真空エネルギーの発散は単に演算子を正規順序にして真空期待値を引き去るだけではだめだと思います。そんなことをするとカシミール効果がなくなります。x軸上の x= 0 と x=L に2枚の平行金属板があるとすると金属板上で電位は一定なので波動方程式
(∂^2/∂t^2 - ∂^2/∂x^2 )u(x,t) = 0
のx= 0 と x=L で0になる解を求めると
u(x,t) = exp(inπt/L) sin(nπx/L)
量子力学の不確定性によりエネルギー最低の状態でも各モードはnπh/2Lのエネルギーを持ち、すべてのモードについて加えると
(πh/2L)Σn
のように発散します。これはs>1に対しては
ζ(s) = Σn^(-s)
で定義されるζ関数を形式的にsが負として求めたようなものになっています。そこでよく知られているようにs>1以外に対しては上の式を解析接続したもので定義されているとすると有限な値が求まります。このカシミール効果は極めて微弱であるため測定は困難を極めましたがついに
S. K. Lamoreaux, "Demonstration of the Casimir Force in the 0.6 to 6 µm Range", Phys. Rev. Lett. 78, 5–8 (1997)
U. Mohideen and Anushree Roy, "Precision Measurement of the Casimir Force from 0.1 to 0.9 µm", Phys. Rev. Lett. 81, 004549 (1997)
で報告されました。つまり真空は実際にエネルギーを持ち、勝手に捨てたりしてはいけないのです。参考書はいろいろありますが例えば
黒川信重他「絶対カシミール元」(岩波)
お礼
非常に丁寧な回答ありがとうございます。 何度もわがままばかり言って申し訳ないのですが、 もっと幅広く書かれている本で、こういった話題に関して書かれている本があれば教えて下さい。