を理解するモデルとしては、危険なモデルだと思います。 この話は、非平衡統計力学の相当上級編の勉強をした方でないと、なかなか理解するのが難しいのですが、第一級の非平衡統計力学の教書では、気体中での音モードの出現を詳しく説明しているものもあるにはあります。
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- cyototu
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#3です。 私も蛇足を書かして頂きます。 >マクロの見方とミクロの見方を区別したらどうでしょう。 ということですが、物理学はこの宇宙で実際に起こっていることについての記述を問題にしており、頭の中で想像した物の中で起こり得ることについては、興味がありません。現在では、気体は連続体ではなくて、不連続な分子から出来ていることが判っています。ですから、いきなりこの有りもしない連続体に付いての性質を語っても、現実の気体の性質を語ったことにはなりません。したがって、これをマクロに見た場合でも、何故、気体の素片の間にあたかも弾性体のごとき力が働き得るかを説明できないと、何故、気体の中を音波が伝わり得るかが説明出来ないわけです。 別な言い方をすると、ボルツマン方程式を使ったミクロなレベルで音波の存在が保証されているから、ある近似の範囲内でマクロな弾性体のモデルが正当化されているのです。 もちろんその近似の範囲内に無いような状況を考えると、マクロな弾性体のモデルは物理的に意味をなさない、あり得ない世界の数学の問題になってしまいます。
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う~ん、気体は不連続体ですか。 連続体でも難しいのに不連続体となるともはや頭の中では想像できない気がします。 きちんと保証されているのはミクロなレベルでの音波の存在であって、それを不連続体である気体に拡張するのは一筋縄ではいかないということですね。 ああ、音波って奥が深い!
粒子の平均速度が音速より大きい(高い)ことについてですが、前者は3次元的な(自由度3の)速さのある種の平均であり、音波が伝わる方向の(自由度1の)速さの平均はそれより小さく(低く)なります。例えば、「非常に荒っぽい目安として、」ある1方向の速さの平均を、3次元的速さの平均の1/3^(1/2)とすると、それは音速より小さく(低く)なります。 蛇足ですが、マクロの見方とミクロの見方を区別したらどうでしょう。マクロのレベルでは、音波は連続体中を伝わる疎密波である、と理解すればよいのではないでしょうか。教科書にある質点とバネの例も、質点は個々の気体粒子を表すのではなく、気体の素片(小さな領域)を代表し、バネはその素片が隣の素片と力を及ぼし合う様子を表すためのもの、と理解したらどうでしょう。教科書でどう説明されているか、また、担当の先生がどうおっしゃったか、知りませんが。
お礼
回答ありがとうございます。 自由度で考える方法もあったんですね。 この考え方だと気体粒子の平均速度が音速よりも速いことがわかります。 でもこの考え方だと固体中を伝わる音波に疑問が出ます。例えば鉄を考えますと、鉄原子はほとんど動いていないのにもかかわらず、音波はものすごい速さで伝わってしまいます。 自由度で説明できるのは気体に限ったことなのでしょうか。 疑問が絶えないのが僕の悪い癖なのですみません。
- cyototu
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#3です。 第一行目にいきなり誤植がありました。お恥ずかしい。 この問題は、良く分からんと言うのが、素直な反応だと思います。 と読んで下さい、
- maru-tu
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あまりにも恥ずかしい変換ミスなので一応訂正。 粗密波→疎密波
- maru-tu
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連成振動(質点がばねで連結された装置の振動)のように、隣り合う分子同士が直接作用を及ぼしあって、その場で単振動をしているような粗密波のイメージを持っていると誤解を生みます。連成振動はあくまでも粗密波のモデルの一つであって、空気中を伝わる音波を完全に説明するためのモデルではありません。 音波は空気の密度の変動が伝わる現象です。ここの気体分子が衝突することによってではなく、気体分子の濃密な部分(=密)と希薄な部分(=疎)が交互に伝わっていくのです。 密な部分に着目すれば、個々の分子は十分に早く運動しているので、周囲へ逃げていく分子の方が周囲から入り込んでくる分子の数よりも多くなります。これにより密な部分は徐々に密度を低下させます(つまり周囲よりも高圧なのです)。逆に疎な部分では周囲からの流入が勝り(=周囲より低圧)、疎な部分は徐々に密度が上昇します。 このような変動を繰り返すことにより、疎な部分と密な部分が交互に伝わることになります。
お礼
回答ありがとうございます。 音波のイメージを変えることができました。 またつまらない質問をすると思いますがよろしくお願いします。
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お礼
大変詳しい説明ありがとうございます。 やはり気体中の音の伝播は複雑だったんだという思いです。 運動方程式、ボルツマン方程式は解いたことはありませんが、数学的に現象を理解するのも大切だと思いました。 回答の中で気になったことなのですが、理想気体は結局音波を伝播できるのでしょうか? 疎密だけが音波の伝わる原因だとすると理想気体でも伝わる、と書いてありましたがその次に、理想気体の運動方程式を解くと音波として伝播する解は出て来ないと書いてあります。 これは音波の伝わる原因として、疎密の他に衝突も考慮に入れて運動方程式を解いたら伝播する解が出てこなかった、ということでしょうか? そしてボルツマン方程式なら衝突を考慮に入れても(入れるからこそ)伝播する解が出てくるのでしょうか? 僕の理解力が足りなくてすみません。